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第一章

第38話:芝居・ダーシィ戦闘侍女視点

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 リアナ様の命を受けて、各国大使と逗留中の全王侯貴族を、ロスリン城最大の舞踏会場に集めました。
 いよいよこれからゴードン侯爵キャメロン閣下と、ロスリン女侯爵リアナ様が、集まった者達を騙す一世一代の大芝居が始まります。
 全てはキャメロン閣下のリアナ様への妹愛ゆえの事です。

 リアナ様の招待を断る者は誰一人いません。
 それはそうでしょう、リアナ様の後ろにはキャメロン閣下がおられるのです。
 言葉一つ間違えるだけで、簡単に国が滅ぼされる事がが明白になりました。
 表向きは脅かされ命令されたわけではない単なる招待状も、国の命運がかかった出頭命令とおなじなのです。

 集まった全員が誰とも話すことなく、蒼い顔をして下を向いています。
 万が一この中にキャメロン閣下に眼をつけられた者がいて、その者と仲がよいと思われてはたまらないと、視線すら合わさないようにしているのでしょう。
 片手に配られた杯を持っていますが、ひと口も飲んでいません。
 テーブルに並べられた贅を凝らした料理にも、誰も手を付けていません。
 毒を恐れているのではなく、恐怖のあまり飲食する気にもなれないのです。

「ゴードン侯爵キャメロン閣下ご入場」

 キャメロン閣下はまるで帝王のような堂々とした態度で舞踏会場に入ってこられましたは、思わず見惚れてしまいそうになるほどの男振りです。
 集まった者達の顔色が蒼を超えて白くなっています。
 このままでは倒れる者が出てしまいます。

「ロスリン女侯爵リアナ閣下御入場」

 十分な時間をおいて、女侯爵として城主として、この集まりのホストとして恥ずかしくない、堂々とした態度でリアナ様が入ってこられました。
 多くの王侯貴族の態度を見てきましたが、決して負けるモノではありません。
 流石にキャメロン閣下の迫力と威圧感には及ばれませんが、キャメロン閣下と比べるのは酷というモノでしょう。
 キャメロン閣下の威圧感なら、魔王だって泣いて逃げると思います。

「今日皆様に集まってもらったのは他でもありません。
 イニス王家のデイビット第三王子が私に行った無礼と、マナーズ王国の大使がゴードン侯爵キャメロン閣下に行った無礼、これによって始まった戦争を止めるための話し合いの証人になってもらうためです」

 会場の雰囲気が更に重苦しくなりました。
 キャメロン閣下とリアナ様が猿芝居を行って、両国を滅ぼす正当性を全員に認めさせ、両国の滅亡を多くの国が賛同した事にしようとしていると思ったのでしょう。
 確かに芝居ではありますが、両国を滅ぼすための芝居ではありません。
 両国の民を救い、リアナ様の名声を高めるための芝居です。
 まあ、両王家が滅ぶのだけは避けようがありませんでしょうね。
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