悪役令嬢の妹を助けたい、ただそれだけなんだ。

克全

文字の大きさ
上 下
36 / 89
第一章

第36話:宣戦布告

しおりを挟む
「ちょ……! ちょっ……と待て、グレ、ッ……ンッ!」
 何か言おうとする唇を塞いで、舌で歯列を割る。
 頭を掌で支え、薄い唇を軽く吸って逃げる舌先を追いかけた。待てと言われても、今日は待つつもりはない。
 敏感な上顎を舌先で擽ると、諦めたようにオルガが両眼を閉じて口づけに応え始めた。舌を絡ませ、互いの唇を軽く吸い合う。
「ン……ンッ……グレ、ウ…………ッ」
 艶めかしい声が漏れる。
 唇を合わせたまま、グレウスはオルガの胸元を探っていた。
 可愛らしい小さな粒が指に触れたので、それを優しく揉み解す。ぷくりとして弾力があって、本当に可愛らしい乳首だ。形もいい。
「ンンン……!」
 足で膝を割って、太腿をオルガの股間に擦りつけてみた。
 ずり上がろうとする体を腕の中に捕えて、グレウスはオルガの足の間に体を割り込ませる。
「ああっ……グレウスッ」
 唇を離すと、オルガの息はもう乱れていた。
 足に触れるオルガの屹立は半勃ちといったところで、疲れているせいでなかなか勢いがつかない様子だ。
 グレウスは乳首を弄っていた指を離して、何か言いたそうにしたオルガの口の中に入れた。
「……ぅんん……っ、う、ぐれうひゅ……まっ……」
「大丈夫です。俺のことは気にしないでください」
 二本の指でオルガの舌を愛撫しつつ、香油の代わりの潤滑剤となるように唾液をたっぷりと絡める。


 オルガの体内は温かく、濡れて柔らかで、しっとりと吸い付くようにグレウスを包み込んでくれる。
 そのせいでグレウスは、いつもいつもオルガの中に入ることばかり考えてしまう。前戯がおざなりになって、オルガを悦ばせようという気概に欠けてしまっていたことは否定できない。
 中に収めたら収めたで、後は自分の快楽を追求すること以外考えられなくなってしまう。
 オルガもきっと共に悦んでくれているのだと信じていたが、正気を失うには足りなかったらしい。
 今日はそれではだめだ。
 まずは挿入の前に、この指でオルガを十分に昂らせてやらねば。


「お……おま、っ……っ、うう……うぶ、っ……」
 口の中にも多くの性感帯があることを、グレウスはオルガに教えられた。
 普段口づけした時に探る上顎や、唇の裏側だけではない。上顎の奥や舌の付け根の両脇など、舌では届かない場所にも感じる場所はあったようだ。
 オルガの顔が紅潮し、膝に当たる屹立が勢いを増していく。
「愛しい人……貴方は俺を惑わしてやまない……」
 指を咥えたオルガを、グレウスは感嘆とともに見つめた。
 冷たいほどに白く硬質な美貌が、今は口にグレウスの指を含んで困惑の表情を浮かべている。溢れ出る唾液が唇を濡らし、男にしては細い顎まで滴る様子が我慢ならないほど扇情的だ。
 いや、違う。今日は我慢しなければ。
 いきり立つ自身の欲望に待機を厳命して、グレウスは濡れて光る指をオルガの口から抜き出した。
「……グレ……グレウス! 今日は……」
「わかっています。今日の俺は貴方に奉仕する下僕です。どうか思う存分に感じてください」
「ち、が……」
 話しながら濡れた口元を手で拭おうとしているのに気づいて、グレウスはその唇に吸い付いた。
 汚れを拭うのは自分の役目だ。顎も首筋も、オルガの体液ならばすべて舐め取って綺麗にしてやりたい。
「ン、ゥウ……!」
 その間に濡らした指を足の間に潜らせる。慎ましい窄まりを探り当て、潤いを馴染ませるように塗り付けると、オルガが喉の奥で声を漏らして腰を引こうとした。だが動きは弱々しく、本気で逃れようとしているというよりは、誘うような動きに思えた。
 食らいつくようなグレウスの口づけを受けながら、顔を左右に振ろうとする仕草があるのも、きっと恥ずかしがっているのだろう。


 年上と言うことを気にしてか、オルガは閨の中でもグレウスを甘やかしがちだ。
 苦しくても苦しいとも言わずに、我慢の利かないグレウスが快楽を貪るのを、ただじっと受け止めてくれている。
 今日はそんな関係を脱したい。
「ン、ンン、ン――ッ……!」
 呼吸とともにパクパクと口を開ける秘密の入り口に、グレウスは濡れた指を忍び込ませた。
 ずり上がろうとする体を引き戻し、指をしっかりと根元まで収める。オルガのここは柔らかく、温かで居心地がいい。
 自身が包み込まれた時の快感を思い出し、そのまま圧し掛かっていきたい衝動に駆られたが、グレウスは我慢した。今日はオルガを愉しませるのだ。自分のことは二の次だ。
「グレ……待、てと……ッア!」
「大丈夫です。貴方の好い場所は存じていますから、気持ちよくなってください」
「あっ!……あん、んッ……やぁ、あっひ、あっあっ……!」
 屹立の付け根を内側から擽るように指を動かすと、オルガの口から軽やかな喘ぎが零れ出た。グレウスが大きく張った雁の部分で捏ねてやると悦ぶ場所だ。
 奥の深い場所もオルガは好むが、指では届かない。そこは後でたっぷりと奉仕することにしよう。
 日頃自分を抱き留めてもらっている感謝を込めて、グレウスは柔らかな肉壁を揉みしだいた。
「ゃ、あッ、あ――ッ!………………く……ッ、どうし、て……ぁああッ」


 指で内側を刺激すると、オルガの屹立がビクンと跳ね上がった。
 動きに合わせて腰が揺れ、腹につきそうなほど反ったものから半透明の先走りがとろとろと滴る。
 オルガは不満げだ。あっという間に吐精直前にまで追い上げられたことが納得いかないのだろう。
 薬酒の効果だと思うが、今それを伝える必要はない。
「オルガ、中でイキましょう」
「――ッ!」
 グレウスは喘ぐオルガの耳元で囁いた。そのまま舌を伸ばして耳の溝に這わせる。
「み、みッ……あひ、ッ、みみは……ぁッ」
「大丈夫……噛んだりはしませんから……」
「しゃ、べるなぁッ……!」
 オルガは耳がひどく弱い。
 グレウスしか知らないことだろう。顔に掛かる髪をいつも頭の高い位置で一つ結わえているのは、実用的な理由よりも、長い髪で耳を隠しておきたいからなのだ。
 上端が少し尖った薄い肉片。
 複雑な溝を刻み、控えめな耳垂となだらかな窪み、そして指も入らない小さな穴を持つこの場所を弄られると、オルガは瞬く間に昂ってしまう。
「あ! あ――ッ……ひぃ、ん、ん――ッ……やらぁッ、み、みはッ……」
 全身の肌を粟立たせて、今までにない激しさで身を捩る。
 グレウスはそんなオルガを愛しく思いながら、耳朶を口に含んでべろりと舐めた。


 今までは、オルガが嫌がっているようだと思っていたので、この場所を責めるのは控えていた。
 だが本当に嫌がっていたのだろうか。
 上擦った声や避ける素振りも、考えてみれば意地っ張りなオルガからの遠回しな誘いだったのかもしれない。ちゃんと気づいてやれなかった察しの悪さが腹立たしい。
「やああぁ……ッ、やめ、いく、みみは、やッ、いく、ッ……いくぅうッ……!」
 あられもない善がり声が次々と吐き出される。やはりここが相当気持ちいいようだ。
 腹まで反り返ったものが筋を浮かべ、糸を引いて粘液を滴らせる。先走りか、それとも中イキした時の愛液かもしれない。
 男としての解放を与えてやりたい気持ちもあったが、精を放つとその後には鎮静期間が訪れてしまう。
 正気を失わせよと言ったのはオルガなのだから、今日は連続して絶頂を味わえる中イキ以外はさせたくない。
 体内で指を小刻みに動かしながら、耳の窪みに尖らせた舌先を入れて、グレウスはオルガを追い詰めた。
「ッ!……ぅうううぅ――――ッ……グ、レ、ウ、スゥぅ――ッ……ッ……!」
 なぜか怒り心頭に聞こえる声を上げて、オルガが体を仰け反らせた。中でイッたらしい。
 硬直した白い腹の上に、精液混じりの緩い蜜が次々と吐き出される。指がぎゅっと締め付けられ、柔らかだった肉壁は異物を追い出すかのように激しく蠕動した。
 さらなる高みを与えるために、グレウスは親指の腹をオルガの会陰に押し当てて振動させる。
「……ッ、もうッ…………もう、ッ…………ぅう――ッ!……あああ――――ッ!……」


 息も絶え絶えに悶えながら、二度三度とオルガが連続して絶頂に駆け上った。
 白い肌が紅潮し、凛として冷たい美貌が惚けたように蕩ける。快楽に我を忘れ、正気を失いかけているように見えなくもない。
 しかし、念には念を入れておくべきだろう。
 何度も蜜を吐き出して力を失った竿に、グレウスは空いた方の手を伸ばした。粘液の滑りを借りて、男としては機能しなくなったそれを扱きあげる。
 体の中からも外からも、嫌がるほど敏感な部分も、男としての矜持の部分も。
 何もかもを愛して、心置きなくオルガを狂わせてやりたい。


「――ひぃッ! ひ、ぃぃッ!……も、ぉ……ォッ、ォッ、ォオウ――ッ!……」
 体を硬直させたオルガが、開きっぱなしの口から舌を突き出して喘いだ。今までに見たことがないほどの善がりようだ。
 グレウスは安堵しながら、耳に唇を寄せて囁く。
「素面でなくなったら教えてください。俺をどう思っているのか、貴方の口から聞きたい……それまで、いくらでもお手伝い致しますから」
 ちゅ、と音を鳴らして耳に口づけする。
 オルガはまだ理性と恥じらいを残しているのだろうか。
 汗ばんだ体を仰け反らせ、ビクン、ビクン、とひっきりなしに痙攣しながら、
「……馬……鹿ぁあああ……ッ……あッ、あッ、やぁああああッ……!」
 と、照れ隠しに罵るのが、グレウスの耳に届いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

処理中です...