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第一章

第19話:お追従

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 今日も王家におもねりご機嫌を取っている。
 内心忸怩たる想いだが、俺の正義感で不正や汚職を糾弾してしまったら、王家を皆殺しにして戦争を始めることになる。
 公爵家の領主職だけでウンザリしているのに、もっと大変な国王職など絶対にやりたくないから、ここは我慢するしかない。
 それに、俺にとって一番大切なのはリアナだ。
 リアナを幸せにする以外は些末な事で、波風立てずにやれることをやるだけだ。
 
「国王陛下、王妃殿下、これはリアナから王太子殿下への献上品でございます」

「ほう、これは素晴らしい原石だな」

「ええ、とても素晴らしいですわ、ラゼル女侯爵も自分の立場をよくわきまえて、殊勝な行動ができるのですね」

 王妃が意味深な言い方をするが、それも仕方がない事だ。
 ラゼル公爵家が今回の婚約辞退に関して王家に含む所がない事はもちろん、リアナ個人が王太子に意趣遺恨がない事を表明しなければいけない。
 光魔術の使い手が現れたタイミングでの婚約辞退だ、聡い貴族なら王家の意向には直ぐに気がつくし、ラゼル公爵家の本心も気になるだろう。
 特に他国と友好関係のある貴族は、これを機会に独自の権限を強化しようとする貴族派を誘い、王家と貴族の関係に揺さぶりをかけようとするだろう。
 それを防ぐためにも、リアナの言動はとても大切なのだ。

「だが、これはゴードン侯爵の鉱山からとれた原石であろう。
 それをラゼル女侯爵が献上するというのは問題があるのではないか」

 過去の原石献上は俺からだったし、競売も俺が行っているから、王侯貴族は俺からの献上品だと思うという国王の言葉はもっともだ。
 だが、それに対する言い訳など簡単だ。

「はい、確かに私の宝石鉱山でとれたものではありますが、ラゼル女侯爵が王太子殿下に献上したいと言って買い取ったのでございます。
 私の鉱山からとれたものであっても、ラゼル女侯爵が買い取って献上すれば、ラゼル女侯爵の献上品と言っても問題ないと思いますが」

「ふむ、そうじゃの、何の問題もないの、遠くの海でとれた真珠をゴードン侯爵が献上しても、真珠を採取した海女が献上した事にはならんからな」

 おい、おい、おい、それは真珠を手に入れて献上しろという謎かけか。
 まさか、俺が真珠を創り出せる事を知っているとは思えないが……
 まあ、いい、それは後で考えればいい事だ。
 それよりも今はリアナの名声を高め、もっと立場を強化する事だ。
 伯爵よりも侯爵の方が王都に常駐させられる兵力が多くなる。
 ラゼル公爵家とゴードン侯爵とロスリン侯爵でそれぞれ兵力を持てば、王家が奇襲を仕掛けて来ても簡単には負けない。

「陛下、今回の献上品の褒美でございますが……」

 多少の駆け引きは必要だったが、王家もリアナを陞爵させてラゼル公爵家との友好関係が維持されているとアピールしたかったのだろう。
 リアナ個人所有のロスリン伯爵位がロスリン侯爵に陞爵させた。
 まあ、王家は莫大な価値のある原石を手に入れて利を得るだけで、全く金も領地も持ち出していないのだから、ぼろ儲けだよな、正直腹が立つ。

「ラゼル公爵家の従属爵位」
一:ラゼル侯爵・ラゼル伯爵・ラゼル子爵
二:ラゼル侯爵・ラゼル子爵・ヘプバーン男爵・スコット男爵
三:ラゼル侯爵・ラゼル伯爵・ヘプバーン男爵・スコット男爵
四:ラゼル侯爵・ラゼル伯爵・ヘプバーン子爵・スコット男爵
「キャメロン所有の爵位」
一:ゴードン侯爵・ポルワース男爵・ロロ男爵
二:ゴードン侯爵・ポルワース子爵・ロロ男爵
三:ゴードン侯爵・ポルワース伯爵・ロロ男爵
「リアナ所有の爵位」
一:ロスリン伯爵
二:ロスリン侯爵
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