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第一章
第18話:経済教育
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「いいかい、リアナ、私には莫大な宝石があるけれど、それを簡単に売ってしまってはいけないのだよ、何故だか分かるかい」
「宝石の値段が下がってしまいからですか、お兄様」
「うん、その通りだけれど、それだけではないのだよ。
私が宝石を売って金銀を手に入れ、それを使わないと金銀が少なくなる。
少ない金銀で物を買おうとしても、買えない事が起きてしまう。
でも商人は全く物が売れないと困るから、値を下げてでも売ろうとする。
だから物の値段が下がってしまうんだよ。
まあ、金銀が不足しても小麦や大麦で物々交換したりするから、単純にはそうならないだろうけど、そう覚えてくれればいい」
「正直よくわかりません、兄上様」
「私も完全には分かっていないよ、そんな風になる可能性があるから、我々金を持っている貴族は適度の民からモノを買わなければいけないと覚えてくれればいい」
「施しではいけないのでしょうか、兄上様」
「そうだね、できれば施しではなく物を買ったり何かをさせた対価を支払う方がいいね、民は動物ではなく人間なのだから、何かを成し遂げる幸せを感じられるようにすべきだと私は思っている」
「はい、兄上様」
「同時に、私が宝石を売って手に入れた金銀を使い過ぎたとしよう。
そうするとその金銀を得た者が食糧や塩を買い占めたらどうなる」
「食糧や塩がなくなります」
「そうだね、なくなる事はなくても、値が上がってしまうね。
人は食べなければ死んでしまうから、高くなっても買わなければいけない。
だけど中にはどうしても買えない者が出てくる。
彼らは黙って飢えて死ぬだろうか、そんな事はないね、誰からか食糧を奪ってでも生きようとするだろう。
私はお金を使い過ぎるだけで人に罪を行わせ、場合によっては殺される者まで生み出してしまうのだよ」
「そんな、兄上様」
「そんなに哀しそうな眼をしないでくれ、リアナ。
私たち貴族は、特に力と財力のある貴族は、その使い方に細心の注意を払わなければいけないのだよ。
性根の腐った者に、人々が生きるためにどうしても必要とするモノを買い占めるような者に、利を与えてはいけないのだよ。
大切な食糧を売り惜しんで値を釣り上げるような者に、年貢で得た食糧を売ってはいけないし、賄賂を受け取って売り惜しみを見逃してもいけない。
父や母が当たり前のようにやっていたことを、私やリアナが引き続いてやるという事は、民に罪を犯させていることになるのだよ」
「分かりました兄上様。
お金の使い方、年貢の売り先、出入りの商人の選定、その全てに細心の注意を払い、領民が飢える事のない領地にしてみせます」
「実際には私同様色々と失敗するだろう。
だが、それで落ち込んだり諦めたりしてはいけないよ。
誰になんと非難されようと、私達が諦めることなくやり続けなければ、領民が飢えることになるからね」
「はい、お兄様」
「宝石の値段が下がってしまいからですか、お兄様」
「うん、その通りだけれど、それだけではないのだよ。
私が宝石を売って金銀を手に入れ、それを使わないと金銀が少なくなる。
少ない金銀で物を買おうとしても、買えない事が起きてしまう。
でも商人は全く物が売れないと困るから、値を下げてでも売ろうとする。
だから物の値段が下がってしまうんだよ。
まあ、金銀が不足しても小麦や大麦で物々交換したりするから、単純にはそうならないだろうけど、そう覚えてくれればいい」
「正直よくわかりません、兄上様」
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「施しではいけないのでしょうか、兄上様」
「そうだね、できれば施しではなく物を買ったり何かをさせた対価を支払う方がいいね、民は動物ではなく人間なのだから、何かを成し遂げる幸せを感じられるようにすべきだと私は思っている」
「はい、兄上様」
「同時に、私が宝石を売って手に入れた金銀を使い過ぎたとしよう。
そうするとその金銀を得た者が食糧や塩を買い占めたらどうなる」
「食糧や塩がなくなります」
「そうだね、なくなる事はなくても、値が上がってしまうね。
人は食べなければ死んでしまうから、高くなっても買わなければいけない。
だけど中にはどうしても買えない者が出てくる。
彼らは黙って飢えて死ぬだろうか、そんな事はないね、誰からか食糧を奪ってでも生きようとするだろう。
私はお金を使い過ぎるだけで人に罪を行わせ、場合によっては殺される者まで生み出してしまうのだよ」
「そんな、兄上様」
「そんなに哀しそうな眼をしないでくれ、リアナ。
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性根の腐った者に、人々が生きるためにどうしても必要とするモノを買い占めるような者に、利を与えてはいけないのだよ。
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「実際には私同様色々と失敗するだろう。
だが、それで落ち込んだり諦めたりしてはいけないよ。
誰になんと非難されようと、私達が諦めることなくやり続けなければ、領民が飢えることになるからね」
「はい、お兄様」
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