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第一章

第6話:炊き出しと仕事

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 先程から注意深く見ていたが、リアナの護衛騎士と戦闘侍女は優秀だ。
 リアナの邪魔にならないように、でも盾になれる場所にいる。
 問題は新たに召し抱えた没落貴族や下級貴族の令嬢達だ。
 リアナがいずれ入学する王立学園は広く門戸を開いているので、王家士族や陪臣士族はもちろん、優秀な平民も入園している。
 だが流石に教室は身分に応じて別々にされていて、その身分差を打ち破れるのは天才的に優秀な者だけだ。

「新たに召し抱えた令嬢達は、徐々に役目を覚えて行けばいい」

「「「「「はい、キャメロン様」」」」」

 最上位でも没落した伯爵家の傍系一族の令嬢だが、当主に金銭的な支援を約束すれば、養女にしてリアナと同じ教室に入れるようにするだろう。
 最悪時間稼ぎのための盾になってくれればいい。
 別にリアナを断罪する王太子の盾になれという訳ではなく、リアナがマインドコントロールされたりしないように、疑わしい奴との間に立ってくれればいい。
 子爵家以下の令嬢達には、カミーユ王太子を誑かすクルー男爵家のルナネ聖女の確かな情報を集めて、非常時には盾になってもらう。

「さあ、宝石を売った金がたくさんある。
 王都に住む恵まれない者達に食べ物を分け与え、仕事をする気がある者には、私が仕事を与えてやるから、皆で手伝ってくれ」

「「「「「はい、キャメロン様」」」」」

 私の言葉を聞いたリアナがとてもうれしそうに笑っている。
 最初は見殺しにする気だったから、情操教育などしなかった。
 だがそれでも、とても気立てのよい子に育っていた。
 あまりにも可愛くて、助けたくなって、情操教育を施してからはリアナこそが聖女に相応しいと断言できるくらい、気立ての好い子に育っている。
 だからこれから聖女がやると分かっている善行を、全部リアナに先にやらせることにしたんだ。

「聖女リアナ様、お恵みありがとうございます」

 年老いた乞食がリアナを聖女と言って褒め称えている。
 食い物欲しさのお追従なのは分かっているが、その称号がリアナの命を救うかもしれないから、貪欲に称号を手に入れるようにする。
 ゲームでは、リアナが聖女を傷つけたという言い掛かりをつけられて処刑される前に、クルー男爵家のルナネを聖女と慕う王都の貧民達が、リアナを処罰しろと王都で暴動を起こしていた。
 それを防ぐためには、王都の貧民をリアナの味方につけておく方法が一つ。
 王都に貧民自体が存在しないようにしておく方法が一つだ。

「よく聞きなさい、不幸な民達よ。
 本気で働いて貧しさから逃れる気がある者は、私が仕事を与えよう。
 ラゼル公爵領内で、炭を造る職人と紙を作る職人を育成する予定だ。
 刀鍛冶や石工になりたい者も弟子入り先を紹介してやろう。
 どうだ、働く気がある者はいないか?」
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