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第二章

第20話:ブートル市場

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「今日も大盛況ね、セシリア」

「本当ですね母上」

 最初の音楽の祭典から三カ月、ブートル副伯家の領都は急速に整備されている。
 領都の領城に予定されている場所の前には、広大な市場が建設されている。
 まだちゃんとした店ではなくテントや馬車での営業なのですけどね。

「ふっふっふっふっ、ジェイムズ王国の王都以上の市場ね」

「はい、集まってくれている商人の話では、大陸一になるだろうとの事です」

「まあ、まあ、まあ、まあ、それは凄い事ね」

「はい、その分治安を維持することが大変で、父上が警備隊を率いて走り回ってくださっています」

「ふっふっふっふっ、あの人もやりがいがあるのでしょうね。
 毎日うれしそうに市場や工房の話をしてくれていますよ」

「そうですか、市場だけではなかったですね。
 楽器や武器の職人が商品を製作する工房も護らないといけないのでしたね」

 ヘルメスが集めてくれたのは吟遊詩人と音楽家と商人だけではなかった。
 楽器の職人も大陸中から集めてくれた。
 お陰で大陸中で一番品質のいい楽器がブートル副伯領にある。
 
「今日は歌劇と剣闘を王家の方々と観るのよね?」

「はい、母上。
 父上も王家の方々をお迎えするまでには戻ってこられます」

 私は反対だったのですが、ヘルメスの夢は賭博好きの王族にまで影響を与えてしまったようで、ブートル副伯領で各種闘技による賭博が開催されています。
 普通なら王都で行われるはずなのですが、犯罪者ギルドと商人ギルドがヘルメスに影響されたのか、王都での開催に協力しなかったのです。

「それなら安心ですね。
 歌劇観賞はいいのですが、剣闘はちょっと……
 私はどうも血が流れることが苦手なのです」

「大丈夫ですわ、母上。
 母上が慈母聖女だという噂は大陸中に広まっています。
 母上に無理矢理剣闘を見せようとする王族の方はおられないでしょう」

 本当にヘルメスはろくな事をしない。
 確かに歌劇や歌唱だけでなく各種闘技大会を行った事で、ブートル副伯領には莫大な税金が落ちることになりました。
 利を求めて多くの商人が集まる事で、私が宝石を創らなくても済みますし、食糧も勝手に集まるようになりました。

(ヘルメス、返事をしなさい、ヘルメス。
 この責任はどうとってくれるのですか?!)

 しかし、その分母上に負担をおかけしているのは間違いありません。
 できるだけ父上と私で対応していますが、母上にも王侯貴族の接待をしていただかなくてはいけないくなっています。

(いいかげん出てきてぜんぶ正直に話しなさい。
 どうせろくでもない計略を考えているのでしょ。
 黙ってないで返事をしなさい!)
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