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第一章

1話

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 私は王太子殿下の事など愛していませんでした。
 殿下が勝手に私を見初めたのです。
 私には幼い頃から将来を約束した相手がいたのです。
 ですが王家の威光には逆らえません。
 王太子殿下に見初められるのは、ウェセックス伯爵家にとっても名誉な事ではあるのです。

 だから私は、泣く泣くアレックスと別れました。
 アレックスとは、マーキス男爵家の嫡男アレクサンダーの事です。
 私が心から愛したただ一人の方です。
 マーキス男爵家は、我がウェセックス伯爵領とフォーファー伯爵領の境界のにある、切り立った山脈を領地としています。
 
 多くの求婚を受けていた私ですが、普通は家格と言うモノがあります。
 家格が釣り合わない結婚は不幸の素です。
 伯爵家なら、侯爵家から子爵家が順当な相手でしょう。
 男爵家との結婚が絶対に不可能という事はありませんはが、アレックスと結婚する場合は、求婚をお断りした侯爵家から恨みを買います。
 求婚してくださった他の多くの貴族家からも恨みを買います。

 侯爵家や伯爵家から見れば、大恥をかかされた事になるからです。
 ですがアレックスと私には希望がありました。
 アレックスが竜騎士となる事です。
 竜騎士は特別な称号です。
 竜を乗騎するなど、普通は不可能なのです。

 王国の誇る飛行騎士団でも、騎魔獣の中でも比較的手懐けやすい天鹿と天馬がほとんどで、わずかに天犬がいるだけです。
 ですが代々のマーキス男爵家当主の中には、竜を騎獣とした方がおられるのです。
 そんな方は、竜騎士と称えられ、伯爵同等とされたと聞きます。
 それほど名誉な称号なのです。
 それがアレックスと私の希望でした。

「騎魔獣」
天鹿 :
天馬 :ペガサス
天犬 :
鷲馬 :ヒッポグリフ
鷲獅子:グリフォン
天狼 :
天虎 :
飛竜 :ワイバーン

 ですが駄目でした。
 アレックスが竜を手懐ける前に、私の評判を聞いた王太子殿下に舞踏会に呼び出されたのです。
 私はまだ成人前で、父上様も私もお断りしたのですが、王太子殿下は聞き入れてくださいませんでした。

 父上様に伴われて初めて参加した舞踏会で、王太子殿下は私を見初めたのです。
 直ぐに王太子殿下のハーレムに入れられそうになりました。
 伯爵令嬢の私が、遊び女同様の扱いを受けそうになったのです。
 ウェセックス伯爵家はマクミラン王国建国からの忠臣です。
 さすがにそんな扱いは許されません。

 国王陛下も王太子殿下を諫められ、正室とはいきませんが、側室の一人として王太子殿下と婚約することになりました。
 王太子殿下は直ぐにも私をハーレムに入れようとされましたが、父上様が国王陛下に願い出て、成人まで待っていただきました。
 それが、とんでもないことになったのです。
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