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第一章
第25話:世界樹の懇願
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帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年9月30日・ロディー視点
ロディー15歳
俺の言葉をジェイミーから伝え聞いたドワーフたちは奮起した。
いや、もう俺の酒を飲めないかもしれないと心から恐怖したのだ。
俺はドワーフ族が酒を優先して世界樹の城を奪われたと言い切った。
負け戦の責任はドワーフたちにあるとも言った。
大切な領民は1の城にいる人間だけだとも言った。
その言葉を聞けば、俺がドワーフたちを領民だと思っていないのが分かる。
公言していたゴブリン殲滅すらできない嘘つきの卑怯者だと思われている。
敗軍の責任を問いはしないが、頼みにされていないのが分かる。
俺にいつ城から出て行けと言われてもおかしくない状況だ。
異常なほど酒に執着しているドワーフたちが狂戦士化するのに十分な状況だ。
俺の予想通り狂戦士化したドワーフたちは眠るのも忘れてゴブリン殲滅に動いた。
邪魔をするモノは、いかなるものであろうとブチ殺して進んだ。
降伏の仲介をしようとした部族はゴブリンと共に皆殺しにされた。
襲撃に加わらなかったゴブリンの里も、襲撃犯を匿ったと皆殺しにされた。
中には無条件降伏を申し出たゴブリンの里もあったが、皆殺しにされた。
ゴブリン族は、世界樹の城襲撃に関与した同族を皆殺しにしてドワーフたちに差しだしたが、許されることなく皆殺しにされた。
次に狙われたゴブリンの里は、襲撃を知っていて黙認していた里の有力者を殺して差し出したが、それでも許されずに皆殺しにされた。
まだ襲撃を受けていない全てのゴブリン族が、里を捨てて逃げ出した。
「騎士殿、時間はかかったが、約束通り襲撃に加わったゴブリンは皆殺しにした。
それと、もう絶対に騎士殿の城を奪わせない。
騎士殿が大切に思っている領民を見殺しにする事もない。
この場で、騎士殿と領民達の前で誓う。
だからこれまで通りここに住まわせてもらえないだろうか?」
俺が突き離してから1カ月が過ぎていた。
戦いの垢も返り血も拭うことなく戦い続けてきたのだろう。
サンマロの護衛が粗相した時よりも強い刺激の臭いが立ち込めている。
「よくやってくれた、ドワーフの戦士たち。
公言していた事を成し遂げた事は当然としても、新たに誓いを立ててくれた事は心からうれしく思っている。
俺も約束通り戦勝の宴を開かしてもらおう。
15年エイジングした清酒を大量に用意してある。
好きなだけ飲んで戦いの憂さを晴らしてくれ」
「「「「「ウォオオオオ!」」」」」
本当は身体を清潔にしてから酒を飲んでもらいたいのだが、どうせ浴びるほど飲んで酒の匂いが満ちる事になる。
身体を清潔にするのは戦勝祝いの後でいい。
それよりも心配なのは、戦勝祝いの最中に奇襲をかけられる事だ。
「アルフィン、全ての城門を閉めて誰が来ても開けるな。
人間族の領民は全員二ノ丸内に収容してくれ。
二ノ丸城壁には昼夜関係なく見張りを置いてくれ。
誰かが三ノ丸内にいるのが見えたら、俺に報告させてくれ。
三ノ丸は放棄してかまわない。
領民が誰1人死なないようにするのだ」
「はい、承りました」
俺がこの城を攻め落とす立場だったら、この好機を見逃さない。
1カ月間狂戦士化して暴れ回ったドワーフ族が戦勝祝いの宴会をしている。
まず間違いなく前後不覚になるまで深酒する。
宴会が始まってから12時間後くらいに報告が入った。
「ご領主様、三ノ丸東城門の方から声が聞こえてくるとの報告が上がってきたのですが、いかがすればいいでしょうか?」
「放っておけばいい。
もし案内も待たずに三ノ丸城壁を乗り越えて二ノ丸に入ってきたら、明らかな敵として俺がブチ殺す。
敵なのか客なの判断するには放っておくのが1番だ」
三ノ丸城外にいる連中は辛抱強く待っていた。
警戒しなければいけない領民は緊張を強いられただろうが、ドワーフ族が宴会をしている間は昼間の農作業が免除されているのだから、頑張って欲しい。
何時この城が敵に包囲されるか分からない。
その時にドワーフ族が味方のままだとも限らないのだ。
「騎士殿、面会を求めている者が城外にいるというのは本当なのか?」
三日三晩の戦勝祝いが終わって、丸1日泥のように眠ったドワーフたちだが、酒の影響を全く感じさせない状態で仕事を始めていた。
アルフィンがその間に起きた事を話してくれたのだろう。
自分たちの失態を知ったジェイミーが慌てて執務室にやってきた。
「本当だが、気にする事はない。
何の約束もしていない相手だし、2度も続けて奇襲を受けた後だ。
俺たちが全ての部族や人間との関係を断っても許される」
「そう言ってもらえると少しは心も軽くなるが、向こうが強引に襲撃してきたら大変な事になっていた」
「大変な事になどなっていないさ。
何が来ようと、俺が魔力で耕せは全て土に返るだけだ。
それが世界樹であろうとエンシェントドラゴンであろうと同じさ」
「……確かに、その通りだ……」
俺が言外にドワーフ族などいなくても困らないと言ったのが分かったのだろう。
戦勝祝いに浮かれて城の防衛を蔑ろにしていた事が、ジェイミーの心を重くしているようだ。
ドワーフたちには、これからも働いてもらう心算だから、この辺で役目を与えておいた方がいいだろう。
「今から外にいる連中に会う心算だ。
謁見に同席できるように身なりを整えておいてくれ。
護衛をする連中も、恥をかかないくらいには身なりを整えさせてくれ」
「分かった、直ぐに準備をする」
ドワーフたちの事だから、酒が残っている事はない。
だが、まだ風呂に入っていない、恐ろしく臭い奴はいるはずだ。
どれほど強くても、1カ月分の血と汗にまみれた奴を連れて謁見はできない。
井戸水を浴びて垢を擦り落とし、貴人を迎えるに相応しい衣服に着替えるとなると、最低でも半時間は必要だろう。
1時間過ぎた頃になって、ようやくドワーフたちの準備が整った。
俺が言わなくても、全ドワーフが臨戦態勢になっていた。
俺が誰に護衛を命じてもいいように、一分の隙もない完全武装だった。
ここでだらけるような奴がいたら、今度こそ追放されると理解したのだろう。
「外にいる連中は、4日ほど待たせている。
連中も謁見前に身なりを整えたいだろう。
三ノ丸東城門近くにある家を提供してやれ。
連中の身なりが整ったら執務室に連れて来てくれ」
「「「「「はい!」」」」」
俺はもう何時謁見してもいいように身なりを整えている。
外にいる連中が何時でも謁見できるように常に身なりを整えている可能性もある。
魔術で瞬時に身なりを整えられる可能性もある。
そもそも身なりを気にしない種族と言う事も考えられる。
だが長時間待つ事も考慮して、その時間つぶしを用意してある。
身なりが乱れる農業や匂いが移る醸造はできないが、細工は可能だ。
農家が副業で行う、木工細工ならいつでもできる。
さすがに木屑がたくさん出るようなモノは作れないが、麻や綿花の糸を使って布を織る事くらいならできる。
「ご領主様、世界樹殿の使者が謁見に参られました。
使者にこられたのは、人の姿に変化した緑竜様、聳孤様、ドライアド様、ワーウッド様の4人でございます。
入って頂いても宜しいでしょうか?」
外にいた連中は半時間ほどで謁見の準備を整えたのだろう。
俺が思っていたよりも短い時間でやってきた。
アルフィンはとても頭がいいので、誰が誰を何人派遣したかを教えてくれる。
予想通り世界樹が肥料欲しさに使者を送ってきたようだ。
「入ってもらってかまわない」
俺の代わりに緊張した表情のジェイミーが答えてくれる。
エンシェントドワーフのジェイミーでも、エンシェントドラゴンの緑竜や四霊の一角である麒麟が相手だと緊張するのだろう。
聳孤と言うのは青い体色の麒麟の事だ。
麒麟の事に詳しい者なら、麒麟とは体色が黄色い個体だと区別している。
「急に押しかけて申し訳ない。
本来ならこのような無礼はしないのだが、世界樹にどうしてもと頼まれたのだ。
私も緑竜殿も、色々なしがらみがあって、世界樹の頼みは無視できないのだ」
温厚そうな聳孤が、苦虫を嚙み潰したよう表情の緑竜に代わって話してくれる。
「我々については知ってくれていると思いますが、木の精霊なので、全ての樹木を支配する世界樹様の頼みは断れないのです。
好きでやっているわけではないので、どうか許してください」
樹木から人に変化できるワーウッド族と、その上位種であるドライアド族の代表が、深々と頭を下げて謝ってくれる。
「騎士殿も貴方方の苦しい立場は理解されておられる。
だから騎士殿も無理無体な事を言われたりはしない。
だが、今回の件は貴方方も理解しているだろう?
騎士殿が世界樹を信じられなくなって、あの地を放棄するのは当然であろう?」
「その件に関しては、世界樹も十分反省している。
次にあのような事があった場合は、公平中立などと言わず、騎士殿やドワーフ族の味方をして戦うと言っている」
「騎士殿は、領民をとても大切にされている。
我らドワーフは自分の身は自分で護れる。
騎士殿が護りたいのは弱き領民たちだ。
世界樹は領民たちを護ると約束できるのか?」
4人の代表が目で合図している。
「勝手に約束する事はできないから、戻って世界樹と相談する」
「次の条件は、騎士殿1代だけでは安心して本拠地を移す事はできない。
代を重ねても世界樹が騎士殿の子孫を護ると約束するかどうかだ」
「それも我らが勝手に約束する事はできない、戻って世界樹と相談する」
「次の条件は、世界樹が水を供給するかどうかだ。
世界樹があの一帯の水分を吸収するから、井戸を掘っても水が得られない。
世界樹が地中の水を吸い上げる水分通導から住民の水を供給する気があるのか?」
「それも我らが勝手に約束する事はできない、戻って世界樹と相談する。
これでは一向に埒が明かないから、領主殿が直接交渉すればいいのではないか?」
「俺を呼びつけると言うのか?
俺を呼びつけておいて、都合のいい条件を要求するようなら、世界樹と耕して土に返すが、それでもいいのだな!」
「すまない、勝手な事を言ってしまったようだ。
ただ我らも何度もここと世界樹の間を往復する事はできない。
ご領主殿の要望を全て教えてもらえないだろうか?」
「忙しくて往復できないと言うのなら、もう来なくていい。
こちらは既に世界樹の頼みを聞いてあれほど育ててやったのだ。
それなのに、恩を仇で返すようにゴブリン族の奇襲を許した。
何なら今直ぐ毒薬で世界樹を枯らす事もできるのだぞ!
お前たちが何度も往復するのが嫌だというのなら、俺もお前たちの相手をするのは死ぬほど嫌のだぞ!
使者殿たちは忙しいそうだから、直ぐに帰ってもらえ!」
『ロディー騎士領』
領主:ロディー
家臣:エンシェントドワーフ・38人(ジェイミー、ナイル・ショーンなど)
:ハイドワーフ ・74人
:エルダードワーフ ・112人
:ドワーフ ・497人
家臣:人間 ・1人(アルフィン)
小作:人間男 ・24人
:人間女 ・24人
:人間子供 ・35人
:人間寡婦 ・53人
:人間孤児 ・59人
馬 :軍馬 ・1頭
:輓馬 ・10頭
:牛 ・38頭
:山羊 ・35頭
:羊 ・14頭
:豚 ・25頭
:鶏 ・200羽
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民 ・レベル7961
:自作農民・レベル7313
:開拓農民・レベル52637
:地主農民・レベル7127
:武装農民・レベル7961
付属スキル:耕種農業レベル7961
耕作 レベル2918
種蒔き レベル2319
品種改良レベル2319
農薬生産レベル3416
農薬散布レベル3416
選定 レベル4912
収穫 レベル 896
剣鉈術 レベル7961
戦斧術 レベル7961
:工芸農業レベル212
木工 レベル212
紡績 レベル212
織物 レベル322
:自作 レベル7313
燻製 レベル68
酒造 レベル7313
発酵 レベル7313
陶芸 レベル225
料理 レベル2149
:開拓 レベル52637
伐採 レベル5327
建築 レベル1293
石工 レベル 21
魔力生産レベル52637
魔力増幅レベル52637
:地主農民レベル7127
領民指導レベル7127
:武装農民レベル7961
剣術 レベル7961
槍術 レベル96
戦斧術 レベル7961
弓術 レベル195
石弓術 レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル633
調教術 レベル633
一般スキル:生産術レベル2149
木工 レベル1293
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル2149
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル1293
石工 レベル21
「基本能力」
HP:20423258
魔力:18261948
命力:13083400
筋力:1167771
体力:1055535
知性:975222
精神:973334
速力:880856
器用:829990
運 :829990
魅力:829990
ロディー15歳
俺の言葉をジェイミーから伝え聞いたドワーフたちは奮起した。
いや、もう俺の酒を飲めないかもしれないと心から恐怖したのだ。
俺はドワーフ族が酒を優先して世界樹の城を奪われたと言い切った。
負け戦の責任はドワーフたちにあるとも言った。
大切な領民は1の城にいる人間だけだとも言った。
その言葉を聞けば、俺がドワーフたちを領民だと思っていないのが分かる。
公言していたゴブリン殲滅すらできない嘘つきの卑怯者だと思われている。
敗軍の責任を問いはしないが、頼みにされていないのが分かる。
俺にいつ城から出て行けと言われてもおかしくない状況だ。
異常なほど酒に執着しているドワーフたちが狂戦士化するのに十分な状況だ。
俺の予想通り狂戦士化したドワーフたちは眠るのも忘れてゴブリン殲滅に動いた。
邪魔をするモノは、いかなるものであろうとブチ殺して進んだ。
降伏の仲介をしようとした部族はゴブリンと共に皆殺しにされた。
襲撃に加わらなかったゴブリンの里も、襲撃犯を匿ったと皆殺しにされた。
中には無条件降伏を申し出たゴブリンの里もあったが、皆殺しにされた。
ゴブリン族は、世界樹の城襲撃に関与した同族を皆殺しにしてドワーフたちに差しだしたが、許されることなく皆殺しにされた。
次に狙われたゴブリンの里は、襲撃を知っていて黙認していた里の有力者を殺して差し出したが、それでも許されずに皆殺しにされた。
まだ襲撃を受けていない全てのゴブリン族が、里を捨てて逃げ出した。
「騎士殿、時間はかかったが、約束通り襲撃に加わったゴブリンは皆殺しにした。
それと、もう絶対に騎士殿の城を奪わせない。
騎士殿が大切に思っている領民を見殺しにする事もない。
この場で、騎士殿と領民達の前で誓う。
だからこれまで通りここに住まわせてもらえないだろうか?」
俺が突き離してから1カ月が過ぎていた。
戦いの垢も返り血も拭うことなく戦い続けてきたのだろう。
サンマロの護衛が粗相した時よりも強い刺激の臭いが立ち込めている。
「よくやってくれた、ドワーフの戦士たち。
公言していた事を成し遂げた事は当然としても、新たに誓いを立ててくれた事は心からうれしく思っている。
俺も約束通り戦勝の宴を開かしてもらおう。
15年エイジングした清酒を大量に用意してある。
好きなだけ飲んで戦いの憂さを晴らしてくれ」
「「「「「ウォオオオオ!」」」」」
本当は身体を清潔にしてから酒を飲んでもらいたいのだが、どうせ浴びるほど飲んで酒の匂いが満ちる事になる。
身体を清潔にするのは戦勝祝いの後でいい。
それよりも心配なのは、戦勝祝いの最中に奇襲をかけられる事だ。
「アルフィン、全ての城門を閉めて誰が来ても開けるな。
人間族の領民は全員二ノ丸内に収容してくれ。
二ノ丸城壁には昼夜関係なく見張りを置いてくれ。
誰かが三ノ丸内にいるのが見えたら、俺に報告させてくれ。
三ノ丸は放棄してかまわない。
領民が誰1人死なないようにするのだ」
「はい、承りました」
俺がこの城を攻め落とす立場だったら、この好機を見逃さない。
1カ月間狂戦士化して暴れ回ったドワーフ族が戦勝祝いの宴会をしている。
まず間違いなく前後不覚になるまで深酒する。
宴会が始まってから12時間後くらいに報告が入った。
「ご領主様、三ノ丸東城門の方から声が聞こえてくるとの報告が上がってきたのですが、いかがすればいいでしょうか?」
「放っておけばいい。
もし案内も待たずに三ノ丸城壁を乗り越えて二ノ丸に入ってきたら、明らかな敵として俺がブチ殺す。
敵なのか客なの判断するには放っておくのが1番だ」
三ノ丸城外にいる連中は辛抱強く待っていた。
警戒しなければいけない領民は緊張を強いられただろうが、ドワーフ族が宴会をしている間は昼間の農作業が免除されているのだから、頑張って欲しい。
何時この城が敵に包囲されるか分からない。
その時にドワーフ族が味方のままだとも限らないのだ。
「騎士殿、面会を求めている者が城外にいるというのは本当なのか?」
三日三晩の戦勝祝いが終わって、丸1日泥のように眠ったドワーフたちだが、酒の影響を全く感じさせない状態で仕事を始めていた。
アルフィンがその間に起きた事を話してくれたのだろう。
自分たちの失態を知ったジェイミーが慌てて執務室にやってきた。
「本当だが、気にする事はない。
何の約束もしていない相手だし、2度も続けて奇襲を受けた後だ。
俺たちが全ての部族や人間との関係を断っても許される」
「そう言ってもらえると少しは心も軽くなるが、向こうが強引に襲撃してきたら大変な事になっていた」
「大変な事になどなっていないさ。
何が来ようと、俺が魔力で耕せは全て土に返るだけだ。
それが世界樹であろうとエンシェントドラゴンであろうと同じさ」
「……確かに、その通りだ……」
俺が言外にドワーフ族などいなくても困らないと言ったのが分かったのだろう。
戦勝祝いに浮かれて城の防衛を蔑ろにしていた事が、ジェイミーの心を重くしているようだ。
ドワーフたちには、これからも働いてもらう心算だから、この辺で役目を与えておいた方がいいだろう。
「今から外にいる連中に会う心算だ。
謁見に同席できるように身なりを整えておいてくれ。
護衛をする連中も、恥をかかないくらいには身なりを整えさせてくれ」
「分かった、直ぐに準備をする」
ドワーフたちの事だから、酒が残っている事はない。
だが、まだ風呂に入っていない、恐ろしく臭い奴はいるはずだ。
どれほど強くても、1カ月分の血と汗にまみれた奴を連れて謁見はできない。
井戸水を浴びて垢を擦り落とし、貴人を迎えるに相応しい衣服に着替えるとなると、最低でも半時間は必要だろう。
1時間過ぎた頃になって、ようやくドワーフたちの準備が整った。
俺が言わなくても、全ドワーフが臨戦態勢になっていた。
俺が誰に護衛を命じてもいいように、一分の隙もない完全武装だった。
ここでだらけるような奴がいたら、今度こそ追放されると理解したのだろう。
「外にいる連中は、4日ほど待たせている。
連中も謁見前に身なりを整えたいだろう。
三ノ丸東城門近くにある家を提供してやれ。
連中の身なりが整ったら執務室に連れて来てくれ」
「「「「「はい!」」」」」
俺はもう何時謁見してもいいように身なりを整えている。
外にいる連中が何時でも謁見できるように常に身なりを整えている可能性もある。
魔術で瞬時に身なりを整えられる可能性もある。
そもそも身なりを気にしない種族と言う事も考えられる。
だが長時間待つ事も考慮して、その時間つぶしを用意してある。
身なりが乱れる農業や匂いが移る醸造はできないが、細工は可能だ。
農家が副業で行う、木工細工ならいつでもできる。
さすがに木屑がたくさん出るようなモノは作れないが、麻や綿花の糸を使って布を織る事くらいならできる。
「ご領主様、世界樹殿の使者が謁見に参られました。
使者にこられたのは、人の姿に変化した緑竜様、聳孤様、ドライアド様、ワーウッド様の4人でございます。
入って頂いても宜しいでしょうか?」
外にいた連中は半時間ほどで謁見の準備を整えたのだろう。
俺が思っていたよりも短い時間でやってきた。
アルフィンはとても頭がいいので、誰が誰を何人派遣したかを教えてくれる。
予想通り世界樹が肥料欲しさに使者を送ってきたようだ。
「入ってもらってかまわない」
俺の代わりに緊張した表情のジェイミーが答えてくれる。
エンシェントドワーフのジェイミーでも、エンシェントドラゴンの緑竜や四霊の一角である麒麟が相手だと緊張するのだろう。
聳孤と言うのは青い体色の麒麟の事だ。
麒麟の事に詳しい者なら、麒麟とは体色が黄色い個体だと区別している。
「急に押しかけて申し訳ない。
本来ならこのような無礼はしないのだが、世界樹にどうしてもと頼まれたのだ。
私も緑竜殿も、色々なしがらみがあって、世界樹の頼みは無視できないのだ」
温厚そうな聳孤が、苦虫を嚙み潰したよう表情の緑竜に代わって話してくれる。
「我々については知ってくれていると思いますが、木の精霊なので、全ての樹木を支配する世界樹様の頼みは断れないのです。
好きでやっているわけではないので、どうか許してください」
樹木から人に変化できるワーウッド族と、その上位種であるドライアド族の代表が、深々と頭を下げて謝ってくれる。
「騎士殿も貴方方の苦しい立場は理解されておられる。
だから騎士殿も無理無体な事を言われたりはしない。
だが、今回の件は貴方方も理解しているだろう?
騎士殿が世界樹を信じられなくなって、あの地を放棄するのは当然であろう?」
「その件に関しては、世界樹も十分反省している。
次にあのような事があった場合は、公平中立などと言わず、騎士殿やドワーフ族の味方をして戦うと言っている」
「騎士殿は、領民をとても大切にされている。
我らドワーフは自分の身は自分で護れる。
騎士殿が護りたいのは弱き領民たちだ。
世界樹は領民たちを護ると約束できるのか?」
4人の代表が目で合図している。
「勝手に約束する事はできないから、戻って世界樹と相談する」
「次の条件は、騎士殿1代だけでは安心して本拠地を移す事はできない。
代を重ねても世界樹が騎士殿の子孫を護ると約束するかどうかだ」
「それも我らが勝手に約束する事はできない、戻って世界樹と相談する」
「次の条件は、世界樹が水を供給するかどうかだ。
世界樹があの一帯の水分を吸収するから、井戸を掘っても水が得られない。
世界樹が地中の水を吸い上げる水分通導から住民の水を供給する気があるのか?」
「それも我らが勝手に約束する事はできない、戻って世界樹と相談する。
これでは一向に埒が明かないから、領主殿が直接交渉すればいいのではないか?」
「俺を呼びつけると言うのか?
俺を呼びつけておいて、都合のいい条件を要求するようなら、世界樹と耕して土に返すが、それでもいいのだな!」
「すまない、勝手な事を言ってしまったようだ。
ただ我らも何度もここと世界樹の間を往復する事はできない。
ご領主殿の要望を全て教えてもらえないだろうか?」
「忙しくて往復できないと言うのなら、もう来なくていい。
こちらは既に世界樹の頼みを聞いてあれほど育ててやったのだ。
それなのに、恩を仇で返すようにゴブリン族の奇襲を許した。
何なら今直ぐ毒薬で世界樹を枯らす事もできるのだぞ!
お前たちが何度も往復するのが嫌だというのなら、俺もお前たちの相手をするのは死ぬほど嫌のだぞ!
使者殿たちは忙しいそうだから、直ぐに帰ってもらえ!」
『ロディー騎士領』
領主:ロディー
家臣:エンシェントドワーフ・38人(ジェイミー、ナイル・ショーンなど)
:ハイドワーフ ・74人
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家臣:人間 ・1人(アルフィン)
小作:人間男 ・24人
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『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民 ・レベル7961
:自作農民・レベル7313
:開拓農民・レベル52637
:地主農民・レベル7127
:武装農民・レベル7961
付属スキル:耕種農業レベル7961
耕作 レベル2918
種蒔き レベル2319
品種改良レベル2319
農薬生産レベル3416
農薬散布レベル3416
選定 レベル4912
収穫 レベル 896
剣鉈術 レベル7961
戦斧術 レベル7961
:工芸農業レベル212
木工 レベル212
紡績 レベル212
織物 レベル322
:自作 レベル7313
燻製 レベル68
酒造 レベル7313
発酵 レベル7313
陶芸 レベル225
料理 レベル2149
:開拓 レベル52637
伐採 レベル5327
建築 レベル1293
石工 レベル 21
魔力生産レベル52637
魔力増幅レベル52637
:地主農民レベル7127
領民指導レベル7127
:武装農民レベル7961
剣術 レベル7961
槍術 レベル96
戦斧術 レベル7961
弓術 レベル195
石弓術 レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル633
調教術 レベル633
一般スキル:生産術レベル2149
木工 レベル1293
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル2149
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル1293
石工 レベル21
「基本能力」
HP:20423258
魔力:18261948
命力:13083400
筋力:1167771
体力:1055535
知性:975222
精神:973334
速力:880856
器用:829990
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
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(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
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