王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全

文字の大きさ
上 下
20 / 37
第一章

第14話:臣従移民

しおりを挟む
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年3月20日・ロディー視点
ロディー15歳

 ガブリエルたちエルフ族が詫びの為の工芸品を持ってきたのは10日後だった。
 人間やドワーフに詫びたくない者たちが抵抗したのだろう。
 ルイーズを追放する事では意見が一致しても、他の事では考えが割れる。
 どの社会でもある事だから気にしない。

 俺としては、別に詫びに来なくてもいいと思っていた。
 そんな風に一方的に約束を破れば、エルフ族の評判が地に落ちるだけだ。
 少なくともドワーフ族と係わりのある種族の間では、先のルイーズの言動と共に悪評が広まるだけだ。

 いや、このように詫びが遅くなっている事も含めて、すでに広範囲にエルフ族の悪評が広まっているだろう。
 エンシェントドワーフのジェイミーが、日にちが経つほど機嫌がよくなっているから、率先して悪評を広めているに違いない。

「このように時間がかかった事、先の恥知らずな言動と共に詫びさせて頂く。
 本当に申し訳ない」

 エンシェントエルフのガブリエルが頭を下げるが、後ろに立っているエルフ族の半数は頭も下げずに俺を睨んでくる。

「別に謝ってもらわなくていいですよ、ガブリエル殿。
 自らが行った事は、そのまま自らに返ってくるだけです。
 先のエルフ族の言動も今回のエルフ族の態度も、正確にこの世界に広まり、エルフ族の正しい評価として定着する事でしょう」

「なに?!
 お前がある事ない事広めたのか?」

「黙れ!
 恥知らずの出来損ないが!
 エルフ族の評判を地に落としたのは、他の誰でもないお前たちだ!
 これ以上エルフ族の誇りに泥を塗るのなら、この手で殺すぞ!」

 この10日の間に、よほど腹に据えかねる事があったのだろう。
 前回は最後まで表面上だけは笑みを絶やさなかったガブリエルが激怒している。
 ガブリエルの本気の殺気を受けて、俺に悪態をついたエルフが蒼白になっている。

「エルフ族内の争いを我が領地に持ち込むのは止めていただきたい。
 本気で詫びる気がないのなら、さっさと帰ってもう2度と来ないでくれ。
 それでなくても前回の件でエルフ族に対する評価は最低になっているのだよ。
 詫びに来たように見せかけて、更なる悪態をつかれては、何の罪のない、他の地のエルフ族が不当に扱われかねないからね」

「前回の訪問だけでなく、今回の訪問でまでエルフ族の恥をさらしてしまった事、心から詫びさせて頂きます」

「ガブリエル殿、人間ごときに頭を下げて、それでも誇り高きエンシェントエルフなのですか?!」

 厳しく指摘する俺に深々と頭を下げたガブリエルを、背後に立つエルフ族が糾弾したが、それがこの世で発する最後の言葉になった。
 ガブリエルはエルフ族の誇りを本当に大切にしているのだろう。
 抜き手も見せずに剣を振るって愚か者の首を刎ねた。

「詫びを言いに来て会談の場を血に染めるとは、エルフ族の下劣さは人間並みだな」

「ご領主殿の申される通りで、言い訳のしようがない。
 後日改めて今回の件は詫びさせてもらうが、前回の件の詫びを受け取ってもらえないだろうか?」

「どうやらエルフ族が恥知らずなのは、個人の事ではなく、種族の特性のようだ。
 このような状況を生み出す者を同行させておきながら、ぬけぬけと詫びの品を受け取って全てなかった事にしろと強制してくるのだからな」

「……ご領主殿の申される通りだ。
 どうやら傲慢で恥知らずなのが、エルフの拭い難い性分のようだ。
 頭を冷やして、どうすればご領主殿に詫びを受け取ってもらえるか考えてくる」

「このままもう2度と表れないでくれるのが1番だぞ」

「……その方法も考慮に入れて考えさせてもらう。
 今日は本当に申し訳ない事をしてしまった。
 心から詫びさせてもらう、この通りだ」

「どれほど頭を下げられても、前回脅迫された事も、今回罵られた事も、会談の場を血で汚された事も、なかった事にはならないし、一生忘れる事はない。
 この記憶が俺のエルフ族に対する今後の言動を決める事になるだろう」

「……確かに、自分たちが行った事をなかった事にはできない。
 自分たちの言動が他のエルフ族の生活を脅かす事になるのか……」

「そうだな、お前たちの言動が、人間の国でくらしているエルフ族が虐殺されたり奴隷として虐げられたりする切っ掛けになるだろうな」

「なに?!
 人間、エルフ族を虐殺すると言うのか?!」

 ガブリエルの背後に立っているエルフ族の1人が俺に詰問しよとする。

「ガブリエル、俺たちに全面戦争をしかけたいのなら、こんな恥知らずな難癖をつけずに、正々堂々と宣戦布告したらどうだ。
 前回と言い今回と言い、恥知らずにも程があるぞ」

「これ以上エルフ族の評判を落とすな!」

 ガブリエルは俺に詰問しようとしたエルフ族を殴り倒した。
 殴られたエルフ族の顔が熟したトマトのように血膨れしている。
 下顎の骨が粉々に砕けているのだろう。
 自業自得としか言いようがないな。

「ジェイミー、お客様がお帰りだ。
 大森林までキッチリと送り届けてやってくれ」

 俺は言外に、領内から叩き出せ、グズグズするようなら戦争になってもかまわないからぶちのめせ、という意味を込めて命じた。

「了解した、任せろ。
 ガブリエル、これ以上その傲慢で恥知らずなエルフ顔を騎士殿に見せるな。
 さっさと誰にも相手にされない嫌われ者の住処に戻れ」

 ジェイミーたちドワーフ族は多少がさつだが、嘘は言わない。
 どうやらエルフ族は大森林に住む全ての種族から嫌われているようだ。

「……分かった、もうこれ以上エルフ族の恥をさらすわけにはいかないからな」

 そう言ってガブリエルは帰って行った。
 一緒に来ていたエルフ族が、ガブリエルに殺されたエルフと顎を砕かれたエルフを背負って帰って行った。
 不服そうな顔をしていたエルフもいたが、攻撃を仕掛けてはこなかった。

「騎士殿、臣従希望者を連れてきたぞ。
 戦力的には当てに成らない普通種のドワーフだが、農作業や建築の手助けくらいはできるから、好きなように使ってくれ。
 その代わりと言っては何だが、酒の割り当てを増やしてもらえないだろうか?」

 更に10日経って、ジェイミーが新たにやってきたドワーフ族を連れてきた。
 俺が最初にジェイミーに突き付けた条件、酒造りに使う魔力と時間の対価として、手当たり次第にドワーフ族をかき集めたようだ。

「渡す酒の種類と量は働きしだいだ。
 何度も言っているが、俺が使う魔力と時間以上の働きが無ければ、酒は与えない」

「分かっている、大丈夫だ。
 騎士殿が作物を植えてくれれば、畑の世話や収穫などと言った雑用は全てやる。
 魔力を必要としない酒造りの雑事も全部やる。
 それで魔力がずいぶん節約できるはずだ、違うか?」

 確かに、雑用をドワーフ族が引き受けてくれるのならだいぶ楽になる。
 前世に読んだラノベのように、村を発展させるのも面白いだろう。
 弱い領民だと命を背負う事になって重荷になるが、酒好きで強いドワーフ族なら、全く責任を感じずに一緒に暮らせるかもしれない。

「分かった、雑用を引き受けてくれのなら、俺はワインなどの果樹を育てよう。
 今は畑で作れる穀物や野菜からしか酒を造っていないが、1番身近な果実酒はリンゴで作ったシードルだし、高級酒と言えばブドウから作ったワインだからな」

「なに?!
 ブドウを育ててワインを造ってくれるのか?!」

「ああ、ドワーフ族は全ての雑事を引き受けてくれるのなら、その分の魔力を木の成長に使えるから、本来なら収穫までに3年4年かかるブドウの木を1年で育てられるかもしれないからな」

「なんでもやる、なんでもやるから、騎士殿が育てたブドウで造ったワインを飲ませてくれ、この通りだ、頼む、お願いだ!」

『ロディー騎士領』
領主:ロディー
家臣:エンシェントドワーフ・24人(ジェイミー、ナイル)
  :ハイドワーフ    ・38人
  :エルダードワーフ  ・58人
  :ドワーフ      ・97人
領民:人間        ・1人(アルフィン)

『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民  ・レベル887
     :自作農民・レベル512
     :開拓農民・レベル369
 付属スキル:耕種農業レベル626
        耕作  レベル887
        種蒔き レベル693
        品種改良レベル693
        農薬生産レベル693
        農薬散布レベル693
        選定  レベル693
        収穫  レベル693
        剣鉈術 レベル599
        戦斧術 レベル599
      :工芸農業レベル212
        木工  レベル212
        紡績  レベル212
        織物  レベル212
      :開拓  レベル369
        伐採  レベル369
        建築  レベル369
        石工  レベル 21
        魔力生産レベル237
        魔力増幅レベル237
      :自作  レベル512
        燻製  レベル 68
        酒造  レベル512
        発酵  レベル512
        陶芸  レベル225
        料理  レベル264
 一般スキル:戦闘術レベル9
        剣術 レベル9
        槍術 レベル9
        戦斧術レベル9
        弓術 レベル9
        石弓術レベル9
        拳術 レベル9
        脚術 レベル9
        柔術 レベル9
        戦術 レベル9
        馬術 レベル9
        調教術レベル9
      :魔術
      :生産術レベル9
        木工 レベル369
        絵画 レベル9
        習字 レベル9
        算術 レベル9
        料理 レベル264
        刺繍 レベル9
        裁縫 レベル9
        大工 レベル369
        石工 レベル 21

「基本能力」
HP:  51557
魔力:1942986
命力:1537444
筋力:  35565  
体力:  32749
知性:  23741 
精神:  20093 
速力:  17680
器用:  17680
運 :  17812
魅力:  17680
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...