王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全

文字の大きさ
上 下
15 / 37
第一章

第9話:神与スキルの謎

しおりを挟む
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年1月30日・ロディー視点
ロディー15歳

 俺がこの世界に転生してから聞いた話には、神与スキルの転職はなかった。
 もちろん上位スキルもなかったし、神与スキルの並列もなかった。
 あったのは付属スキルと一般スキルだけだ。
 俺の農民スキルに開拓スキルが並列される事は想定外の事だった。

「騎士様!
 聞いてはいけない事だとは分かっていますが、凄すぎます。
 1日で、いえ、半日でイチゴが育つなんて!」

 朝食の場で自問自答している俺の横でアルフィンがとても驚いている。
 やった俺自身がアルフィンの驚愕は当然の事だと思う。
 俺の知る範囲では、農民が作る作物の成長は前世と変わらない。
 亜人や魔族、魔獣はいるが、作物は前世と同じ物も多いから比較できる。

「それに騎士様、イチゴが大粒過ぎます!
 甘過ぎます!
 これがイチゴだなんて信じられません。
 それとも、この辺りと騎士様のふるさとではイチゴという言葉が違うのですか?」

「いや、このイチゴも俺のスキルで創り出したモノだから、深く聞かないでくれ。
 俺のふるさとのイチゴも、たぶんアルフィン嬢の知っているイチゴと同じだ」

 この世界のイチゴは、俺の知るイチゴに比べると酸味が強く小さいイチゴだ。
 俺が知っているエゾヘビイチゴくらいの大きさしかない。
 公爵家にいる間はそんなイチゴで我慢していたが、農民スキルが神与されて、魔力さえケチらなければ前世で食べた農作も違再現できるのだ、我慢できる訳がない。

「そうですが、聞かないと約束したのに聞いてしまって申し訳ありません」

「いや、気持ちは分かるからかまわないぞ。
 だが、もうこれ以上聞かないでくれ。
 それと、好きなだけ食べてもいいが、食べ過ぎると腹をこわすからな」

 本当かどうかは知らないが、苺の食べ過ぎて死んだ大名がいる。
 尾張徳川家3代目藩主の綱誠はイチゴの食べ過ぎで死んだというのだ。
 ついでに言えば、息子の4代目藩主である吉通は饅頭の食べ過ぎで死んだという。
 俺も前世の農作物が再現できるとは言っても衛生環境は再現できない。

「はい、とても美味しくて、つい食べ過ぎそうになりますが、ガマンします。
 季節に関係なく、食べたくなったらいつでも1日で作れるのですよね?」

「ああ、いつでも作れるから、安心してくれ。
 ただ、今からどれくらいの魔力が必要になるか色々試す。
 それで、食べて元に戻る魔力量と比較してみる。
 食べて作れる魔力量以上に魔力が必要な作り方はムダだからな」

「そうなのですね。
 わたくしはその間に騎士様に命じられた事をやらせていただきます」

「ああ、頼む。
 イチゴは痛みやすいから、早く全部食べるか保存食にしなければいけない。
 保存食にするには瓶か樽が必要なのだが、俺は持つていない。
 この里に残っている瓶や樽を消毒してもらわないと、保存のしようがない」

「はい、余ってる瓶と樽はご指示通り茹でてきれいにいたします」

 この世界にも、表面が傷んだ肉の表面を黒焦げになるまで焼いて、黒焦げになった部分をこそげ落として食べられるようにする事が行われている。
 同じような意味で、樽の内面を焼いてきれいにする方法が知られている。
 俺はそれを少し変化させて、アルフィンに熱湯消毒を教えただけだ。

「イチゴもブドウやリンゴと同じようにワインになる。
 イチゴの芳醇な香りと甘味が特徴なとても美味しいフルーツワインだ」

 リンゴ酒のシードルほど有名ではないが、他にも果物から作られた酒はある。
 ニュージーランドのキウイワインは前世でもそれなりに知られていた。
 イチゴから造ったエルドビアの産地は……オーストリアだったと思う。
 アルコール度数は15%くらいだったから、ジャムにした方がいいか?

「今思い出したのだが、イチゴワインに結構強い酒なのだ。
 強い酒を妙齢の女性に飲ますのは問題がある気がしてきた。
 ジャムにしてみたらどうだろうか?」

「騎士様の判断にお任せいたします。
 強いお酒なら、わたくしは飲まないようにいたします」

 どうすべきだろうか?
 アルフィンに見られないのなら、全部食べてしままえばいい。
 亜空間化した胃や肝臓に蓄えられる。
 だが、今後の事を考えれば保存期間の長いモノにした方がいい。

「アルフィンが飲まないと言ってくれるのなら、やはりワインにしよう。
 俺も酒などなくてもいいのだが、俺が死んだ後の事も考えなければいけない。
 これから生まれてくる子孫が同じスキルを神与されるかか分からないからな」

「仰せのままに」

「それと、さっき言っていた燻製小屋に案内してくれ」

「こちらでございます」

 アルフィンは身分を隠そうと頑張っている。
 家臣たちがいた頃に自分に話しかけられていた言葉を使っているのだろう。
 元々頭がいいのだろうが、皇帝家に生まれた人間とは思えないくらい上手だ。
 余計な事には関わり合いたくないから、このまま領民扱いしよう。

「ここでございます」

 俺はアルフィンが案内してくれた燻製小屋は、まだ十分に使えそうだった。
 手早く解体した獣肉をフックにかけて吊るし、昨日作っておいた薪で熱燻する。
 斃した獣の量が多いから、急いで焼くか燻製するかしないといけない。
 燻製小屋だけでなく、焚火の上で即席の燻製をした方がいいだろうか?

「俺が戻るまでに、できるだけ多くの肉を焚火で炙ってくれ。
 それが無理なら余っている瓶に入れて茹でてくれ。
 茹でて乾燥させてから燻製する方法なら、肉が腐らないかもしれない」

「分かりました、そうさせていただきます」

「では後の事を頼む、昼には戻ってくる」

 ★★★★★★

 俺は昨日からやっている城壁造りを行った。
 何をやればどのスキルが上がるのかを確かめながらやった。
 それで分かった事は、丸太にする前の枝払いを何時何を考えてやるかで、上がるスキルが違ってくるという事だ。

 木を伐採してから材木(丸太)にしようとして枝を払うと建築スキルが上がる。
 だが伐採する前に木に登って、木の成長を助けようと思って枝を払うと、選定スキルが上がるのだ。
 神与スキルを上げたいのなら、その辺に気を付けた方がいいようだ。

 ああ、それと、農民スキルと開拓農民スキルの間に自作農民スキルがあった。
 酒造が料理人とは別のスキルなのは知っていたが、燻製は料理スキルだった。
 だから料理人スキルに含まれると思っていたのだが、剣鉈術や戦斧術と同じように、付属スキルとして他の神与スキルに含まれるようだ。

 それにしても、自作農民スキルが農民スキルとは別にあるとは驚きだ。
 前世の知識から考えれば、自作農民スキルとは別に小作農民スキルがあるのか?
 確かめたい気持ちがないわけではないが、小作人になるのは嫌だな。
 この国のほとんどの農民は小作人になっている気がする。

 ガンガン森の木を斧で伐採し、剣鉈で枝を払った。
 各種建築道具を魔力で発現させて細工した。
 そのお陰で伐採レベルと建築レベルが上がった。
 結果として開拓農民がとんでもなくレベルアップしている。

 自作農民スキルもあげたいが、これは保存食が関係していると思う。
 確かに前世では親戚のブドウ農家が家庭用のワインを造っていた。
 農家ではなくなった我が家でも祖母が味噌や梅干を自作していた。
 味噌が自作できるなら、料理のレパートリーが格段に増える。

 味噌漬けする事で燻製や塩漬け以外にも長期保存の方法を手に入れられる。
 問題は麹菌や酵母菌だが、これも前世のラノベ知識を試せばいい。
 すでに想いを込めた魔力鍬を使うだけで前世の食物を再現できている。
 きっと酵母菌や麹菌も再現できる事だろう。

『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民  ・レベル239
     :自作農民・レベル  1
     :開拓農民・レベル207
 付属スキル:耕種農業レベル212
        耕作  レベル243
        種蒔き レベル238
        品種改良レベル238
        農薬生産レベル238
        農薬散布レベル238
        選定  レベル239
        収穫  レベル239
        剣鉈術 レベル365
        戦斧術 レベル388
      :工芸農業レベル212
        木工  レベル212
        紡績  レベル212
        織物  レベル212
      :開拓  レベル207
        伐採  レベル207
        建築  レベル207
      :自作   レベル  1
        燻製 レベル1
        酒造 レベル9
 一般スキル:戦闘術レベル9
        剣術 レベル9
        槍術 レベル9
        戦斧術レベル9
        弓術 レベル9
        石弓術レベル9
        拳術 レベル9
        脚術 レベル9
        柔術 レベル9
        戦術 レベル9
        馬術 レベル9
        調教術レベル9
      :魔術
      :生産術レベル9
        木工 レベル9
        絵画 レベル9
        習字 レベル9
        算術 レベル9
        料理 レベル9
        刺繍 レベル9
        裁縫 レベル9
        大工 レベル9
        石工 レベル9

「基本能力」
HP:   4929
魔力:1823874
命力:1198327
筋力:   4498  
体力:   4523 
知性:  10982  
精神:   4999  
速力:   4591
器用:   4560
運 :   4610
魅力:   4560
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...