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第一章
第3話:夢の時間
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それからセラン皇太子殿下と私は、色んなことを話しました。
最初は社交に影響のない、芸術について話しました。
好きな絵画や音楽、最近読んだ書籍について語りました。
そこから発展して、最近の書籍が論じる社会問題について話しました。
食糧を少しでも増産するための農業技術や牧畜技術については、ついつい白熱した論争になってしまい、我に返ってお詫びするほどでした。
「ほう、ではユリア嬢も割譲された領地で実験されているのか?」
「はい、わずかな領地でしかありませんが、試しております。
殿下はそんな広大な規模で、作付けと牧畜の実験をさせておられるのですか?!」
本当に驚いてしまいました。
私は公爵家と王国の未来を考えて、ルセド皇国で研究発表された農法と牧畜法を、アーサーとの結婚を前提に割譲された化粧領で試していたのです。
ですがその規模は、失敗した時の事を考えて、領民の生活を圧迫しないように、ごく小さな面積に限られています。
ですがセラン皇太子殿下は、領地の大半で先進的な方法を取り入れておられます。
「なあに、皇国で研究発表された技術だから、先に取り入れた分早く広まっただけで、ユリア嬢と差があるわけではないよ。
それよりも、こんな言い方は女性を蔑視しているように聞こえるかもしれないが、女性の身で家のため国のためにここまで努力する人はいないよ。
君のような娘を持ったエンドラ公爵も、婚約者を得た王太子も、果報者だね」
セラン皇太子殿下の言葉に、私はその場に崩れ落ちて泣きそうになりました。
ついさっき婚約者と妹に裏切られている事を知った私には、号泣したくなるほどの褒め言葉でした。
でも、復讐を果たすためには、ここで泣くわけにはいきません。
ここではしなければいけない事は、泣くことではなく、セラン皇太子殿下と親しく話ができる仲だと周りに想わせる事です。
「お褒め頂き、ありがとうございます、セラン皇太子殿下。
殿下にここまで褒めていただけることこそが、果報でございます」
余りの殿下の誉め言葉に、夢中になっていた愉しい会話から現実に引き戻されましたが、随分と長く話し込んでいたようで、夜も遅くなっています。
そう気が付いた私の目の端に、こそこそと会場に戻って来た婚約者と妹が映りましたが、二人の衣服が激しく乱れていて、とてもみっともないです。
今まで何をしていたかと思うと、激しい怒りが胸に湧き上がります。
ここは二人とも恥を感じて目を伏せるところなのに、セラン皇太子殿下と私を見て、獲物を見つけたような獰猛な眼つきに変わりました。
「おい、お前ら、王太子である私を差し置いて、なんという真似をしているのだ!」
最初は社交に影響のない、芸術について話しました。
好きな絵画や音楽、最近読んだ書籍について語りました。
そこから発展して、最近の書籍が論じる社会問題について話しました。
食糧を少しでも増産するための農業技術や牧畜技術については、ついつい白熱した論争になってしまい、我に返ってお詫びするほどでした。
「ほう、ではユリア嬢も割譲された領地で実験されているのか?」
「はい、わずかな領地でしかありませんが、試しております。
殿下はそんな広大な規模で、作付けと牧畜の実験をさせておられるのですか?!」
本当に驚いてしまいました。
私は公爵家と王国の未来を考えて、ルセド皇国で研究発表された農法と牧畜法を、アーサーとの結婚を前提に割譲された化粧領で試していたのです。
ですがその規模は、失敗した時の事を考えて、領民の生活を圧迫しないように、ごく小さな面積に限られています。
ですがセラン皇太子殿下は、領地の大半で先進的な方法を取り入れておられます。
「なあに、皇国で研究発表された技術だから、先に取り入れた分早く広まっただけで、ユリア嬢と差があるわけではないよ。
それよりも、こんな言い方は女性を蔑視しているように聞こえるかもしれないが、女性の身で家のため国のためにここまで努力する人はいないよ。
君のような娘を持ったエンドラ公爵も、婚約者を得た王太子も、果報者だね」
セラン皇太子殿下の言葉に、私はその場に崩れ落ちて泣きそうになりました。
ついさっき婚約者と妹に裏切られている事を知った私には、号泣したくなるほどの褒め言葉でした。
でも、復讐を果たすためには、ここで泣くわけにはいきません。
ここではしなければいけない事は、泣くことではなく、セラン皇太子殿下と親しく話ができる仲だと周りに想わせる事です。
「お褒め頂き、ありがとうございます、セラン皇太子殿下。
殿下にここまで褒めていただけることこそが、果報でございます」
余りの殿下の誉め言葉に、夢中になっていた愉しい会話から現実に引き戻されましたが、随分と長く話し込んでいたようで、夜も遅くなっています。
そう気が付いた私の目の端に、こそこそと会場に戻って来た婚約者と妹が映りましたが、二人の衣服が激しく乱れていて、とてもみっともないです。
今まで何をしていたかと思うと、激しい怒りが胸に湧き上がります。
ここは二人とも恥を感じて目を伏せるところなのに、セラン皇太子殿下と私を見て、獲物を見つけたような獰猛な眼つきに変わりました。
「おい、お前ら、王太子である私を差し置いて、なんという真似をしているのだ!」
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