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1話

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「大変です、聖女エリアナ様。
 教会の前に子供が捨てられているのですが、顔が無残に潰されているのです!」

 私の専属侍女イザベラが駆け込んできました。
 もしかしたら命の危険があるほどの大ケガなのかもしれません。
 それにしても、顔を潰して捨てるなんて、なんて残虐な事をするのでしょう!

「直ぐに行きます。
 その子供は治療室にいるのですか?」

「はい、門番が移動させました」

「分かりました、ついて来てください」

「はい、でもよろしいのですか?」

 イザベラは教会の権力者たちの事を気にしているのでしょう。
 確かにあいつらなら、寄付ももらえない捨て子の治療に、貴重な奇跡の技を使うなと言う事でしょう。

「大司祭の言う事など無視しなさい。
 これは聖女としての厳命です。
 聞けないのなら、私は教会を出て家に帰ります。
 邪魔する者は神の奇跡で打ち払いますから、その覚悟でかかてらっしゃい!」

 イザベラがクスリと笑います。
 私が大司祭の手のモノに聞かせているのが分かったのでしょう。

「はい、大司祭様にはそうお伝えいたします」

 教会にいる大半の聖職者は腐っています。
 聖職者ではなく性職者ではないのかと怒鳴りつけたくなるくらい堕落しています。
 もう何百年も教会から聖者や聖女が現れないのもそのせいでしょう。
 この世のあらゆる欲にまみれた腐れ外道どもです。

「ここでございます」

 イザベラがドアを開けて先導してくれます。

「何事ですか、聖女。
 このような捨て子の事など放っておけばいいのですよ。
 今日はダブリン公爵家のジェイコブ様が、聖女の治療を受けたいと、わざわざ教会までやってこられるのです。
 その準備の方が大切ですよ」

 グッワッシャ!

 無意識に私の右ストレートがさく裂しました。
 いけませんね。
 幼い頃から身体に叩き込んだ技と、祖父母から教え導かれた騎士道精神が発現してしまいました。
 一切手加減していませんから、死んだかもしれませんね。

「イザベラ、手が穢れました。
 汚物に触れて穢れた手では、治療などできません。
 消毒してください」

「はい」

 イザベラが一切動揺することなく、消毒のための濃縮酒を取りに行ってくれていますが、私が殴った男の同僚が固まっています。
 治療室で失禁などしていないでしょうね?
 睨むと失禁しそうなので我慢しないといけません。
 ですがこのような汚物どもと同室するのは我慢できません。

「治療の邪魔をする者には、聖女としてこのように天罰をくだします。
 あなた方は天罰をうけたいのですか?
 それとも自分の足で治療室からでていきますか?」

「ヒィィィィ」

 男の司教や神官ばかりではなく、修道女まで出て行ってしまいました。
 情けないことです。
 ですがこのような事に時間をかけてる暇はありません。
 急いで治療しなければいけません!
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