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征夷大将軍

第216話:一八四四年、大シベリア鉄道

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 この世界の普墺戦争だが、プロイセンの軍事力が圧倒している。
 しかもプロイセンはオスマン帝国の侵攻に合わせて開戦した。
 イタリア王国は味方していないが、普通に考えればプロイセンの圧勝だ。
 俺はそう考えて中立を保つ心算でいた。
 プロイセンとは軍事技術導入のために友好的だった事も理由の一つだ。
 だが軍師役達と現地司令官の考えは違っていた。

 彼らはオスマン帝国とペルシャ、いやペルシア帝国があるせいで、日本からの輸送がアフリカと直通していない事を問題視していた。
 ペルシア帝国はともかくオスマン帝国は友好国だ。
 攻め滅ぼす事はもちろん無理な要求もしたくない。
 だが日本の鉄道網を整備するだけではなく、シベリア鉄道も整備している。
 できることなら途中に海峡連絡船を使うにしてもエジプトと直通鉄道にしたい。
 できないのなら代替の交通路を確保したい。

 そこで考えられたのが奪ったロシア領と領地を接しているオーストリア帝国領を奪い、オーストリア帝国に味方したドイツ連邦の領地も奪い、内戦で疲弊しているフランス領も奪い、フランスの地中海沿岸部にまで鉄道を敷く事だった。
 まさに狂気の考えだ。
 狂気の考えだが、絶対に不可能という訳ではないのかな。

 まあ、色々な代替案を考えながら、日本領を陸路と海路で繋がなければいけないのは、為政者の責任だとしみじみと思った。
 そこに住む国民を護るのは為政者の義務だ。
 何かあれば即座に援軍を送れるようにしておかなければいけない。
 そう考えればオスマン帝国がどう考えも邪魔なのだが、そんな考えは危険だ。

 まずは普通に友好国として鉄道の相互乗り入れを提案する。
 軍事同盟も締結して非常時の軍隊通行権を認めてもらいたいが、友好国ならこちらだけが一方的に軍隊の国内通行権を要求する事はできない。
 オスマン帝国の非常時にもオスマン帝国軍が徳川家の、いや、大日本連邦領内の通行権を与えなければいけなくなる。
 これはどうにも気持ちが悪くて嫌だ。

 それに先のフランス、ドイツを通過する鉄道網だとポーランド・リトアニア領も通過することになるから、友好国を頼るという意味ではオスマン帝国と同じだ。
 一番大切なのは直轄領内での輸送路、鉄道網の確保だ。
 それならズデーテン山脈かカルバート山脈を越えなければいけないが、オーストリア帝国領のスロバキア、ハンガリー、スロベニアを攻め取り、アドリア海まで出られるようにして、後は海路でアフリカにつなぐという方法がある。

 いっそトルクメン方面から南下してアラビア海まで領土を広げて、そこから海路を使ってアフリカとの輸送路を確保するか。

 こう考えると、どうにもペルシア帝国が邪魔だな。
 ペルシア帝国を併合して、シリア地方をオスマン帝国から割譲してもらえれば、完全に陸路が繋がる。
 シリア地方はオスマン帝国にとっては地方領主の力が強すぎる属州でしかない。
 代替地との交換なら受けてくれるかもしれない。
 オスマン帝国が代替地として価値を認めてくれるとしたら、カフカス方面かオーストリア帝国領、もしくはドイツ連邦しかないな。
 ここはやるしかないか。
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