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征夷大将軍

第197話:一八四一年・アヘン戦争6

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「こりゃ無理だ、俺はこんな食事には耐えられねえ。
 俺は陸軍を志願して大陸を横断するぜ。 
 イギリス本土に攻め込んで建国の英雄になるんだ」

「へん、何言ってやがる、毎日麦粥じゃない食事だぞ。
 どんだけ金持ちの家に生まれたんだ。
 毎日魚付きで堅パンか御握りが喰えるだぞ、贅沢言いやがって」

「俺はもう殺し合いは真っ平だ。
 新大陸に農地がもらえるのならそれでいい。
 俺は百姓になってのんびり暮らすんだ」

 叛乱に加わったイギリス海軍水兵だが全員が同じ考えではない。
 単純に待遇に腹を立てて参加した者もいれば、質の悪い艦長や士官に反発して参加した者もいる。
 もちろんアングロサクソンを打倒してスコットランド人やアイルランド人の独立を目指した者もいるが、中には心底の悪人も加わっていた。

 そんな者達をふるいにかけて日本に悪影響が出ないようにしなければいけない。
 叛乱に加わって徳川海軍に味方した者を処罰する事などできない。
 だが持って生まれて性根の腐った奴を海軍に残すわけにはいかない。
 日本本土に上陸させるわけにもいかない。
 だからしばらくは性質性格を見分けるために艦隊勤務させていた。
 その上で勤務状況を士官下士官が見極めて配属先を決めた。

 性質性格が悪くなく、本人が希望した場合は艦隊勤務をさせた。
 熟練水兵はとても貴重な存在だ。
 先任准士官である航海長、掌帆長、掌砲長、主計長、軍医は優遇した。
 特にインド洋や大西洋を知る航海長と航海士は宝石に匹敵するほど貴重だった。
 下級の准士官である航海士を航海長格に抜擢してでも海軍に止めようとした。

 だが強く陸上勤務を望む者を無理に艦隊勤務させることはできない。
 なんと言っても彼らは計画通り叛乱に加わってくれた協力者だ。
 その功績には応えなければいけない。
 イギリス本土への帰還を望む者はシベリア経由でフランスまで行けるようにした。
 イギリスの対応次第では一年以内にイギリス本土進攻があり得るからだ。
 北アイルランドとスコットランド独立闘争に参加したい勇士は、何としてでもフランスに送り届けなければいけないのだ。

 だが中にはもう戦う事が嫌な人間もいた。
 性質性格がよくて農地が欲しいという人間には、故郷に近い気性の地を与えた。
 言葉の問題もあるし日本人の差別意識もある。
 長年鎖国していた日本本土では英国人の受け入れは難しかった。
 だから性質性格がいい人間はアムールやチタで受け入れた。
 彼らが長旅を厭わないのなら、北アイルランドやスコットランドで農地を与えるべく、一旦エジプトやポーランド・リトアニアに送った。

 だが性質性格が悪いと判断したイギリス人は違った。
 彼らは消耗品として最前線で戦わせることになった。
 表向きはモスクワに農地を与えるという事にして、ロシア軍との最前線に送った。
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