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征夷大将軍
第187話:一八三九年、アヘン戦争開戦前3
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十月になってイギリス海軍は史実通りの行動をとった。
史実では恥ずべきアヘン貿易が理由での開戦が問題となり、清国への出兵は賛成二百七十一票、反対二百六十二票の僅差で許可されている。
しかも今の歴史は、アメリカ合衆国の内乱に伴いイギリス領アメリカが戦場となったばかりか、イギリス本土でまで叛乱が起きている。
その状況で出兵が否定される可能性が高かった。
だからこそマカオに攻め込みイギリス人を虐殺したのだ。
俺は清国にイギリス人を虐殺させる事で出兵反対票を減らそうと考えたのだ。
その作戦は見事に的中した。
史実と同じように外相パーマストン子爵主導で、イギリス議会は対清開戦に傾いており、メルバーン子爵内閣の閣議において遠征軍の派遣が決定した。
議会による清国出兵に関する予算案の承認は、史実と違って賛成五百三十三票対反対〇票の完勝だった。
賛成議決を受けたイギリス海軍は、イギリス東洋艦隊を編成して派遣した。
総司令官兼特命全権大使には、史実通りチャールズ・エリオットの従兄、ジョージ・エリオットが任命された。
だが直ぐにイギリス海軍が清国に到着する訳ではない。
だから現地に派遣されているボレージ号とヒヤシンス号が動くことになる。
ボレージ号とヒヤシンス号は、アヘンを扱わないと誓約書を提出して交易しようとしていた、自国商船の広州入港を妨害した。
十一月三日となり、史実通りボレージ号とヒヤシンス号は清国兵船への攻撃を開始した、川鼻海戦の始まりだった。
清国は広東水師提督関天培が兵船隊を督戦した。
清国は二九隻ものジャンク兵船を用意していた。
その中にはポルトガル製の艦砲を搭載した兵船もあった。
激烈な砲撃戦が繰り返された。
二時間にも及ぶ死力を尽くした戦いだった。
だがイギリス軍艦と清国兵船では戦闘力に天地の差があった。
清国兵船のうち四隻が直ぐに撃沈されてしまった。
残る二五隻も自力航行が不可能になるほどの大きな損傷を受けてしまった。
それに対してボレージ号とヒヤシンス号は、ボレージ号がそれなりの損傷を受けたが、後方にいたヒヤシンス号はほとんど損傷を受けなかった。
史実ならボレージ号とヒヤシンス号は楽々根拠地に帰還する。
だがこの世界には俺がいて徳川海軍艦艇を派遣している。
清国とイギリスの戦争を継続させて両国を損耗させ予定ではあるが、せっかくイギリス海軍艦艇を拿捕できる機会があるのに見逃す気はない。
海戦が終わったらボレージ号とヒヤシンス号が沖合に出てくるのは分かっていた。
だから三十六門フリゲート艦四艦と五十二門フリゲート艦二艦に待ち伏せさせた。
イギリス海軍将兵は勇敢だった。
勝ち目のない戦いでも見敵必戦の精神で向かってきた。
何とか我が海軍が勝利したが、将兵にはいい教訓になったようだ。
一方大勝利を得た林則徐は道光帝にその勝利を奏上した。
しかも徳川と協力すれば「イギリス海軍恐れるに及ばず」とまで言い切った。
それにより道光帝は「清英貿易の停止」を勅命してしまった。
史実では恥ずべきアヘン貿易が理由での開戦が問題となり、清国への出兵は賛成二百七十一票、反対二百六十二票の僅差で許可されている。
しかも今の歴史は、アメリカ合衆国の内乱に伴いイギリス領アメリカが戦場となったばかりか、イギリス本土でまで叛乱が起きている。
その状況で出兵が否定される可能性が高かった。
だからこそマカオに攻め込みイギリス人を虐殺したのだ。
俺は清国にイギリス人を虐殺させる事で出兵反対票を減らそうと考えたのだ。
その作戦は見事に的中した。
史実と同じように外相パーマストン子爵主導で、イギリス議会は対清開戦に傾いており、メルバーン子爵内閣の閣議において遠征軍の派遣が決定した。
議会による清国出兵に関する予算案の承認は、史実と違って賛成五百三十三票対反対〇票の完勝だった。
賛成議決を受けたイギリス海軍は、イギリス東洋艦隊を編成して派遣した。
総司令官兼特命全権大使には、史実通りチャールズ・エリオットの従兄、ジョージ・エリオットが任命された。
だが直ぐにイギリス海軍が清国に到着する訳ではない。
だから現地に派遣されているボレージ号とヒヤシンス号が動くことになる。
ボレージ号とヒヤシンス号は、アヘンを扱わないと誓約書を提出して交易しようとしていた、自国商船の広州入港を妨害した。
十一月三日となり、史実通りボレージ号とヒヤシンス号は清国兵船への攻撃を開始した、川鼻海戦の始まりだった。
清国は広東水師提督関天培が兵船隊を督戦した。
清国は二九隻ものジャンク兵船を用意していた。
その中にはポルトガル製の艦砲を搭載した兵船もあった。
激烈な砲撃戦が繰り返された。
二時間にも及ぶ死力を尽くした戦いだった。
だがイギリス軍艦と清国兵船では戦闘力に天地の差があった。
清国兵船のうち四隻が直ぐに撃沈されてしまった。
残る二五隻も自力航行が不可能になるほどの大きな損傷を受けてしまった。
それに対してボレージ号とヒヤシンス号は、ボレージ号がそれなりの損傷を受けたが、後方にいたヒヤシンス号はほとんど損傷を受けなかった。
史実ならボレージ号とヒヤシンス号は楽々根拠地に帰還する。
だがこの世界には俺がいて徳川海軍艦艇を派遣している。
清国とイギリスの戦争を継続させて両国を損耗させ予定ではあるが、せっかくイギリス海軍艦艇を拿捕できる機会があるのに見逃す気はない。
海戦が終わったらボレージ号とヒヤシンス号が沖合に出てくるのは分かっていた。
だから三十六門フリゲート艦四艦と五十二門フリゲート艦二艦に待ち伏せさせた。
イギリス海軍将兵は勇敢だった。
勝ち目のない戦いでも見敵必戦の精神で向かってきた。
何とか我が海軍が勝利したが、将兵にはいい教訓になったようだ。
一方大勝利を得た林則徐は道光帝にその勝利を奏上した。
しかも徳川と協力すれば「イギリス海軍恐れるに及ばず」とまで言い切った。
それにより道光帝は「清英貿易の停止」を勅命してしまった。
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