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征東大将軍

第132話:一八三五年、遷都問題。

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 俺が征東大将軍に任命され、征夷大将軍の徳川家慶と腹を割って話し合った。
 徳川家慶は俺に征夷大将軍位を譲る覚悟をしていた。
 ただ子弟の行く末が心配なようだったが、紀州徳川家の邪魔者を排除した事と、伊予西条藩の藩主の座を徳川家慶の子弟に渡した事で、自分達が排除粛清されないと安堵したようだ。
 俺が徳川治宝と松平頼学以外の徳川宗直子孫を追い打ちしなかった事も、安心材料になったようだ。

「御三家を四天王家に改めようと思っています」

 俺は徳川家慶の後継者に副征夷大将軍を世襲する家を興す案を示したのだが。

「それならいっそ越前家も加えた五家五卿にするのはどうだろう。
 越前家にも配慮が必要なのではないか。
 三卿を五卿にすれば、世継ぎの心配は不要になるだろうし」

 確かに後継者でもめるような事は避けたい。
 一旦臣籍に下った者を後継者に選びにくいのも確かだ。
 個人的には正室腹よりも長幼の順で後継者は選ぶべきだと思っている。
 長子が暗愚な後継者だったとしても、重臣が優秀なら何の問題もない。
 立憲君主制にするならなおさらだ。
 そういう意味では、松平秀康の越前家は厚く扱うべきだろう。

「上様、この国は地震や噴火の多い国です。
 敗勢に傾いていた武田家が、浅間山の噴火で一族譜代に見放されてしまったように、南蛮列強との戦いの最中に富士山が噴火すれば諸侯幕臣の心も離れます。
 私の受けた予言の範囲では、六十一年後に三陸で、八十八年後には江戸で大地震は発生して、とてつもない被害を与えます。
 その後も三陸、尾張三河、京大阪、越後、仙台と大地震が繰り返されます。
 江戸大阪尾張を幕府の拠点にするわけにはいかないのです」

「それは、将軍の拠点を松前に移すと言う事か」

「いえ、松前では三陸の大地震の際に大きな被害を受けてしまいます。
 将軍の御座所を移すのなら、地震や噴火の少ない場所にしなければいけません。
 また、異国の船が攻め込めない、内陸である必要もあります。
 同時に、幕府海軍の拠点とする内海に近い場所が大切です」

「内海に近く内陸にある場所だと、そこはいったいどこなのだ」

 俺は用意していた地図を取り出して、岡山を指示した。
 将来の首都は自身や噴火の少ない場所であると同時に、ある程度の平野も必要だ。
 岡山平野を中心に、東西に播磨平野と福山平野が続く岡山がいいと思う。
 将来の大艦隊の根拠地にするにしても、四国山地と中国山地にレーダー網を構築すれば、敵の航空奇襲を防げると思う。
 
 それ以前の時代に発生する可能性のある敵艦隊による攻撃も、瀬戸内海にたくさんある諸島に砲台を築けば、撃退することが可能だろう。
 江戸は副将軍家に預けて、新たな将軍家は岡山を拠点にすべきだと思うのだが。
 京大阪を幕府の直轄地にするために、紀州徳川家を安芸に転封させて、浅野家は関東のどこかに移せばいいともうのだが、どうだろうか。
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