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第5章

第111話:スライム強奪・カチュア視点

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 リドワーンがとても優しい笑顔を浮かべていますが、目がとても真剣です。
 産み月に近づいている私に心配をかけまいと表情を取り繕っています。
 ですが私にはリドワーンの本心が分かるのです。

 幼い頃から相思相愛での仲でしたが、昔は君臣の垣根がありました。
 ですが、褥を供にし、子供を宿すようになって、徐々に主君と家臣と言う垣根がなくなってきました。

 ずっとリドワーンに王太女として立てられるのが嫌でした。
 妻として仕えたいと願っていました。

 リドワーンが戴冠してその願いがかなえられました。
 そのまま自分の気持ちは変わらないと思っていました。

 でもお腹が大きくなるにつれて、いえ、リドワーンが王としての責任に苦しむのを見続けているうちに、気持ちが変わりました。

 リドワーンと対等に立ちたい。
 王としての重圧に苦しむリドワーンを助けたい。

 妻として尽くすだけでは、リドワーンの苦しみを和らげることはできても、減らす事はできないのです。
 同じ地位の女王として対等の立場に立ってこそ、責任の一端を分け持てるのです。

「リドワーン、今度の教会の策はなかなかの妙手でしたね。
 でも対応策や手段があるのでしょ。
 私に遠慮せずに断固とした処置をとってください。
 サクラ、最善の策を提言してちょうだい」

「はい、カチュア王太女殿下。
 教団は24人のスライム従魔士を使ってこちらのスライム従魔士を襲いました。
 事前にこちらのスライム従魔士の能力を調べ、確実に天職レベルが上回る者を差し向けていたようで、24人全員がスライムを奪われました。
 そのスライムを合体統合すると、私の能力を全て取り入れることができます。
 24人が教都に逃げ込む前に皆殺しにしなければいけません」

 教団も考えたモノですね。
 正面から戦えば、こちらのスライムも死ぬまで戦ってくれます。
 リドワーンの従魔スライムが相手なら、絶対に支配権を奪う事はできません。

 ですが一旦他の従魔士に譲渡されたスライムなら、天職レベルが上の従魔士スライムに従魔支配されてしまいます。

 サクラの能力を受けついだ最強のスライムを従魔にして、自分が支配下に置いている他のスライムと合体統合すれば、全スライムがサクラと同じ能力を持ちます。

 サクラと同じ能力を持つスライムを、教団の影響下にある全スライム従魔士に分け与えれば、教団の力は飛躍的に強くなります。

 サクラに匹敵するキングスライムまで育てるのは不可能でしょう。
 レベルが上がれば上がるほど従魔に止めておくことができなくなりますから。

 並の従魔師では、ヒュージクラスまでしか従えられません。
 従魔司がいたとしても、リドワーンほどの支配力があるとは思えません。

 思えませんが、何も手を打たないのは愚者のする事です。
 何より慎重で心優しいリドワーンを不安にさせてしまう。

「直ぐに全スライム従魔士をロード以上がいる拠点に集めるべきです。
 同時にロード以上の討伐隊を送るべきです。
 それでいいですね、リドワーン」
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