55 / 116
第3章
第55話:幸福
しおりを挟む
その当時の国王が、隣国の侵攻に備えて信頼する弟に分与した辺境の地は、派閥の貴族達の領地を含めなくても、小国に匹敵するほどの広さがある。
未開の大森林の全てを開拓できて、大魔境の産物も手に入るのなら、大国と評してもいいくらいの領地がある。
だがその分王都から遠く離れており、代を重ねる毎に王家とは疎遠になっていた。
そんな状況で王家を自分の息子に乗っ取らせようと考えたのが父だった。
まあ、そんな事は最早どうでもいいのだが、とにかく王都から遠いのだ。
大魔境の産物を隣国に備えるための収入にすべく、細く長く伸びた領地部分はあるが、領都と呼べる都市は王都から遠く、婚前旅行の日程を長くしていた。
新しい街道を作っているというのも理由の1つではあるが、俺がカチュア王太女殿下との時間を愉しみたいというのが1番の理由だった。
「リドワーン様、サクラが丁寧に剥いてくれた胡桃がありますが、食べますか」
カチュア王太女殿下が優しく声をかけてくれる。
互いの側近が見守っているが、全く気にされない。
互いに物心ついた時から1人になった事がないのだから、それも当然だ。
まあ、俺は前世の記憶があるから、傅役や側近を撒いて1人の時間を確保していたが、カチュア王太女殿下はトイレでさえ1人になった事がないのではないかな。
暗殺や事故が怖い王族は、絶対に1人なったりはしない。
特に男子が生まれなかったスニルラ王家の長女だ。
絶対に1人にはさせなかっただろうことは容易に想像できる。
「はい、胡桃は大好物ですから、食べます」
俺も今から慣れないといけないから、こうして衆人環視の中で膝枕をしてもらっているのだが、思いっきり恥ずかしい。
カチュア王太女殿下も侍女も平気な顔をしているが、俺には無理だ。
家臣達の前でカチュア王太女殿下に膝枕してもらうなんて、恥ずかし過ぎて走って逃げたくなるが、今からそんな事では初夜の時に困ってしまう。
貴族の初夜は、両家の派遣した見届け人の前で愛を交わす。
花嫁が処女であることを確認しなければいけないし、生まれてくる子供が確かに2人の子供である事を確認するために、愛を交わす時には必ず両家の見届け人がいる。
両家の見届け人がいないところで愛を交わしてしまい、妊娠出産と計算が合わない時には大問題になってしまうのだ。
まあ、実際には前後に愛の記録があれば、早産や遅産と考えるのだけど。
だから愛情のなくなった王侯貴族の夫人が、失敗して愛人との間に子供ができてしまったと時は、病気療養と偽って化粧領に籠ってしまうことになる。
「はい、あああんしてください、リドワーン様」
カチュア王太女殿下に膝枕してもらっている状態で、胡桃を食べさせてもらうのは、はっきり言って恥ずかし過ぎるだろう。
嬉しさもあるが、それ以上に恥ずかし過ぎるのだよ。
特に目の端に笑いを必死でこらえる傅役のアーノルドがいるとなれば、跳び起きて逃げ出したくなるというものだ。
だがそんな事をすれば、カチュア王太女殿下は烈火のごとく怒るだろう。
いや、怒るのならまだいいが、傷ついた顔をされてしまったら……
ここは我慢だ、我慢して食べるのだ。
「あああん、食べさせてください、カチュア殿下」
未開の大森林の全てを開拓できて、大魔境の産物も手に入るのなら、大国と評してもいいくらいの領地がある。
だがその分王都から遠く離れており、代を重ねる毎に王家とは疎遠になっていた。
そんな状況で王家を自分の息子に乗っ取らせようと考えたのが父だった。
まあ、そんな事は最早どうでもいいのだが、とにかく王都から遠いのだ。
大魔境の産物を隣国に備えるための収入にすべく、細く長く伸びた領地部分はあるが、領都と呼べる都市は王都から遠く、婚前旅行の日程を長くしていた。
新しい街道を作っているというのも理由の1つではあるが、俺がカチュア王太女殿下との時間を愉しみたいというのが1番の理由だった。
「リドワーン様、サクラが丁寧に剥いてくれた胡桃がありますが、食べますか」
カチュア王太女殿下が優しく声をかけてくれる。
互いの側近が見守っているが、全く気にされない。
互いに物心ついた時から1人になった事がないのだから、それも当然だ。
まあ、俺は前世の記憶があるから、傅役や側近を撒いて1人の時間を確保していたが、カチュア王太女殿下はトイレでさえ1人になった事がないのではないかな。
暗殺や事故が怖い王族は、絶対に1人なったりはしない。
特に男子が生まれなかったスニルラ王家の長女だ。
絶対に1人にはさせなかっただろうことは容易に想像できる。
「はい、胡桃は大好物ですから、食べます」
俺も今から慣れないといけないから、こうして衆人環視の中で膝枕をしてもらっているのだが、思いっきり恥ずかしい。
カチュア王太女殿下も侍女も平気な顔をしているが、俺には無理だ。
家臣達の前でカチュア王太女殿下に膝枕してもらうなんて、恥ずかし過ぎて走って逃げたくなるが、今からそんな事では初夜の時に困ってしまう。
貴族の初夜は、両家の派遣した見届け人の前で愛を交わす。
花嫁が処女であることを確認しなければいけないし、生まれてくる子供が確かに2人の子供である事を確認するために、愛を交わす時には必ず両家の見届け人がいる。
両家の見届け人がいないところで愛を交わしてしまい、妊娠出産と計算が合わない時には大問題になってしまうのだ。
まあ、実際には前後に愛の記録があれば、早産や遅産と考えるのだけど。
だから愛情のなくなった王侯貴族の夫人が、失敗して愛人との間に子供ができてしまったと時は、病気療養と偽って化粧領に籠ってしまうことになる。
「はい、あああんしてください、リドワーン様」
カチュア王太女殿下に膝枕してもらっている状態で、胡桃を食べさせてもらうのは、はっきり言って恥ずかし過ぎるだろう。
嬉しさもあるが、それ以上に恥ずかし過ぎるのだよ。
特に目の端に笑いを必死でこらえる傅役のアーノルドがいるとなれば、跳び起きて逃げ出したくなるというものだ。
だがそんな事をすれば、カチュア王太女殿下は烈火のごとく怒るだろう。
いや、怒るのならまだいいが、傷ついた顔をされてしまったら……
ここは我慢だ、我慢して食べるのだ。
「あああん、食べさせてください、カチュア殿下」
0
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
奴隷勇者の転生物語
KeyBow
ファンタジー
主人公は異世界召喚直後に奴隷にされた後に命じられて魔王を討伐した。
その時に奴隷から逃れる為に転生術を発動するも、不完全で記憶を無くしての転生になった。
本来ありえない2つのギフトを得られており、同郷の者と冒険者をするも、リーダーがその可能性に気が付き、嫉妬により腐らせた挙げ句に暗殺に失敗する。
そして追放された。
絶望の最中一人の女性と出会い、その後多くの仲間を得る。しかし、初めて彼女ができるも、他の少女を救った事から慕われ、思い悩む事になる。
だが、転生前と違い、追放後はハッピーに生きようとするが、そうは問屋が・・・
次から次に襲ってくる女難?と悪意から乗り切れるか?
猟師異世界冒険記
PM11:00
ファンタジー
日本で猟師をしていた昌彦(75歳)は老衰によって亡くなってしまう。
昌彦は、長年害獣を駆除し続けた功績とその腕前を神に買われ、強大で凶暴な"モンスター"が暴れている世界、エイリエナへと送られた。
神によって若返らせてもらったその身体と、神から狩猟用に授かった猟銃を持って、昌彦(40歳)いざ異世界を冒険!
しかし、転生先の山には、人っこ1人見当たらなかった。山の頂上から周りを見渡しても、見えるのは、どこまでも連なる雄大な山々だけだった。
「…どこに行けば人里なのかも分からないな…そもそもこの世界に人って居るのか? まあ、どうしようもないか…あきらめて、この山で狩りをして暮らしていくしかないな」
昌彦の異世界サバイバル生活が、今始まった。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる