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第2章

第37話:痴話喧嘩

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「何故ですか、何故一緒に来てくださらないのですか。
 この子がいれば、もう何も恐れる必要などないではありませんか。
 この子を使って、ジャームズとジャスワンを殺すなり幽閉するなりして、リドワーン様がシャルマン公爵家の当主になられれば、全て丸く収まるではありませんか。
 リドワーン様は私と一緒にいたくないのですか。
 もう私の事など好きではなくなってしまわれたのですか」

 カチュア王太女殿下が俺の事を激しく責める。
 確かにカチュア王太女殿下の言う通りで、俺がシャルマン公爵家の当主になったら、王家も安泰だし国の統治も揺るぎないモノになるだろう。

 だが、俺にはどうしても確かめたい事があるのだ。
 それに、ここで少し待つことで、今王都に行く以上に王家と国を盤石の体制にすることができるのだ。

「そんな事はないよ、今でもカチュア王太女殿下の事が大好きだよ。
 ほんの少しの間も、カチュア王太女殿下の側から離れたくないと思っているよ。
 死が二人を分かつまで、側を離れないと誓うよ。
 でもね、私達二人の将来のためには、このゴブリン大集落を管理しなきゃいけないし、安心できる強いロードスライムを側に置かなきゃいけないんだよ。
 もう少しこの子を成長させて、二カ所に分かれても大丈夫にしたいんだよ」

「私を嫌いになっていないのなら、何故以前のようにカチュアと呼び捨てにしてくださらないのですか。
 王太女殿下をつけて呼ぶなんて、他人行儀ではありませんか」

「いや、流石にお互いの家臣がいる前で、王太女殿下を呼び捨てにはできないよ」

「嫌です、嫌でございます、呼び捨てにしてくださいませ」

 カチュア王太女殿下がわざと甘えているのは分かっている。
 俺とカチュア王太女殿下が分かち難い存在だと、周りに印象付けたいのだろう。
 だがあまりに露骨にやると、カチュア王太女殿下の評判が悪くなってしまう。

 貞操を疑われるような事があれば、大陸の王族間での評価が落ちてしまう。
 できればそんな事は避けたいのだが、俺も親密にしたい欲望くらいあるから、自分を律するのが大変だ。

「カチュア王太女殿下、王侯貴族なら結婚まで守らなければいけない約束事がございますから、これまで通り君臣の垣根は守りましょう。
 その代わりと言ってはなんですが、クラリス王太女殿下の守護役として、ロードスライムを1匹派遣したします。
 その子を私だと思って可愛がってやってください、お願い申し上げます」

「嫌です、絶対に嫌です、そんな事をしてしまったら、ロードスライムの成長が遅くなってしまって、リドワーン様が王都に来るのが遅れてしまうではありませんか。
 リドワーン様が王都に来てくださらないのなら、私がここに残ります」
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