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第2章

第17話:疑念・カチュア王太女視点

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「なんですって、リドワーン様が家出されたですって」

「……はい、左様でございます」

 シャルマン公爵家の使者が一瞬言い難そうにしました、明らかに不審な態度です。
 リドワーン様からは事前に色々と伺っていしたから、最悪の状況が思い浮かびそうになりますが、必死で頭と心から打ち払います。
 
「使者殿、それはシャルマン公爵が私の婚約者を殺したという事ですか」

「なっ!
 滅相もございません、何故そのような事を主君がせねばならぬのですか。
 リドワーン様は主君の大切な長男でございます。
 父親が息子を殺すなどありえません」

 この驚き方と一瞬返事が遅れた感じ、どう考えても有罪ですね。
 リドワーン様が事前に教えてくださっていたように、気に喰わない天職だったので、家の恥だと考えて情け容赦せずに我が子を殺そうとしたのでしょう。

 ただ、確実に殺せていたのなら、病死として届けていたでしょう。
 それを家出と届けたのは、殺すことに失敗したのだと信じます。

 リドワーン様をお助けするには何をすればいいのでしょうか?
 私が何か言う事でリドワーン様をお助けできるでしょうか?
 下手な事を口にしたら、リドワーン様に対する追手が厳しくなりますね。

「では、シャルマン公爵は人道に外れた子殺しをしていないというのですね。
 それを王太女の私に言い切るという事は、嘘だったら王家王国を欺こうとしたということになりますが、それでも使者殿は断言するのですね」

「私の知る限りそういう事はございません」

「笑止!
 嘘が露見した場合は、自分が嘘をついていたことにして死ぬつもりですか。
 そのような事で王家王国を騙そうとした罪が誤魔化せると思っているのですか。
 シャルマン公爵領内の教会権力で抑えられても、大陸中の教会は抑えられません。
 子殺しの罪で王家王国を敵に回し教会にも糾弾されて、シャルマン公爵家が保てると本気で使者殿は思っているのですか。
 そう思っているのなら、使者になる資格も能力もない、阿諛追従だけで役目をもらった屑ですね」

「それは、いくらなんでも言い過ぎではありませんか、王太女殿下」

「私の婚約者であるリドワーン様を殺してしまったら、こうなる事くらい馬鹿でも分かりますのに、分からなかったというのなら愚か者でなくて何なのです。
 分かっていて主君に諫言しなかったのなら、金や地位に眼が眩んで主家を潰そうとしている不忠者でしょう。
 私がここまで説明してあげているのに、今シャルマン公爵家がどれほど危険な状態なのか、まだ理解できないのですか」

「……全て王太女殿下の妄想でございます。
 そのような妄想のために主君の名誉を傷つけられるいわれはありません」

「そこまで言うのなら、王家と教会が派遣する巡検使を受け入れることができますね、それとも見られては困る事があり過ぎて巡検使は受け入れられませんか。
 阿諛追従の佞臣殿」
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