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第1章

第13話:報告と討伐隊

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「マスター、聞いていた通り、いや、それ以上かもしれない。
 俺達が探れる範囲だけでも、数千規模のゴブリンがいた。
 だが、その集落も、ダンジョンから溢れたゴブリンだけの数だ。
 ゴブリンの集落は、ダンジョンの入り口を囲むように広がっていた。
 今のところは大魔境の獲物とダンジョンの獲物だけで食べていけているようだ。
 だが、それを食い尽くしたら、大魔境から溢れ出てくるかもしれない。
 できるだけ早く準備を整えて討伐すべきだ」

 普段は沈着冷静で表情など絶対に変えないだろうと一目で分かる忍者が、内心の動揺を抑えきれずに勢い込んで話している。
 3人の斥候は恐怖の表情を隠そうともしていない。

 ギルド事務所で待っていることができなかったマスターが、大魔境の境界部にいてくれたので、その場で直ぐに報告となったのだ。
 そうでなければ俺が報告を直接聞くこともなかっただろう。

 今は何があってもロードスライムの中から出ようと思わない。
 それくらいロードスライムの警戒感が伝わってくるのだ。

「ゴブリンを統率しているのはどのレベルだと思う。
 それとダンジョン内にいる総数の想像はつくか」

「無理を言わないでくれ、マスター。
 ゴブリンに見つからないよう索敵するだけで精一杯だったんだ。
 だが、そうだな、幅を大きくとっていいというのなら言える。
 ダンジョン内のゴブリン数を全く考えない集落の数で六千。
 頭は最小でファイターヒュージゴブリンだ。
 だがダンジョンが俺の知っている最大規模なら、ゴブリンの数は10万を超える。
 そして頭はシャーマンキングゴブリンかプリーストキングゴブリンになる。
 その時には10匹くらいのロードゴブリンと、100匹くらいのヒュージゴブリンがいると考えてくれ。
 もちろんビックゴブリンは1000匹以上いる。
 とてもじゃないがこのギルドの冒険者だけで討伐は無理だ」

 忍者の言葉は決して大袈裟じゃない。
 余計な事を口にする気はないが、ロードスライムの警戒感はキングゴブリン級がいると感じている。

 強い敵から逃げて生き延びるのが本性と言うべきスライムの警戒感は正確だ。
 ゴブリンの頭がキング級ならば、その総数も10万を超えていてもおかしくない。

 とても恐ろしいが、それほど多数のゴブリンを養えるだけの食糧生産力のあるダンジョンには、とても興味がある。

 そのダンジョンを占拠できれば、俺のスライムを無限成長させることができるかもしれないからだ。

「分かった、王都の本部を通じて国中の冒険者ギルドに緊急招集をかけてもらう。
 ジルナ伯爵にも連絡して、領主軍を動員してもらう。
 だがゴブリンが何時食糧不足になるか分からんし、巣別れをする可能性もある。
 引き続きゴブリンの集落を見張ってもらいたいのだが、どうだ」
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