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第1章

第8話:存在誇示と汚れた冒険者ギルド

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 正直に言えば、冒険者ギルドに行くことは迷った。
 元婚約者のカチュア王太女の性格を考えれば、隠れ暮らした方がいい。
 俺が生きているのを知ったら、次の婚約話に苦しむだろうからだ。

 国内貴族、特にシャルマン公爵家との融和を考えれば、長弟のジェスワンを王配に迎える方がもめごとが少ない。
 俺と国民の板挟みになり苦しむことは明白だった。

「だけど、お前達の力を考えれば、日陰者にならなくてもいい気がするんだよ。
 ヒュージスライムのままでも十分強いからね。
 それが次の進化を遂げたら、本当に無敵になるんじゃないかな」

 シャルマン公爵家と、いや、父のジェームズや弟達と戦って、シャルマン公爵家の実権を握れば、カチュア王太女と添い遂げられるかもしれないのだ。

 スライムの次の進化まで、もしくはさらに次の進化までカチュア王太女が婚約をしないよう、生きていることをアピールしておく決断をした。

 俺の願望が間違っていて、カチュア王太女が何の躊躇もせずに長弟のジャスワンと婚約したら、それはそれで仕方のない事だと割り切った。
 
「そんな話は信じられん、1万を超えるゴブリンの集落があるなんて嘘だ。
 冒険者ギルドは色々と忙しいのだ、嘘偽りに付き合っている暇などない。
 とっとと出ていけ、嘘つき野郎共」

 冒険者ギルドのマスターにボロクソに言われてしまった。
 ラノベやアニメでは色々な冒険者ギルドを見てきたが、この世界では国王や領主の影響力がとても強く、役人や貴族子弟の天下り先になっているという。

 特にこの冒険者ギルドは王国でも辺境にあるので、王家の目が行き届かずに代官が横領などを繰り返していて、素材の買取価格がとても安いと地元民が教えてくれた。
 その所為もあって、地元の猟師以外にはほとんど冒険者がいないという。

「スライムの坊や、仕方がない、俺達と一緒に他の冒険者ギルドに行ってくれ。
 少し遠いがジルナ伯爵家の当主カッツェン様は公明正大なお方だ。
 そこにある冒険者ギルドも真っ当に運営されている。
 そこまで行けば必ず斥候を派遣してくださる」

「行くのはいいですが、それまでに村がゴブリンに襲われる可能性があります。
 ここは女子供も含めた村人全員で行くべきです。
 同時にカッツェン様に王家へ事情説明の使者を送ってもらうのです。
 そうすれば代官が首になり、村の生活もよくなります。
 今までは波風を立てずにやってこられたようですが、このままでは村人全員がゴブリンに食べられるか、子供を産むための道具にされてしまいます。
 それでもいいのですか、村長」
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