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第1章
第44話:撤退
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準備万端整えての奇襲だったので、魔術を放つまでは何の問題もなかった。
助けてくれた人々へのお礼と、万が一僕が殺されてしまう事も考えて、直前までの情報を残すために、ライブ配信をしながらの奇襲だった。
家の大切な魔術を公にするわけにはいないが、人類の敵になるかもしれないモンスターは、できるだけ早く倒さないといけない。
発音に関しては、記録用ドローンの集音機能を切っておけば、最初から記録にも残らないので防ぐことができる。
問題は唇の動きで、読唇術ができる者がライブ映像を見ていたり、記録した映像を解析されたら、呪文を知られてしまう。
だからなのか、僕が物心ついた頃から腹話術を練習させられた。
家の誰かが、こんな時のために、唇を読まれずに魔術を放てるように考えていた。
そのお陰で、ダンジョンの外に出るような恐ろしいモンスターに対して、魔術を使う事ができる。
ファイア・ストーム
僕の知る火炎系魔術で最大の攻撃力を誇るモノ。
これで倒せないようなら、魔術以外の方法を考えないといけない。
炎嵐の中にいるモンスターが無事だとは思えないが、念の為に即座に撤退する。
危険区域から逃げ出して、待機してくれている車両に乗って直ぐに現場を離れる。
もしモンスターが炎嵐から生きて出てきたとしても、これまでの行動が罠でない限り、僕を追っては来られない。
ギャ、ギャ、ギャ、グギャギャギャ、グギャ!
危なかった、モンスターが炎嵐に包まれながら追ってきた!
それでも、これまでの行動に罠はなかったようで、ダンジョンの出入口100メートルから外には出てこなかった。
怒りに任せて出てくれていたら、小銃の連続射撃で倒せたかもしれない。
強烈な攻撃を受けても冷静な判断ができるモンスターだと分かった。
人類にとってとても恐ろしい相手だ。
「このまま隊長たちと合流してください」
「了解しました」
僕を逃がすために車両に待機してくれていた分隊長が返事をしてくれる。
僕の方に1個分隊10人がついて来てくれている。
ドローンを操り小銃で支援射撃する方は、小隊長以下20人がいる。
さて、どうするべきだろう?
今の状態であのモンスターと戦うのは危険過ぎる。
勝てないと思っている訳ではないが、命を賭ける意味がない。
僕は世界一のトレジャーハンターになりたいので、英雄になりたい訳じゃない。
ダンジョン協会に利用されてよろこぶバカでもない。
「これ以上の調査をしろと言うのは、死ねと強制されているのと同じですね」
「そうですよ、民間人にそこまでさせる権利など誰にもありません」
分隊長が僕の事を思って怒ってくれている。
これが普通の反応なら、僕がこれ以上の調査を断ってもだいじょうぶだろう。
☆竜也のライブ動画
ノンバア:すごいわね、無詠唱であれほどの大魔術を使ったわよ!
ゆうご:まるでアニメやマンガのようだった!
Rafael:ジャパニーズアニメ、最高!
藤河太郎:日本のアニメやマンガは世界1だからな!
雷伝五郎:俺も日本のアニメとマンガを誇りに思っている!
Benno:そんな話よりも、今はモンスターの事だ!
ノンバア:そうね、あんな前代未聞の魔術で攻撃されたというのに……
ゆうご:確かに、あの魔術を受けて生きているなんて、恐ろし過ぎる!
藤河太郎:すまん、そうだった、とんでもない事態だった。
雷伝五郎:俺も悪かった、調子に乗りすぎた。
Rafael:アニメやマンガを超える人類の敵が現れたのか!
Benno:そうだ、今俺たちが考えないといけないのは、こいつの倒し方だ!
ノンバア:あんな大魔術で倒せないモンスターを、どうやって倒すというの?
ゆうご:先ほどの魔術を超える大魔術なら可能性はあるよな?
Rafael:可能性はあるが、あの魔術を超えるような魔術があるのか?
藤河太郎:無詠唱だったから、正確にどんな魔術かは分からないが、あるはずだ!
雷伝五郎:そうだな、普通に考えれば、無詠唱よりも詠唱有りの方が強力だ。
ノンバア:問題は強力な詠唱魔術を公開してくれる人がいるかよ。
:普通は、自分の切り札である強力な魔術を公開しないわよ。
Rafael:ライブ配信をしない前提で、周囲にも誰も近づけない前提で……
Benno:自分で言っていて分かっているだろう?
:合衆国やロシアは衛星で呪文を手に入れられるぞ。
ゆうご:最近は中華の衛星も性能が良くなっていると聞く。
藤河太郎:自分だけ損をするのを受け入れられるかどうか……
雷伝五郎:国も協会も大した礼金は渡さないだろう。
Rafael:そういう事なら、世界中の視聴者から礼金を集めるしかない。
Benno:投げ銭で英雄に報いるのだな。
ノンバア:1人1人の金額は少なくても、2000万人いれば大金になるわ!
藤河太郎:まずは俺たちで投げ銭してくれる人を集めよう。
:竜也君やタカラブネファミリーに頼むのはそれからだ。
雷伝五郎:そうだな、まずは資金を確保しておかないと頼む事すらできない。
Rafael:サイレントリュウヤも助けてくれるかな?
Benno:竜也君の命がかかっているんだ、必ず助けてくれるさ。
ノンバア:そうね、必ず助けてくれるわ!
Rafael:俺はロシアの金持ちに訴えてみる。
藤河太郎:各国の同志が自国民に投げ銭を頼むんだ!
★★★★★★
作者です。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。
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<(_ _)>
助けてくれた人々へのお礼と、万が一僕が殺されてしまう事も考えて、直前までの情報を残すために、ライブ配信をしながらの奇襲だった。
家の大切な魔術を公にするわけにはいないが、人類の敵になるかもしれないモンスターは、できるだけ早く倒さないといけない。
発音に関しては、記録用ドローンの集音機能を切っておけば、最初から記録にも残らないので防ぐことができる。
問題は唇の動きで、読唇術ができる者がライブ映像を見ていたり、記録した映像を解析されたら、呪文を知られてしまう。
だからなのか、僕が物心ついた頃から腹話術を練習させられた。
家の誰かが、こんな時のために、唇を読まれずに魔術を放てるように考えていた。
そのお陰で、ダンジョンの外に出るような恐ろしいモンスターに対して、魔術を使う事ができる。
ファイア・ストーム
僕の知る火炎系魔術で最大の攻撃力を誇るモノ。
これで倒せないようなら、魔術以外の方法を考えないといけない。
炎嵐の中にいるモンスターが無事だとは思えないが、念の為に即座に撤退する。
危険区域から逃げ出して、待機してくれている車両に乗って直ぐに現場を離れる。
もしモンスターが炎嵐から生きて出てきたとしても、これまでの行動が罠でない限り、僕を追っては来られない。
ギャ、ギャ、ギャ、グギャギャギャ、グギャ!
危なかった、モンスターが炎嵐に包まれながら追ってきた!
それでも、これまでの行動に罠はなかったようで、ダンジョンの出入口100メートルから外には出てこなかった。
怒りに任せて出てくれていたら、小銃の連続射撃で倒せたかもしれない。
強烈な攻撃を受けても冷静な判断ができるモンスターだと分かった。
人類にとってとても恐ろしい相手だ。
「このまま隊長たちと合流してください」
「了解しました」
僕を逃がすために車両に待機してくれていた分隊長が返事をしてくれる。
僕の方に1個分隊10人がついて来てくれている。
ドローンを操り小銃で支援射撃する方は、小隊長以下20人がいる。
さて、どうするべきだろう?
今の状態であのモンスターと戦うのは危険過ぎる。
勝てないと思っている訳ではないが、命を賭ける意味がない。
僕は世界一のトレジャーハンターになりたいので、英雄になりたい訳じゃない。
ダンジョン協会に利用されてよろこぶバカでもない。
「これ以上の調査をしろと言うのは、死ねと強制されているのと同じですね」
「そうですよ、民間人にそこまでさせる権利など誰にもありません」
分隊長が僕の事を思って怒ってくれている。
これが普通の反応なら、僕がこれ以上の調査を断ってもだいじょうぶだろう。
☆竜也のライブ動画
ノンバア:すごいわね、無詠唱であれほどの大魔術を使ったわよ!
ゆうご:まるでアニメやマンガのようだった!
Rafael:ジャパニーズアニメ、最高!
藤河太郎:日本のアニメやマンガは世界1だからな!
雷伝五郎:俺も日本のアニメとマンガを誇りに思っている!
Benno:そんな話よりも、今はモンスターの事だ!
ノンバア:そうね、あんな前代未聞の魔術で攻撃されたというのに……
ゆうご:確かに、あの魔術を受けて生きているなんて、恐ろし過ぎる!
藤河太郎:すまん、そうだった、とんでもない事態だった。
雷伝五郎:俺も悪かった、調子に乗りすぎた。
Rafael:アニメやマンガを超える人類の敵が現れたのか!
Benno:そうだ、今俺たちが考えないといけないのは、こいつの倒し方だ!
ノンバア:あんな大魔術で倒せないモンスターを、どうやって倒すというの?
ゆうご:先ほどの魔術を超える大魔術なら可能性はあるよな?
Rafael:可能性はあるが、あの魔術を超えるような魔術があるのか?
藤河太郎:無詠唱だったから、正確にどんな魔術かは分からないが、あるはずだ!
雷伝五郎:そうだな、普通に考えれば、無詠唱よりも詠唱有りの方が強力だ。
ノンバア:問題は強力な詠唱魔術を公開してくれる人がいるかよ。
:普通は、自分の切り札である強力な魔術を公開しないわよ。
Rafael:ライブ配信をしない前提で、周囲にも誰も近づけない前提で……
Benno:自分で言っていて分かっているだろう?
:合衆国やロシアは衛星で呪文を手に入れられるぞ。
ゆうご:最近は中華の衛星も性能が良くなっていると聞く。
藤河太郎:自分だけ損をするのを受け入れられるかどうか……
雷伝五郎:国も協会も大した礼金は渡さないだろう。
Rafael:そういう事なら、世界中の視聴者から礼金を集めるしかない。
Benno:投げ銭で英雄に報いるのだな。
ノンバア:1人1人の金額は少なくても、2000万人いれば大金になるわ!
藤河太郎:まずは俺たちで投げ銭してくれる人を集めよう。
:竜也君やタカラブネファミリーに頼むのはそれからだ。
雷伝五郎:そうだな、まずは資金を確保しておかないと頼む事すらできない。
Rafael:サイレントリュウヤも助けてくれるかな?
Benno:竜也君の命がかかっているんだ、必ず助けてくれるさ。
ノンバア:そうね、必ず助けてくれるわ!
Rafael:俺はロシアの金持ちに訴えてみる。
藤河太郎:各国の同志が自国民に投げ銭を頼むんだ!
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作者です。
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