冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全

文字の大きさ
上 下
41 / 53
第1章

第41話:お願い

しおりを挟む
 僕たちは12時間連続でモンスターを見張り続けた。
 ドローンの航続時間を考えて小まめに交代させた。
 動かすレンジャー隊員の集中力も考えて、2機5交代で運用した。

 12時間連続で見張ったお陰で、モンスターの事が少しは分かった。
 モンスターは、ビキンダンジョンの出入り口から100メートル以内の所から離れる事はない。

 見張り出して直ぐに1機のロシアドローンが魔術で破壊されたが、それ以降もうかつに近づいた3機のドローンが魔術で破壊されている。

「問題は破壊されたドローンがモンスターとの距離で決まっていない事です」

 お姉さんたちには仲間意識があったので、普段の言葉遣いをしていたが、国から派遣されて僕を守ってくれているレンジャー隊員には、丁寧な言葉を使った。

「そうですね、破壊されたロシアのドローンの最大距離がおよそ170メートル。
 これが魔術の最大射程距離と考えるべきでしょう」

 隊長の言う通りなのだが、何か引っかかるものがある。

「ただ、4回の攻撃が行われましたが、その最短距離は80メートルです。
 130メートルの時と140メートルの時もありました。
 最初にドローンを知覚したのはもっと早いと思うのですが、どう思われますか?」

「そうですね、目の動きや体の動きを見ても、ずっと前からドローンの事は知覚していたと思われますから、何かは腹の立つことがあったのでしょう」

 僕の疑問に隊長が答えてくれるが、素直にうなずく事ができない。

「そう考える事もできますが、それだと腹を立てる原因を見つけないといけません。
 そうすれば、不意にモンスターが現れた時に殺されずにすみます」

「そうですね、破壊されたドローンは機種が違うから、音の大きさが違うのか、目に見える大きさの違いなのか、何かあるのでしょう」

「その点を確実に確かめるためには、同じ様に整備された同一機種を何度も近づけなければいけませんが、自衛隊でやれますか?」

「申しわけないですが、国際情勢的にも国内政治情勢的にも自衛隊内の予算的にも、今直ぐドローンを取り寄せるのは不可能です」

「家がドローンも運搬費も準備すると言っても難しいですか?
 最終的には国際ダンジョン協会に請求書を回します」

「政府が珍しく直ぐにモスクワ臨時政府に交渉してくれたとしても、日本本土から自衛隊機を使ってドローンを取り寄せるのは難しいでしょう。
 両国政府の合意で民間航空機で運ぶのが最速だと思いますが、全ては両国政府が本気でこの事を取り組むかどうかによります」

 隊長の言う通りだろう。
 また合衆国の特殊部隊を使う方法もあるが、できればやりたくない。
 あれは一族を人質にされたからやった、採算度外視の鬼手だ。

「僕の個人的な配信を見てくださっているみなさん、申し訳ありませんが、助けていただきたい事があります。
 今僕はロシアの沿海地方にあるビキンダンジョンに来ています。
 今までにない、ダンジョンの外に出るモンスターを調べています」

 俺は淡々と訴え続けた。

「安全に、人が死なないように調べるには、多くのドローンが必要になります。
 モスクワ臨時政府、日本政府、沿海地方政府、国際ダンジョン協会に急いでドローンを送るように訴えてください」

 僕の個人配信を見てくれている人たちは、お姉さんたちのパーティー配信を見てくれている人数に比べたら、1/5程度しかいない。

 熱心にライブ配信をしている訳でもないし、ライブ配信をそのまま動画投稿しているだけの、とても不親切な投稿だ。

 お姉さんたちのファンたちのような、政府を動かすほどの手助けはしてもらえないだろうが、少しでも支援してもらえれば良い。

 この近くに住んでいる人が、手持ちのドローンを売りに来てくれるだけでも助かるから、恥ずかしいのを我慢してやってみた。

 それに、僕からは直接頼めないけれど、こうして支援をお願いしていたら、お姉さんたちがファンクラブに支援を頼んでくれるかもしれない。

 おばあちゃんにも伝わるだろうから、表に出していい協力要員を使って、家のドローンを送ってくれるかもしれない。

 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画ファンクラブのライン

Rafael:何とか沿海地方の政府を説得する事ができた!

藤河太郎:よし、これで支援物資を竜也君に送れるぞ。

Rafael:俺たちがやらなくても、サイレントリュウヤが動いていたようだ。
  :仲間が交渉に行く前に、航空自衛隊機の受け入れが決まっていた。

雷伝五郎:いや、交渉は力と数だ、俺たちのネット攻撃も役に立っている。

Benno:その通りだ、これほど早く決まったのは俺たちが動いたからだ。

藤河太郎:そうだな、サイレントリュウヤだけではもう少し時間がかかったはずだ。

雷伝五郎:それはそうとして、これからどうする、後何ができる?

Rafael:俺たちの金とみゆき姫が送ってくださったお金でドローンを買った
  :沿海地方にあったドローンを全て買ったと言えるくらいだ。

ノンバア:それだけあれば、竜也君の調査も進むだろうさ。

Rafael:ああ、全方位からドローンを近づけられるだろう。
  :その時にモンスターがどのドローンを攻撃するかだな。

ノンバア:竜也君ならそれである程度の事を調べられるだろう。

Rafael:全部同じ機種なら良かったのだが……

Benno:それはいくら何でも無理だ、Rafaelはよくやった。

ゆうご:そうだ、ロシアの同志たちは良くやってくれた!

Rafael:ありがとう、その言葉をみなに伝えるよ!

Benno:ロシアの同志、ありがとう。

ノンバア:ありがとう、ロシアの同志。

藤河太郎:ロシアの同志に心からの感謝を!

雷伝五郎:ありがとう、これからも宜しく!

Rafael:ありがとう、黙っている者もよろこんでいる。
  :だからもういいよ、それよりもこれからの事を話し合おう。

Benno:そうだな、調査だけで済めばいいが、討伐を命じられるかもしれない。

ノンバア:竜也君1人に討伐させるなんて無茶過ぎる!

雷伝五郎:そんな事にならないように、各所に圧力をかけないといけない。

Rafael:俺たちはモスクワ臨時政府と沿海地方政府に圧力をかける。

雷伝五郎:俺たちは日本政府に圧力をかける。

Benno:それぞれが母国政府に圧力をかけると同時に、協会にも圧力をかけるぞ!


★★★★★★

 作者です。

 作品を読んでいただきありがとうございます。

 作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。

 作品のお気に入り登録をお願いします。

 <(_ _)>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

空の話をしよう

源燕め
児童書・童話
「空の話をしよう」  そう言って、美しい白い羽を持つ羽人(はねひと)は、自分を助けた男の子に、空の話をした。    人は、空を飛ぶために、飛空艇を作り上げた。  生まれながらに羽を持つ羽人と人間の物語がはじまる。  

リュッ君と僕と

時波ハルカ
児童書・童話
“僕”が目を覚ますと、 そこは見覚えのない、寂れた神社だった。 ボロボロの大きな鳥居のふもとに寝かされていた“僕”は、 自分の名前も、ママとパパの名前も、住んでいたところも、 すっかり忘れてしまっていた。 迷子になった“僕”が泣きながら参道を歩いていると、 崩れかけた拝殿のほうから突然、“僕”に呼びかける声がした。 その声のほうを振り向くと…。 見知らぬ何処かに迷い込んだ、まだ小さな男の子が、 不思議な相方と一緒に協力して、 小さな冒険をするお話です。

クール天狗の溺愛事情

緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は 中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。 一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。 でも、素敵な出会いが待っていた。 黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。 普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。 *・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・* 「可愛いな……」 *滝柳 風雅* 守りの力を持つカラス天狗 。.:*☆*:.。 「お前今から俺の第一嫁候補な」 *日宮 煉* 最強の火鬼 。.:*☆*:.。 「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」 *山里 那岐* 神の使いの白狐 \\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!// 野いちご様 ベリーズカフェ様 魔法のiらんど様 エブリスタ様 にも掲載しています。

処理中です...