冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全

文字の大きさ
上 下
36 / 53
第1章

第36話:待ち伏せ

しおりを挟む
「今から探知の魔術を使う」

「え、竜也君は探知の魔術まで使えるの?」

 深雪お姉さんがとても驚いている。
 僕の家では、ダンジョンで魔術が使えるのが当たり前なのだけれど、一般的な冒険者では魔術が使えない。

 魔術が使えるようになるには、最低でもレベルが100は必要だ。
 その上で、隠し扉から魔術書を探し当てないといけない。
 黎明期や混乱期に冒険者になった者でなければ、手に入れられない代物だ。

 最近冒険者になった者、いや、安定期に入った20年前くらいから冒険者になった者には、魔術はとても遠い存在なのだ。

 ただ、それは表向きに語られている話だ。
 実際には、魔術の中には魔術書がなくても覚えられる物がある。

 レベルを上げないと無理だが、ダンジョンの壁に書かれている文字を解読して分かった、呪文を唱えれば使える魔術もある。

「エリア・スキャン、ディスタント・ビュウ、プレゼンス・ディテクション、インフラレド・ディテクション、アルトゥラサニク・ディテクション」

「竜也君、まさかとは思うけれど、全部探知の魔術なの?」

 今度は月奈お姉さんが聞いてきた。

「はい、敵はマフィアだけでなく政府や軍の残党まで加わっています。
 ダンジョンでレベルアップした者たちが、最新の兵器や防具を使ってきます。
 視覚、聴覚、赤外線、気配察知など、使える探知術は全て使います」

「それで、敵は待ち構えていそう?」

「浅い階でおそって僕らに逃げられるのを恐れているのでしょう。
 地下35階で待ち構えているようです。
 遠見で確認しましたが、自動小銃と戦闘用スーツで武装しているだけでなく、戦闘用ドローンはもちろん、装甲車と戦車まで持ち込んでいます」

「魔剣は貸してもらっているけれど、銃器を持っていないわよ。
 この状態で勝てるの、いえ、ハッキリと聞くは、生きて帰れるの?!」

「僕は遠距離攻撃魔術を覚えていますから、安心してください。
 敵は各種地雷を仕掛けて待ち構えていますが、これまで学んできた罠を避ける動作をしてくれたら、地雷が爆発する事はありません」

「竜也君がそう言うのなら信じるわ」

 僕たちは一気に地下33階まで潜った。
 モンスターを出現させないようにして駆け下りた。

 どうしてもモンスターが出現してしまう、下に降りる階段前は、出てきたモンスターを無視して駆け抜けた。

 直接地下35階まで下りなかったのは、戦う前に女の子たちを休ませて、心身共に万全の状態にしておきたかったから。

 女の子たちを人間と戦わせる気はない。
 モンスターを倒し過ぎて感覚がおかしくなっているかもしれないけれど、女の子たちに人殺しをさせる気はない!

 僕もできることなら人は殺したくない。
 おそってきたら返り討ちする覚悟はしているけれど、まだ人を殺した事がない。
 できることなら一生殺したくない。

 お父さんとお母さんは、宝探しのために人を殺した事があると言っていた。
 殺されそうになったから、手加減できる状態ではなかったから、しかたなく人を殺したと言っていた。

 だけど、もっと相手よりも強かったら、殺さずに捕らえる事ができたかもしれないとも言っていた。

 だから僕は、寝る間も惜しんでレベルアップを重ねた。
 地上では少し強いだけの小学生だけれど、ダンジョンの中では軍隊が相手でも生け捕りにできる、強いトレジャーハンターになりたくて!

「準備は良い?」

「任せなさい、竜也君がしくじったら、私が助けてあげるわ!」

 深雪お姉さんが力強く答えてくれる。

「竜也君ならだいじょうぶだとは思うけれど、何かあったら任せて」

 月奈お姉さんも僕を助けると言い切ってくれる。

「竜也君ならだいじょうぶ、私は信じているわ」

 桜は僕を助けるなんて大きな事を言わない。
 ただ僕を信じていると言い切ってくれる、うれしいな。

「今度は私たちも自動小銃くらい持ってこない?」

 葵が急に現実的な事を言いだした。
 確かにあまりレベルアップしていない冒険者には、自動小銃でも効果がある。

 だけど、もう葵くらいのレベルになると、小銃弾くらいでは殺されない。
 強化された皮膚と筋肉以前に、体にまとう気や魔力ではじき返してしまう。
 それに、家の最新スーツは小銃弾程度では傷1つつかない。

「ワタシモテキニツッコミマス!」

 ルナは完全にバーサーカー状態だな!

「僕が良いと言うまでは隠れていて。
 手助けが必要になったら呼ぶから、それまでは絶対に出てこない!
 深雪お姉さん、ルナがバカな事をして僕の足を引っ張らないように、ちゃんと見張っていてください!」

 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画

Rafael:みゆき姫たちを案内した臨時政府要人が旧政府の残党だった!

藤河太郎:なに、みゆき姫は無事なのか?!

Rafael:竜也君が全ての歓待を断ったから、罠が空振りした。

雷伝五郎:さすが竜也君だ、罠を見抜いていたのだろう!

Benno:見抜いていたのかは分からないが、警戒していたのだろう。

藤河太郎:そうだな、ダンジョンの中ならともかく、地上では小学生だからな。

雷伝五郎:それで、そのスパイはどうなったのだ?

Rafael:モスクワ臨時政府に伝えた上で、現地の同志に確保を頼んだ。

ノンバア:臨時政府の中にはまだ裏切者がいるはずよ。
    :事前に連絡したら、逃げてしまうのではなくて?

Rafael:証拠が弱いから、逃げてくれた方が後々楽なのだ。

ゆうご:なるほど、そういう事か、よく分かった。

Rafael:それに、モスクワの裏切者をあぶり出すのにもちょうど良い。

Benno:色々と大変だな。

Rafael:俺たちは日本に集団帰化できそうだから良いのだが……

ゆうご:ロシアに残るしかなかった者たちを助けてやりたいのか?

Rafael:ああ、少しでも楽に暮らせるようにしてやりたい。

Benno:そうだな、自分たちだけが幸せになったら後味が悪いからな。

ノンバア:Rafaelは優しいな。

Rafael:自分が命を失わない範囲、少しだけだがな。

Benno:それでも十分立派だよ。
   :多くの奴らが私利私欲に走っているのに、よくやっているよ。

Rafael:少しでも良い形でロシアという国が残って欲しい。

ノンバア:よし、深雪ファンクラブは全面的にロシアを支援するぞ!

雷伝五郎:そうだな、サイレントリュウヤと組んで他国の併合を抑えられたんだ!
   :少しくらいは復興の手助けができるはずだ!

Rafael:ありがとう、助かるよ。

雷伝五郎:ロシアを庶民が住みやすい国にするぞ!

★★★★★★

 作者です。

 作品を読んでいただきありがとうございます。

 作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。

 作品のお気に入り登録をお願いします。

 <(_ _)>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

おばけブタのアート

モモンとパパン
児童書・童話
おばけのブタのアートはいろんなものに変身をしながら、イギリスへ 向かっていました。ただ遊びに行くのかと思いきや、しっかりした 目的がありました。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

処理中です...