冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全

文字の大きさ
上 下
34 / 53
第1章

第34話:突然のロシア遠征

しおりを挟む
「竜也、女の子たちとロシアに行ってもらうよ」

 二泊三日のレベルアップ合宿を終えて舞洲ダンジョンから戻ると、いきなりおばあちゃんからそう言われた。

「急にどうしたの?」

「ロシアのダンジョンが異常な変化を見せているそうなんだ。
 国際ダンジョン協会から家に指名の調査依頼が来てね。
 竜也しか行ける者がいないと言ったんだけど、それでも良いと言ってきたんで、国際デビューしてもらう事になったよ」

「……国際デビューはお父さんお母さんと一緒にと思っていたのだけど」

「竜也はおむつの取れない赤ちゃんじゃないんだろう?」

「当たり前だよ!」

「だったらタカラブネファミリーに来た指名依頼くらいやり遂げて見せな」

「分かったよ、だけど女の子たちに無理はさせられないよ。
 僕1人で行くから、それで良いよね?」

「パーティーメンバーなんだから、ちゃんと説明してからにしな。
 彼女たちにとっても、国際ダンジョン協会からの指名依頼は良い実績になる。
 参加するもしないも彼女たちの判断に任せな」

「深雪お姉さんと月奈お姉さんは良いけれど、他の3人は小学生だよ?」

「お前もだよ、竜也」

「それはそうかもしれないけど……」

「小学生だと文句を言う連中を潰して、彼女たちをC級冒険者にしたのだ。
 今さら小学生だからロシアに行かせられないとは言えない。
 多くの国際的な競技では、小学生も学校を休んで参加している」

 おばあちゃんの言う通りだ。
 夏冬の競技に関係なく、ジュニアの国際大会に小学生が参加している。
 参加している時期は夏休みや冬休みに限らない。

 体の事を考えて禁止されるまでは、小学生がフィギアスケートや体操のオリンピックや世界選手権に出ていた。

「それに、お前達も、いつの間にかもう直ぐ中学生だ。
 春休みまでのわずかな期間小学校を休んでも、出席日数はだいじょうぶだろう?」

「僕は問題ないけれど、あの子たちの出席日数までは知らないよ」

「だから本人たちに直接話して確かめな。
 3人も、ダンジョンに集中するために通信教育に切り替えるかもしれないし、中学校に通うにしても、ダンジョン科のある自由登校の学校に進学するかもしれない」

 おばあちゃんの言う通りなので、しかたなく週明けの月曜日に話した。
 深雪お姉さんと月奈お姉さんだけなら朝1番に話したのだけれど、3人が合流するのを待って午後に話した。

「そんな良い話、なんで今まで黙っていたの?
 朝合流した時に話してくれてもいいじゃない!」

 深雪お姉さんに文句を言われたが、2度も同じ事を話したくない。
 女の人達のように、いつもペラペラ話していられない。
 お父さんも男はあまり話過ぎない方が良いと言っていた!

「何時話しても同じだよ、お姉ちゃん」

 月奈お姉さんが深雪お姉さんを注意してくれる。

「そんな事ないよ、幸せな話を聞くのは早いほど良いんだよ!」

「私たちは必ず参加するから何時聞いても良いの。
 問題は学校と家の事情で参加できないかもしれない3人だよ」

「え、私はお姉ちゃんたちと参加できるよね?
 お父さんお母さんが反対しても、お姉ちゃんたちが説得してくれるよね?」

 葵が心配そうに質問している。

「任せなさい、必ず説得してあげるから!」

 深雪お姉さんが自信満々に答えている。

「国際ダンジョン協会からの依頼なら、ロシアマフィアの残党におそわれる事もないだろうから、説得してあげるわよ」

 慎重な月奈お姉さんまで葵を参加させる気だ。
 困った事に、鈴木三姉妹はやる気に満ちている。

「ワタシモサンカシマス、リョウシンガハンタイシタラ、イエデシテサンカシマス」

「家出の参加は絶対に認めない、必ず両親を説得しろ。
 両親が参加を認めたか、直接会いに行って確かめるからな!」

「オウ、カミサマ!」

「私も参加したいけれど、お父さんとお母さんが反対するかもしれない。
 説得できなかったら、絶対に連れて行ってくれないの?」

「月奈お姉さんは、ロシアマフィアのしゅうげきはないと言っていたけれど、旧政府や旧軍の残党、マフィアの生き残りがいる。
 そんな連中が、タカラブネファミリーの僕を狙ってくるかもしれない。
 この依頼自体が罠かもしれないんだ」

「分かりました、その事も両親に話して参加して良いか聞いてみます」

 4人が桜くらい慎重だったら、僕も楽ができるのに。
 桜だけでも日本に残ってくれるのなら、僕が守らなければいけない人が減る。
 何とかルナと葵も日本に残せないかな?

 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画

Rafael:マフィアの残党が潜伏している場所を突き止めたぞ!

藤河太郎:よくやった、臨時政府には伝えたのか?

Rafael:いや、まだだ、臨時政府に旧政府の残党が残っているかもしれない。
  :ここのみんなに相談してから伝えようと思った。

雷伝五郎:だったら止めておけ、こちらから国際ダンジョン協会に伝える。

Benno:みゆき姫にも正式に伝えておこう。

藤河太郎:そうだな、みゆき姫だと、この投稿を見逃すかもしれない。

雷伝五郎:俺からも日本政府にも伝えておく。
    :日本政府が無視できないように、複数のルートで伝えよう。

Rafael:ありがとう、臨時政府の誰が信用できるのか分からないんだ。
  :だが、国際ダンジョン協会や日本政府は信用できるのか?

ノンバア:今のロシアの状況では仕方のない事だ。
    :ただ、国際ダンジョン協会も日本政府も信用はできないよ。

Rafael:そうか、そうだな、誰は本当に信じられるなんて分からないよな。
  :実際問題、樺太に逃げ込んだ中にもスパイがいるかもしれない。

ゆうご:そうか、それでは気が休まらないな。

Rafael:それでも、樺太と千島には希望があるだけましだ。

Benno:そうだな、無政府状態になっている地域は大変なのか?

Rafael:ああ、合衆国と中華のけん制で、国連軍も入れていない地域がある。

ゆうご:腹立たしいな!

Rafael:ああ、はらわたが煮えくり返る想いだ!

Benno:両国共に民族独立をうたってロシアを分裂させる気だからな。

ノンバア:ああ、それも自分たちに都合のいい形でな。

Benno:合衆国も中華も、シベリアの資源を狙っているからな。

Rafael:故郷が喰い散らかされてしまう……

ノンバア:確かにその通りだが、この状態では仕方がないのかもしれない!

雷伝五郎:深雪ファンクラブで臨時政府を立ち上げられたらいいのだが……

Rafael:サイレントリュウヤが助けてくれたら不可能ではないと思う。

雷伝五郎:そうなれば良いな!

★★★★★★

 作者です。

 作品を読んでいただきありがとうございます。

 作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。

 作品のお気に入り登録をお願いします。

 <(_ _)>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜

朱宮あめ
児童書・童話
火花は天真爛漫な魔女の女の子。 幼なじみでしっかり者のノアや、臆病だけど心優しい親友のドロシー、高飛車なダリアンたちと魔法学校で立派な魔女を目指していた。 あるとき、授業の一環で魔女にとって魔法を使うための大切な燃料『星の原石』を探しに行くことに。 火花とドロシーが選んだのは、海の中にある星の原石。 早速マーメイドになって海の中を探検しながら星の原石を探していると、火花は不思議な声を聴く。 美しくも悲しい歌声に、火花は吸い寄せられるように沈没船へ向かう。 かくして声の主は、海の王国アトランティカのマーメイドプリンセス・シュナであった。 しかし、シュナの声をドロシーは聴くことができず、火花だけにしか届かないことが発覚。 わけを聞くと、シュナは幼い頃、海の魔女・グラアナに声を奪われてしまったのだという。 それを聞いた火花は、グラアナからシュナの声を取り戻そうとする。 海の中を探して、ようやくグラアナと対峙する火花。 しかし話を聞くと、グラアナにも悲しい過去があって……。 果たして、火花はシュナの声を取り戻すことができるのか!? 家族、学校、友達、恋! どんな問題も、みんなで力を合わせて乗り越えてみせます! 魔女っ子火花の奇想天外な冒険譚、ここに誕生!!

勇者びーむ

ちありや
児童書・童話
むかしむかし、人々を苦しめる悪い魔王がいました。 王様は魔王を倒すべく、神に祝福された若者を勇者にしたのです……。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ

三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』  ――それは、ちょっと変わった不思議なお店。  おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。  ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。  お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。  そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。  彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎  いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。

ユメクイ・アメジストナイト

江乃香
児童書・童話
──夢月町は日本で一番星空が綺麗に見える町。それはこの町に住む人々の美しい夢が星となって空に瞬いているから。そんな町で悪夢を見てごらんなさい。十三日連続で悪夢を見た日には……悪夢の底に引きずられて一生そこから出られないのです。  そんな言い伝えがある夢月町に住む宮成夢名(ミヤナリユメナ)は十二日連続で悪夢を見続けていた。  そして今夜が勝負の十三日目。祈りながら眠りにつくと、夢食いと名乗る少年、夜見(ヨミ)に出会う。ヨミはユメナの悪夢を食べさせてほしいとお願いをするが……

処理中です...