冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!

克全

文字の大きさ
上 下
8 / 53
第1章

第8話:交渉

しおりを挟む
 所長は僕たちを、奥の机の前にあるソファーに案内してくれた。
 机の前に1人用のソファーがある
 その前に机があって、机の左右に大人が3人くらい座れる長いソファーがある。

 左のソファーにさっき会ったお姉さんたちのうち、小学生ぐらいの3人が座っていて、その後ろに2人のお姉さんたち、付添人が立っている。

 僕とおばあちゃんは右側のソファーに座るように勧められた。
 おばあちゃんの目を見て、だいじょうぶなのを確認してから座る。
 目で合図してくれた通り、おばあちゃんは僕の後ろに立って守ってくれる。

 それを見ていた所長、お兄さんとおじさんの間くらいの人が話しだした。

「宝船様に来ていただいたのは他でもありません。
 ダンジョン協会からではありませんが、お願いがあるからです」

「相変わらず協会の人間は小狡いねぇ、そんなに責任を取るのが嫌かい?」

 おばあちゃんが、それほど腹を立てていないような言葉づかいで話している。
 この所長と名乗る人が嫌いではないのかな?

「はい、寝る間も惜しんで勉強をして、ようやく今の立場を手に入れたのです。
 自分の責任ではない事のために、今の立場を捨てる気にはなれません」

「それで、私の孫に何をさせて、何を見返りにくれるんだい」

「申し訳ありませんが、させるのも与えるのも、私でも協会でもありません。
 そちらに座っておられる方々です」

 おばあちゃんが、お姉さんたちに目を向けた。

「それで、お前さんたちは家の孫に何をさせたいんだい」

「私たちのパーティーに入って欲しいのです。
 タカラブネファミリーが持っておられる知識を教えていただきたいのです」

「冒険者にとって知識が命の次に大切な事を知っていて、言っているのか?!」

「はい、ですが、有用な知識は多くの冒険者で共有すべきです。
 少しでも死ぬ人を減らせますし、貴重な資源も手に入ります」

「汚い大人たち、人を殺してでも宝物を手に入れようとする冒険者がいる。
 そんな現実を知らない子供のたわごとだね」

「現実は知っています、知っていても、理想は捨てられません」

「あんたの理想は結構だが、そのためにタカラブネファミリーが損をしなければいけない義理はない、断るよ」

「損に見合う見返りはご用意させていただきます」

「ほう、どんな見返りをくれると言うんだい?」

「動画配信の利益を等分に分けさせていただきます。
 これでも私は人気の動画配信者で、ファンが200万人います。
 月収6000万円くらいですが、それを分けさせていただきます」

「何人で分けるんだい?」

「私は、編集や交渉をしてくれる妹と2人でやってきましたが、これからはこの子たちを含めた5人でやる気でした。
 ですがお孫様の竜也君に助けていただきましたので、竜也君を含めた6人で分けたいと思っています」

「3人だ、まだ何の役にも立たない、その3人と等分に分けるのはおかしい。
 人気のあるあんた、実務をするその子、実力のある竜也の3人以外は、足手まといなだけだ」

「ですが動画に顔を出して危険な冒険をするのは同じです」

「本気で同じ危険だと思っているのなら、あんたは冒険者失格だ。
 先の宝探しでも、あんたはこの子たちをかばって死ぬ気だった。
 私は、この子たちを守る為に、大切な孫を死なせる気はないよ!
 自分の理想のために死にたいのなら、他人を巻き込まずに自分だけで死にな!」

「いえ、最初からお孫さんを巻き込む気などありませんでした。
 何かあったら私が盾になって死にますので」

「バカな事を言っているんじゃないよ!
 家の孫が、一緒に宝探しをしている女子供を見捨てる訳がないだろう!
 言葉では正義を口にしているが、実際にはひきょう極まりないね!」

「あっ……ごめんなさい、でも、本当にそんなつもりは……」

「お姉ちゃん、やっぱりお姉ちゃんの考えは身勝手過ぎるよ、ここは私に任せて。
 私は妹の鈴木月奈と申します、これからは仕事として話をさせてください。
 タカラブネファミリーの利益になるように、条件を決めさせてください」

★★★★★★

 作者です。

 作品を読んでいただきありがとうございます。

 作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。

 作品のお気に入り登録をお願いします。

 <(_ _)>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

おばけブタのアート

モモンとパパン
児童書・童話
おばけのブタのアートはいろんなものに変身をしながら、イギリスへ 向かっていました。ただ遊びに行くのかと思いきや、しっかりした 目的がありました。

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

処理中です...