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3章

63話

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「摂政殿下、無事に戻ることができました」

「よく無事に戻りました、ハンザ公爵。
 それにマイヤー王国では大活躍だったそうですね。
 私も鼻が高いです」

「恐れ入ります、摂政殿下。
 私の武功など大したことはありません。
 それよりも義弟のメイソン殿の武功が群を抜いておられます。
 マイヤー王国でも高く評価されておられます」

 ハンザが無事に戻ってくれました。
 ドレイク王国義勇軍の間者を使い、敗亡の危機を回避してくれたようです。
 もっとも一番の武功は圧倒的にメイソン殿だったようですが、彼はもうマイヤー王国に婿入りしています。
 ホワイト王国が褒賞すべき存在ではありません。
 ドレイク王国義勇軍も、傭兵は金銭で褒賞すれば済みます。
 ホワイト王国が褒賞すべき存在は、ハンザ公爵と仕官目当てのドレイク王国貴族士族の部屋住みです。

「オンギャァ、オンギャァ、オンギャァ、オンギャァ」

「おお、アーサー殿下が泣いておられます。
 私のことはいいので、アーサー殿下を抱いてあげてください」

「まあ、呼び捨ててくださらないと困ります。
 父親が息子に遠慮していては帝王学を伝えられません」

「え?
 それでは!」

「今回の戦いの褒美というのはおかしいですが、ハンザ公爵はホワイト王国の貴族士族の疑念を自力で払拭してくれました。
 あの時仕方なく離婚しましたが、復縁いたしましょう」

「ありがとうございます、摂政殿下」

 私とハンザは復縁しました。
 大半の貴族士族は心から祝福してくれました。
 マイヤー王国での武功が大きかったのと、アーサーの誕生が風向きを変えましたが、何よりドレイク王国のオレイク陛下の英断が全てでした。
 ホワイト王国でのオレイク陛下の評判は圧倒的です。

 ハンザとの夫婦仲は以前よりも親密になったと思います。
 完全な政略結婚ではありますが、国を護るためにハンザが他国に赴いてまで戦ってくれたこと、アーサーが生まれたことで、ある程度信頼できるようになったのが大きかったです。

 父王陛下が国境線で睨みを効かせてくださっているので、ゲラン王国はマイヤー王国に全軍を投入することができず、メイソン殿からは対陣が楽になったと御礼の手紙が届きました。
 同時に妻を頼むという願い事も書かれていました。
 メイソン殿が幸せになっているようで、少し心が軽くなりました。

 ゲラン王国と戦端を開くことはありませんでしたので、父王陛下の目をかいくぐってという体裁を作って、密貿易が再開されました。
 何かあった時に父王陛下が批判されないように、間に何人も挟んで、商人が豊かになることで国が富めばいいという方針で、密貿易を再開させました。
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