侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

文字の大きさ
上 下
62 / 69
3章

61話メイソン視点

しおりを挟む
 ゲラン王国の猛攻は今までの比ではない。
 不退転決意だと言えるほど、損害を無視した攻撃を繰り返す。
 開戦後少しずつ増築新築した出城出丸はとうに放棄した。
 開戦時に主城だったところも奪われた。
 今は開戦時からの予備城に籠って堅守を心掛けているが、限界がある。
 せめて、一時的にでもゲラン王国も鋭鋒を弱らせないといけない。

「ハンザ殿。
 以前の話ですが、命懸けで汚名返上しませんか?」

「はい、任せてください。
 どれほど危険な役目でも、成功して生きて帰ってきます」

「では、秘密の抜け道を使って敵の後方を突いてもらいます。
 昔からある抜け道で、本城を撤退した後で後方の城に籠りつつ、本城に入った敵を袋の鼠にするための切り札です。
 敵の大将を討ち取り、壊滅させるための道でした。
 ですが今回は別の作戦に使ってもらいます」

「どう言う事ですか?」

「今回は戦力差が大きすぎます。
 敵の後方に回っても、大将を探し出して確実に討つのは難しいでしょう。
 そこで敵の本拠を奇襲してもらいたいのです」

「ゲラン王国の王都を落とせと言われるのですか?!」

「落とす必要はありません。
 奇襲して放火してもらえればいいのです。
 ゲラン王国の王都が焼き払われたと知れば、先の戦いで大損害を被ったズダレフ王国が脱落するかもしれません。
 ホワイト王国が開戦して攻め込んでくれるかもしれません。
 何より正面から戦うよりも、こちらの損害が少なくて済みます。
 もし万が一ゲラン王国の王都が警戒していたとしても、ハンザ殿が遊撃して各地を襲ってくれれば、ゲラン王国軍は多くの兵力を裂いて分派しなければいけないでしょう」

「なるほど!
 それならば我々も全滅する事無く手柄を立てる事ができますね!」

 ハンザ殿が諸手をあげて賛成してくれます。
 本気で信じているようなら愚かですが、謀略と理解して上で演技してくれているのなら、なかなかの役者です。
 抜け穴など既に完全に封鎖しています。
 これだけ戦力差があったら、抜け道を奪われたら此方が滅びます。
 抜け道の争奪戦で負けるのは自明の理です。

 それよりは、抜け道があると間者に思わせて、ゲラン王国軍の首脳陣に伝えさせる方が、こちらに何の損害もなく有利になります。
 完全に信じてくれたら、抑えの兵を残して主力は後方に撤退してくれるでしょう。
 必死で抜け穴を探すはずです。
 王都守備のために軍の一部を撤退させてくれるかもしれません。
 地方守備のために、さらに軍を分派してくれれば御の字です。
 さて、どうなることでしょうか?
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

聖なる巫女の条件は、私欲で変えられませんので

三谷朱花
恋愛
グラフィ・ベルガット公爵令嬢は、カムシャ国で代々巫女を輩出しているベルガット家の次期巫女だ。代々その巫女は、長女であることが通例で、その下の妹たちが巫女となることはなかった……はずだった。 ※アルファポリスのみの公開です。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

自ら魔力を枯渇させた深窓の令嬢は今度こそ幸せになる

下菊みこと
恋愛
タイトルの通り。 小説家になろう様でも投稿しています。

私との婚約を破棄して、妹と結婚……? 考え直してください。絶対後悔しますよ?

冬吹せいら
恋愛
伯爵令嬢のミュシー・モナードは、侯爵令息のギルガム・フレッダオと婚約していた。 しかしある日、ギルガムに突然、婚約破棄を告げられる。 理由は……。妹の、ヒーナ・モナードに惚れてしまったからだという。 ストレートすぎる理由に呆れ、こんなことで婚約破棄をすることはできないだろうと思っていたミュシーだったが、なんと、その日のうちに、ヒーナが聖女として目覚めてしまう。 ヒーナが、聖女となったことで、両親は、ミュシーではなく、ヒーナをギルガムの妻とすることに決めた。 よって、婚約破棄が成立してしまい、ヒーナとギルガムは、結ばれることになった。 「絶対にダメです……。だって……」 ミュシーの意見は無視され、二人は関係を育んでいくが……?

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

処理中です...