60 / 69
3章
59話メイソン視点
しおりを挟む
ハンザ殿が随分と焦っています。
まあ今の状況では仕方ないですね。
以前の私なら、ハンザ殿を羨ましく妬ましく思っていたでしょう。
アルフィン殿下と結婚できて、実質王配となっていたのですから。
でも今の私は、自分でも意外なほど冷静です。
妻を迎え、いえ、婿入りできたというほうが正確でしょうか?
それが国を出るときに考えていた状況と違って、とても幸せな結婚生活だったから、心がとても満たされています。
まあ心配ではあります。
妻が側にいない、抱きしめ口づけできないことは、不満でもあります。
ですが妻を護っているという実感があります。
毎日のように妻からの手紙が届きます。
ホワイト王国に疎開して、アルフィン殿下に手厚く保護されていると確信できています。
ですが、ハンザ殿が率いてきたドレイク王国義勇軍には困ります。
いえ、むしろ邪魔ですね。
どれほど数がいても、烏合の衆では役に立ちません。
まあ、籠城戦ならば少しは役に立ちますが、野戦では全く使えません。
恐怖に駆られて勝負どころで逃げ出したりしたら、恐怖に耐えて踏ん張ってくれている将兵の根性が切れてしまい、友崩れや裏崩れを起こしてしまいます。
ハンザ殿が謎かけしたように、ドレイク王国義勇軍に入り込んでいる間者を利用するという方法もありますが、確実に有効的に使えるとは限りません。
それに使いどころも難しいです。
籠城戦に徹している場合は、間者を利用する方法は限られています。
敵が十万を超える大軍を投入して、乾坤一擲の勝負をかけた時くらいです。
「敵です!
敵の大軍が押し寄せています!」
「数はどれくらいだ?」
「正確な数は分かりません。
ですが事前の情報と土埃を考えれば、一万の騎馬軍団が三つは来襲してきます」
やれやれ、余計なことを考えたから敵が押し寄せてきたのかもしれませんね。
以前からこの城を見張り間断なく攻撃していた敵軍が三万。
それに加えて最低三万ですか、いえ、勝負を賭けてきたのなら八万でしょう。
謀略を駆使して千を万に偽装することは可能です。
そして後方の部隊を油断させて、迂回奇襲を仕掛けるのは常套手段です。
ですがこの一帯に関しては不可能です。
断崖絶壁の山脈が横たわり、その間にある隘路だけが侵攻路です。
我々に隠れて間道を創り出している可能性はとても低いです。
そんな事をしても将兵を疲弊させるだけです。
それくらいなら、輸送部隊を整えて大迂回した方が勝ち目があります。
問題はゲラン王国が方針変更してきた原因です。
ゲラン王国内に問題が起こったのなら、犠牲を覚悟で、暗殺や破壊活動が得意な工作部隊を投入すべきでしょう。
ホワイト王国を基軸にした国際関係の変化なら、それに応じて同盟関係を再構築する必要があります。
アルフィン様とハンザ殿の離婚が、ここにきて大きな影響を与えたのでしょうか?
まあ今の状況では仕方ないですね。
以前の私なら、ハンザ殿を羨ましく妬ましく思っていたでしょう。
アルフィン殿下と結婚できて、実質王配となっていたのですから。
でも今の私は、自分でも意外なほど冷静です。
妻を迎え、いえ、婿入りできたというほうが正確でしょうか?
それが国を出るときに考えていた状況と違って、とても幸せな結婚生活だったから、心がとても満たされています。
まあ心配ではあります。
妻が側にいない、抱きしめ口づけできないことは、不満でもあります。
ですが妻を護っているという実感があります。
毎日のように妻からの手紙が届きます。
ホワイト王国に疎開して、アルフィン殿下に手厚く保護されていると確信できています。
ですが、ハンザ殿が率いてきたドレイク王国義勇軍には困ります。
いえ、むしろ邪魔ですね。
どれほど数がいても、烏合の衆では役に立ちません。
まあ、籠城戦ならば少しは役に立ちますが、野戦では全く使えません。
恐怖に駆られて勝負どころで逃げ出したりしたら、恐怖に耐えて踏ん張ってくれている将兵の根性が切れてしまい、友崩れや裏崩れを起こしてしまいます。
ハンザ殿が謎かけしたように、ドレイク王国義勇軍に入り込んでいる間者を利用するという方法もありますが、確実に有効的に使えるとは限りません。
それに使いどころも難しいです。
籠城戦に徹している場合は、間者を利用する方法は限られています。
敵が十万を超える大軍を投入して、乾坤一擲の勝負をかけた時くらいです。
「敵です!
敵の大軍が押し寄せています!」
「数はどれくらいだ?」
「正確な数は分かりません。
ですが事前の情報と土埃を考えれば、一万の騎馬軍団が三つは来襲してきます」
やれやれ、余計なことを考えたから敵が押し寄せてきたのかもしれませんね。
以前からこの城を見張り間断なく攻撃していた敵軍が三万。
それに加えて最低三万ですか、いえ、勝負を賭けてきたのなら八万でしょう。
謀略を駆使して千を万に偽装することは可能です。
そして後方の部隊を油断させて、迂回奇襲を仕掛けるのは常套手段です。
ですがこの一帯に関しては不可能です。
断崖絶壁の山脈が横たわり、その間にある隘路だけが侵攻路です。
我々に隠れて間道を創り出している可能性はとても低いです。
そんな事をしても将兵を疲弊させるだけです。
それくらいなら、輸送部隊を整えて大迂回した方が勝ち目があります。
問題はゲラン王国が方針変更してきた原因です。
ゲラン王国内に問題が起こったのなら、犠牲を覚悟で、暗殺や破壊活動が得意な工作部隊を投入すべきでしょう。
ホワイト王国を基軸にした国際関係の変化なら、それに応じて同盟関係を再構築する必要があります。
アルフィン様とハンザ殿の離婚が、ここにきて大きな影響を与えたのでしょうか?
0
お気に入りに追加
1,886
あなたにおすすめの小説

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。

離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。
ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。
というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。
そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。
周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。
2022/10/31
第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。
応援ありがとうございました!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

異世界の赤髪騎士殿、私をじゃじゃ馬と呼ばないで
牡丹
恋愛
歳より若く見える主婦が主人公。
日本庭園で濃霧の中を進むと見知らぬ王城の中庭だった。
いきなり不審者だと騎士に殺されそうに。
迷い込んだ異世界の文化や常識の違いに戸惑ってばかり。
元の世界に帰れない。孤独に押しつぶされそうになって、1人寂しく泣いています。
主人公は元の世界へ帰れるのかな?
この話の続きは独立させています。
「異世界の赤髪騎士殿は、じゃじゃ馬な妻を追いかける」
読んでいただければ嬉しいです。
このお話は題名や主人公の名前などアレンジして「小説家になろう」にも投稿しています。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m

【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。
桧山 紗綺
恋愛
子爵家の長男として生まれた主人公は幼い頃から家を出て、いずれ婿入りする男爵家で育てられた。婚約者とも穏やかで良好な関係を築いている。
それが綻んだのは学園へ入学して二年目のこと。
「婚約を破棄するわ」
ある日突然婚約者から婚約の解消を告げられる。婚約者の隣には別の男子生徒。
しかもすでに双方の親の間で話は済み婚約は解消されていると。
理解が追いつく前に婚約者は立ち去っていった。
一つ年下の婚約者とは学園に入学してから手紙のやり取りのみで、それでも休暇には帰って一緒に過ごした。
婚約者も入学してきた今年は去年の反省から友人付き合いを抑え自分を優先してほしいと言った婚約者と二人で過ごす時間を多く取るようにしていたのに。
それが段々減ってきたかと思えばそういうことかと乾いた笑いが落ちる。
恋のような熱烈な想いはなくとも、将来共に歩む相手、長い時間共に暮らした家族として大切に思っていたのに……。
そう思っていたのは自分だけで、『いらない』の一言で切り捨てられる存在だったのだ。
いずれ男爵家を継ぐからと男爵が学費を出して通わせてもらっていた学園。
来期からはそうでないと気づき青褪める。
婚約解消に伴う慰謝料で残り一年通えないか、両親に援助を得られないかと相談するが幼い頃から離れて育った主人公に家族は冷淡で――。
絶望する主人公を救ったのは学園で得た友人だった。
◇◇
幼い頃からの婚約者やその家から捨てられ、さらに実家の家族からも疎まれていたことを知り絶望する主人公が、友人やその家族に助けられて前に進んだり、贋金事件を追ったり可愛らしいヒロインとの切ない恋に身を焦がしたりするお話です。
基本は男性主人公の視点でお話が進みます。
◇◇
第16回恋愛小説大賞にエントリーしてました。
呼んでくださる方、応援してくださる方、感想なども皆様ありがとうございます。とても励まされます!
本編完結しました!
皆様のおかげです、ありがとうございます!
ようやく番外編の更新をはじめました。お待たせしました!
◆番外編も更新終わりました、見てくださった皆様ありがとうございます!!

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる