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3章

56話

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「摂政殿下。
 私にもチャンスが巡って来たのでしょうか?」

「さてどうでしょうか?
 今は激動の時代です。
 私も色々と考えなければいけません
 イルマンド様の努力次第ではありませんか」

 イルマンドが積極的に迫ってきますが、隙を見せる訳には参りません。
 尻軽という評判を受けてしまったら、私個人の問題ではすみません。
 王家王国の信頼にも関わります。
 ですから離婚したハンザの側近にも側にいてもらっています。
 それでもイルマンドは遠慮しません。
 彼にしても将来王配になれるかもしれない大チャンスです。
 私の腹の中の子を殺せば、自分の子供が王になる可能性が高いのです。
 少々の邪魔は、ありとあらゆる手段使ってはねのけています。

「いっそドレイク王国と絶縁して、ミルドレッド王国との縁を強く結びませんか?
 率直に申し上げる。
 私と結婚してくれませんか?
 どうでしょうか、殿下」

「それはファルド陛下も御承知の話ですか?
 そうであれば真剣に検討しますが、イルマンド様の独断であれば、聞かなかったことにします。
 どうなのですか?」

「申し訳ありません。
 殿下をお慕いするあまり、独断専行してしまいました。
 ですが殿下が私の気持ちに応えてくださるのなら、命懸けでファルド陛下を説得して見せます。
 どうか我が想いを分かってください」

 やれやれ。
 私も甘く見られたモノですね。
 ハンザがいなくなって、肌恋しくなっているとでも思ったのでしょうか。
 もう少し真面な能力を持っていると思ったのですが、期待外れですね。
 それとも色と欲に狂ってしまったのでしょうか?
 上手く利用することも可能でしょうが、今は評判の方が大切です。

「それは無理ですね。
 私は摂政を務める王女で次期女王です。
 色恋で配偶者を決めたりはしません。
 それはハンザに対する処置で理解できますよね?
 イルマンド様が私の配偶者の地位を得たいと申されるのなら、私ではなくホワイト王家とホワイト王国に利益を持ってきてください。
 ハンザと再婚するよりも、いえ、他の誰と結婚するよりも大きな利益を、ホワイト王家とホワイト王国に持ってきてください」

「私がホワイト王家とホワイト王国に利益を与えたら、結婚して下さるのですか?
 約束して下さいますか?」

「ええ、約束します。
 でもそれはホワイト王家ホワイト王国だけが利益を得る訳ではありませんよ。
 イルマンド様の利益でもあるのですよ。
 王家王国に揺るぎない利益を与えたイルマンド様は、ハンザと違って力ある配偶者になれるのです。
 当然私の後に王位を継ぐのは、私とイルマンド様の間に生まれた子供になるでしょう」

「その言葉、約束してくださいますね!」

「私は約束しません。
 摂政で次期女王ですから。
 願い期待するだけです」
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