侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

文字の大きさ
上 下
51 / 69
3章

50話

しおりを挟む
「皆の意見は分かりました。
 昨日ハンザ公爵の話も聞きました。
 熟考の上で決断しました。
 まだ開戦はしません」

「「「「「おおおおおおお!」」」」」

 王城で一番広い舞踏会場がどよめいています。
 今日はこの場所に重臣・貴族・士族・有力陪臣が集まり、この国の未来を決める決定を伝えたのです。
 臣下の位置で聞いていたハンザが、落胆の眼を向けています。
 今日は私が摂政として国策を伝える場なので、ハンザは王配ですが臣下の位置に降りてもらっています。

「ですが全く開戦を意識していない訳ではありません。
 ですから境目の城には戦力を増強します。
 デュラン。
 訓練の終わった労働者を兵士として最前線に送ってください。
 戦闘労働者として、境目の城を増強しつつ、ゲラン王国軍をできる限り引き付けて下さい。
 ですが絶対にこちらから攻め込んではいけません。
 開戦の責任はゲラン王国に負わせないといけません。
 やれますか?
 少しでも跳ねっかえりが国境を越える恐れがあるのなら、きっぱりとここで断って下さい」

「率直に申し上げます。
 貴族士族、それに傭兵は、どうしても手柄や金品を欲します。
 絶対に貴族士族傭兵を加えず、私の鍛えた労働者だけを率いていいと言って下さるのなら、境目の城を増強しつつ、ゲラン王国軍を引き付けて御覧に入れます」

「分かりました。
 確かにその通りですね。
 貴族士族傭兵が手柄と金品を求めるのは、我が国に入ってからの行動を見れば分かります。
 大将軍たるデュランの命令に従わない前例を作る訳には参りません。
 哀しい事ですが、今の我が国には彼らを厳しく罰する力がありません」

 ハンザとトマスが私の視線を外しました。
 ドレイク王国から来た傭兵と貴族士族の部屋住みが、王都で民に乱暴狼藉を働いているのに、国難ゆえに厳しく罰せられない事を知っているのです。
 私からハンザとトマスに取り締まるように命じているのに、犯罪が一向に減らない事を知っているのです。

 だからこのような茶番を演じているのです。
 恐らく多くの貴族士族が気付いています。
 私がハンザとトマスを不満に思っている事を。
 だから更なる茶番を演じて見せましょう。

「デュラン大将軍。
 直接ゲラン王国と開戦するのは我が国に不利ですが、ミルドレッド王国を通過して大山脈を越え、山賊の振りをしてズダレフ王国を略奪する策をどう思いますか?
 戦いたくて仕方のない、体力と性欲のありあまった義勇兵の方々にやってもらうには、丁度いい作戦だと思うのですか?」

「私は大将軍としてよい策だと思うのですが、義勇兵の方々が怖気づくと思います。
 彼らは抵抗できない庶民は襲えても、剣を持った敵と戦う事はできませんから」
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

聖なる巫女の条件は、私欲で変えられませんので

三谷朱花
恋愛
グラフィ・ベルガット公爵令嬢は、カムシャ国で代々巫女を輩出しているベルガット家の次期巫女だ。代々その巫女は、長女であることが通例で、その下の妹たちが巫女となることはなかった……はずだった。 ※アルファポリスのみの公開です。

妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています

今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。 それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。 そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。 当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。 一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

処理中です...