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3章

50話

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「皆の意見は分かりました。
 昨日ハンザ公爵の話も聞きました。
 熟考の上で決断しました。
 まだ開戦はしません」

「「「「「おおおおおおお!」」」」」

 王城で一番広い舞踏会場がどよめいています。
 今日はこの場所に重臣・貴族・士族・有力陪臣が集まり、この国の未来を決める決定を伝えたのです。
 臣下の位置で聞いていたハンザが、落胆の眼を向けています。
 今日は私が摂政として国策を伝える場なので、ハンザは王配ですが臣下の位置に降りてもらっています。

「ですが全く開戦を意識していない訳ではありません。
 ですから境目の城には戦力を増強します。
 デュラン。
 訓練の終わった労働者を兵士として最前線に送ってください。
 戦闘労働者として、境目の城を増強しつつ、ゲラン王国軍をできる限り引き付けて下さい。
 ですが絶対にこちらから攻め込んではいけません。
 開戦の責任はゲラン王国に負わせないといけません。
 やれますか?
 少しでも跳ねっかえりが国境を越える恐れがあるのなら、きっぱりとここで断って下さい」

「率直に申し上げます。
 貴族士族、それに傭兵は、どうしても手柄や金品を欲します。
 絶対に貴族士族傭兵を加えず、私の鍛えた労働者だけを率いていいと言って下さるのなら、境目の城を増強しつつ、ゲラン王国軍を引き付けて御覧に入れます」

「分かりました。
 確かにその通りですね。
 貴族士族傭兵が手柄と金品を求めるのは、我が国に入ってからの行動を見れば分かります。
 大将軍たるデュランの命令に従わない前例を作る訳には参りません。
 哀しい事ですが、今の我が国には彼らを厳しく罰する力がありません」

 ハンザとトマスが私の視線を外しました。
 ドレイク王国から来た傭兵と貴族士族の部屋住みが、王都で民に乱暴狼藉を働いているのに、国難ゆえに厳しく罰せられない事を知っているのです。
 私からハンザとトマスに取り締まるように命じているのに、犯罪が一向に減らない事を知っているのです。

 だからこのような茶番を演じているのです。
 恐らく多くの貴族士族が気付いています。
 私がハンザとトマスを不満に思っている事を。
 だから更なる茶番を演じて見せましょう。

「デュラン大将軍。
 直接ゲラン王国と開戦するのは我が国に不利ですが、ミルドレッド王国を通過して大山脈を越え、山賊の振りをしてズダレフ王国を略奪する策をどう思いますか?
 戦いたくて仕方のない、体力と性欲のありあまった義勇兵の方々にやってもらうには、丁度いい作戦だと思うのですか?」

「私は大将軍としてよい策だと思うのですが、義勇兵の方々が怖気づくと思います。
 彼らは抵抗できない庶民は襲えても、剣を持った敵と戦う事はできませんから」
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