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3章

47話

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「は!
 私がマイヤーを出た時点の死者約一万。
 傷病者三千でございます」

 おおおおおお!

 死傷者と捕虜の数を考えれば、十分な勝利と言えます。
 二カ国の攻め込まれていなければの話ですが。
 我が国とミルドレッド王国が攻め込めば、マイヤー王国は一息つけるでしょう。
 ですが、我が国やミルドレッド王国から見れば、不十分な戦果です。
 
「摂政殿下。
 私が義勇軍を率いてゲラン王国に攻め込みたいと思います。
 国王陛下に開戦の御裁可を頂けないでしょうか?」

 なんと!
 ハンザが開戦の許可を求めて来ましたか。
 どう言う思惑なのでしょうか?
 ドレイク王国の指示なのでしょうか?

「目的は何ですか?
 正直に答えて下さい」

「母国ドレイクからの指示です。
 今が勝利の好機と判断したのでしょう。
 いえ、敗戦や亡国を回避するなら、今動くべきとの判断でしょう。
 ですがそれだけではありません。
 私自身のためでもあります」

 ドレイク王国の目的はそうでしょうね。
 私でもそう判断するでしょう。
 今ホワイト王国が参戦すれば、五カ国が泥沼の損耗戦となる可能性が高い。
 そうなれば、最終的にドレイク王国が五カ国を併合することも可能です。
 ホワイト王国から見れば、もう少し三カ国が潰し合い疲弊してから、戦力差を有利な状態にしてから参戦したい所です。
 運がよければ、ホワイト王国が三カ国を併合する事も不可能ではありません。
 まあ、とんでもなく低い可能性です。
 圧倒的に可能性が高いのは、先にゲラン王国がマイヤー王国を攻め滅ぼす事です。
 しかし気になるのはハンザ自身の望みですね。

「それで、ハンザ自身の望みと言うのは何ですか?」

「摂政殿下が身籠って下さった、私の子供の将来でございます。
 その子の安全と栄華の為には、私が功名を上げなければなりません。
 本国の力だけでなく、私自身の力を示さなければ、殿下の王配として貴族士族に認めてもらえないでしょう」

 そんな事はないと思いますよ。
 もともとドレイク王国から利益を得ていた南部の貴族は、ドレイク王国の影響力が強いですからね。
 現国王オレイクの甥であるハンザの影響力は強いです。
 ですがそれはあくまでもドレイク王家ドレイク王国の力が強いのであって、ハンザ個人の力でない事は確かです。
 ハンザがオレイクと対等の力を得たいと考えているのなら、功名が欲しいと思うのは当然のことです。
 それに、オレイクの子供たちよりは低いですが、ハンザはドレイク王国の王位継承権も持っています。
 ハンザが王配であるホワイト王国が比較的強力な大国になれば、ハンザにドレイク王国を継承させて、平和裏に二カ国を併合させようという動きが起こる可能性もありますね。
 ハンザの代では難しくても、私とハンザの子供なら、可能性が高くなるかもしれません。
 ここは勝負に出るべきでしょうか?
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