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3章

46話

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「申し上げます!
 マイヤー王国がズダレフ王国軍を撃退しました!」

「おおおおお!」

 愚かな事。
 局地戦の単なる勝ち負けで国の存亡が決まる訳ではありません。
 戦争に行きつくまでの準備。
 そして勝ち方負け方が大切なのです。
 例え局地戦で負けることがあっても、最後の勝利に結びつけばいいのです。

「静まりなさい!
 撃退したのは重畳。
 ですが損害が問題です。
 損害が多ければ、ゲラン王国の侵攻を止められなくなります」

 どよめいていた謁見の間が水を打ったように静まりました。

「ズダレフ王国の正確な死傷者は分かりません。
 ですが合戦場に残された遺体の数と捕虜の数は分かっております」

 伝令が冷静に答えてくれます。
 流石メイソン王子が選んだ伝令です。

「いくらですか?」

「死者およそ二万。
 捕虜五千です」

 微妙な数ですね。
 普通に考えれば、国の存亡にかかわるくらいの大損害です。
 なんといっても遊牧民が一家の大黒柱を失ったのです。
 後々の遊牧にも困るでしょう。

 ですが家族単位ではなく国家規模で考え、今回の戦争だけで考えれば、残った七万五千があれば、マイヤー王国への再侵攻が可能です。
 マイヤー王国はズダレフ王国方面の軍を全面撤退させることは出来ません。

 ミルドレッド王国もこの程度の損害では、山脈を越えてズダレフ王国に侵攻する決断は下せないでしょう。
 それに、一番の問題はマイヤー王国の損害です。

「マイヤー王国の損害を報告しなさい。
 先の同盟条件に、正確な損害を報告することがあったはずです。
 ここで嘘の報告があれば、メイソンに引き上げ命令をださねばなりません」

「おおおおお!」

 さて、貴族達のどよめきは、賛成なのか反対なのか?
 どちらにしても、もう後戻りはできません。
 ゲラン王国との戦争は避けられません。
 ですが、マイヤー王国がどれくらいの損害を受けているのか?
 マイヤー王国が損害を正確に報告してくれるのか?
 それによって戦い方も最終目的も変わってきます。

「聞き取りを行った現場指揮官による誤差があると、グレイソン王弟殿下から伝言がございました。
 傷病兵の数にも誤差がございます。
 重傷者はこれから死者となるでしょう。
 軽傷者は、無理をすれば直ぐに参戦可能です。
 それを前提に、多少の間違いは黙認願いたいとの事でございます」

 グレイソン王弟殿下は流石に慎重ですね。
 これからの私の判断で、マイヤー王国が滅ぶという事を理解しているのでしょう。
 だからこそ、今回の船便に多くの王女や貴族令嬢が乗船していたのですね。
 これからマイヤー王国が送って来る船には、多くの女性が乗って来るでしょうね。

「分かりました。
 多少の誤差は認めます。
 いったいどれくらいの損害を受けたのですか⁈」
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