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3章

44話メイソン視点

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「必ず生きてお戻りください。
 ずっと、何があっても、ずっとお待ちしております」

「ああ、必ず帰る。
 だからこそ、危険を冒して王都で待つのは止めてくれ。
 港に待機して、危険を感じたらホワイト王国に逃げてくれ。
 あの国なら安全だ。
 アルフィン摂政殿下なら、マリアンを必ず護ってくれる。
 だから約束してくれ。
 必ず逃げると」

「でも……」

「大丈夫だ。
 クリストファ国王陛下にも、アルフィン摂政殿下にも、承諾して頂いている。
 義兄上達の妻子も一緒に逃げる事になっている。
 マリアンは少しでも早く、港に移動する準備をしてくれればいい」

「はい。
 メイソン様のお言葉を信じて、いつまでもお待ちいたします」

 僥倖としか言えなかった。
 兄の婚約者だったアルフィン摂政殿下と結ばれる事など、最初からありえない事だったのだ。
 混沌とする国際情勢の中で、わずかな期待はあったが、あくまでもそれは奇跡的な偶然と駆け引きの上で成り立つ話だった。

 そしてそんな奇跡は起きなかった。
 順当と言えば語弊があるが、最も危険な国に、最も危険な役目を与えられ、アルフィン摂政殿下の義弟として送り込まれた。
 一度も会った事のない、私と同じように政略によって王家の養女に迎えられた、運の悪い娘の婿として。

 僥倖と言うのは、その娘の性格がよかったことです。
 容姿は飛び抜けた美人ではありませんが、十人並に美しいです。
 十人並に美しいとは表現がおかしいと言われるかもしれませんが、私には間違いなくそうなのです。
 単に見た目だけなら普通でしょうが、内面から光る美しさがあるのです。

 第二王子として、物心ついた時から社交界で生きてきた私には、表面だけ美しく装い、内面がどす黒く汚れた令嬢を掃いて捨てるほど見てきました。
 罠に嵌められ利用されないように、人の本質を見抜けるようになりたいと、常に自分を磨いてきました。
 だからこそ、愚かな兄とは違って、アルフィン摂政殿下の容姿だけではなく、光り輝く本質的な美しさが分かったのです。

 マリアンの美しさは、アルフィン摂政殿下のように、まぶしいほどの光を放っている訳ではあんりません。
 あの美しさは、自分に自信がなければ、直視するのが辛くなる。
 そんな輝きなのです。
 ですがマリアンが放つ光は、ずっと見ていられるのです。
 優しく包み込んでくれるような光なのです。
 なにがなんでも護りたい。
 全てを投げ捨てて、命を賭けて護りたくなる光なのです。

 ですがそうは言っても、そう簡単に死ねません。
 私が死ねばマリアンが哀しむ。
 今は本気でそう信ずる事ができます。
 だから、絶対に死ねないのです!

「急いで壊れた柵を元に戻せ!
 埋められた濠の土を掻き出せ!
 土塁を固めろ!
 一人も死ぬんじゃないぞ!
 後退と堅守の命令を聞き逃すな!
 必ず安全な場所で守るんだ!」

「「「「「おう!」」」」」
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