侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

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3章

42話メイソン視点

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「殿下。
 部隊の配置が終りました」

「分かった。
 決してこちらから攻撃するな。
 開戦の口実を与えるんじゃないぞ」

「了解しました」

 まあ、何の意味もないでしょう。
 ゲラン王国とズダレフ王国は、難癖をつけでも開戦したいのです。
 恐らく、先にマイヤー王国から攻撃されたと、自作自演する事でしょう。
 私だって、追い込まれたらそれくらいの事はします。
 ゲラン王国も、領土が海に通じていれば、これほど無理はしなかったでしょう。
 絶壁山脈がなければ、強力な魔獣が住んでいなければ、海に辿り着けるのに。
 ズダレフ王国も同じです。
 領土に海があれば、それが全てです。
 我がベイリー王家も、直轄地に海があったら、あのような……

「土埃が舞っています!
 恐らくゲラン王国の騎馬隊です」

 さて、多少でも言い訳をしてくるでしょうか?
 それとも言い訳せずに、侵略だと断言するでしょうか?
 
「そこに布陣しているのはマイヤー王国の将か!」

 やれやれ、茶番に付き合わされるのですね。

「そうだ!
 ホワイト王国の王子で、ミスラ第五王女の婿となり、伯爵位を賜ったメイソン・ベイリー・ホワイトだ。
 貴君こそ何者だ!
 兵を率いて国境を侵すとは、我が国を侵略するのか!」

 ギョッとしているな。
 まあ当然の反応だろう。
 最前線にホワイト王国から送られた人質がいるとは、普通は思わないからな。
 それに、私はベイリーとホワイトの両方の姓を名乗った。
 その私を攻撃する事は、ベイリー家とホワイト家の両方と敵対する事になる。
 ホワイト家はゲラン王国の南に国境を接しているから、マイヤー王国と開戦するなら、背後から攻撃されたくない仮想敵国になる。
 ベイリー家はホワイト家に国を奪われた没落王家だが、それなりに長く国家として繁栄していたから、近隣諸国と血縁関係にある。
 どちらを考えても、ゲラン王国の現場指揮官クラスが、本国の承認もなしに勝手に攻撃できる相手ではない。

「侵略ではない!
 貴国の軍隊が、無道にも我が国に侵略して村を襲い、村人を皆殺しにして略奪を欲しい侭にしたのだ。
 我らはその理非を正すべく、仕方なく国境を越えた義軍だ。
 恥を知るならば、略奪に加担した将兵を引き渡せ」

「笑止!
 侵略の口実を作るために、自国の村民を皆殺しにして略奪したな!
 その所業、悪魔のごとし。
 国を安んじ民を守護すべき騎士として、軍将兵として、恥知らずにも程がある!
 天におわす神々、誇り高く戦い散っていった英霊が、全てを見ておられる。
 貴君には、神々が怒り、英霊が嘆き哀しいでいる姿が見えぬのか!」

 敵の指揮官が屈辱で真っ赤になっている。
 付き従う側近の大半は、痛い所を突かれたことをごまかそうと、真っ赤になって喚き散らしているが、少数だが、恥を知り真っ青になって顔を背ける者もいる。

「黙れ、黙れ、黙れ!
 侵略者を許すな!
 皆殺しにしろ!」
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