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2章

39話

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「摂政殿下に多くの王族が魅了されております。
 本国の意向を無視してでも、殿下を得たいと思っている方も多くおられます。
 それを利用されましたら、有利な条件で条約を結ぶ事も可能でございます」

 ビリーのいう事は真実でしょう。
 客観的に見て、私は美人と言えるでしょう。
 王位に就くのも間違いないでしょう。
 夫になる男性は、王配として権力を持てます。
 私が不貞を働かない限り、自分の子が次代の王になるのは間違いありません。
 戦うことなく王統を奪えるのですから、なにがなんでも婿入りしたい事でしょう。
 ホワイト王国が平和であったなら。

 ですが今は危機を迎えているのです。
 ゲラン王国が本当に侵攻してきて、捕虜になるような事になれば、恐らく処刑されてしまいます。
 本国の意向に逆らって婿入りしたら、身代金を払ってもらえません。
 事前に本国に逃げようとしても、受け入れてもらえない可能性が高いです。

「私を試すのは止めなさい。
 目先の利益の惑わされたりはしません。
 色恋に現を抜かす気もありません。
 ミルドレッド王国の真意はどこにあるのですか?」

「承りました。
 率直に申し上げます。
 ミルドレッド王国は人質を欲しております。
 陛下や殿下が見捨てる事ができない、大切な重臣や有力貴族の娘を陛下の養女として、ミルドレッド王国に嫁がせることを望んでおります」

 そうきましたか。
 一番厳しい条件ですね。
 ホワイ王家の人間ならば、国のために見殺しにする事も可能です。
 条約で便宜を図ってくれと言ってきても、見殺しにして断る事ができます。
 ですが重臣や有力貴族の娘を養女にして他国に嫁がせた場合は、簡単に願いを断れません。

 王家のために、涙を呑んで他国に嫁いでくれた娘の願いを断れば、重臣や有力貴族は王家を恨みます。
 場合によったら、王家を見限って他国と結ぶ可能性があります。
 自ら内憂外患を創り出すのと同じです。
 ですから、よほどの覚悟がなければ、重臣や有力貴族の娘を養女にして他国に嫁がせることはないのです。

「妻に迎えたい貴族を指定してきましたか?
 どの家でも構わないのですか?」

「血は遠くても構わないので、ベイリー王家につながる公女を一人。
 ペラム伯爵家の本家筋の公女を一人。
 共に王子の正室に迎えたいとの事でございます」

 なんと厳しい判断をするのでしょう。
 言え、これが当然の策ですね。
 私でも同じ策を取っていたでしょう。
 何がどう転ぶか分からない以上、ベイリー王家の血は確保しておきたいでしょうし、メイソン殿に対する人質も確保しておきたいでしょう。
 ドレイク王国の情報も欲しいし、抑止力も手に入れておきたい。
 そのためには、担当貴族のペラム伯爵家から人質が欲しい。
 そうすれば、我がホワイト王家はペラム伯爵家はもちろん、ドレイク王国にもミルドレッド王国にも強く出れなくなります。
 ですがこの条件、ペラム伯爵家とドレイク王国が受け入れてくれるかどうか……
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