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2章

35話

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「それは、ドレイク王国もゲラン王国とズダレフ王国の同盟を、危険視しているからです。
 特にゲラン王国の動向を危険視しています」

「それは、マイヤー王国を併合したゲラン王国が、我が国を併合した後で、更にドレイク王国をも併合しようとする可能性ですか?」

「はい、その通りでございます」

 確かに、まともの為政者なら、その危険性を考えておくべきです。
 マイヤー王国の半分を手に入れたゲラン王国が、今度は一時的にドレイク王国と手を結んで我が国の半分を併合する。
 ドレイク王国も我が国の半分を併合して国力を増しているでしょうが、半国分強くなったドレイク王国と、一国分強くなったゲラン王国の戦い。
 我が国に攻め込むまでの準備次第では、一気にドレイク王国まで併合する事も不可能ではないですね。
 特に最初に併合したマイヤー王国の貴族や騎士を上手く活用できれば、三カ国にまたがる大帝国を建国できますね。

「最初に併合するマイヤー王国の旧臣の扱いを見れば、ゲラン王国の最終目的が予測できそうですね」

「はい。
 オレイク王もそのように申されておられました」

 ドレイク王国の首脳陣は、少なくても私程度の能力はありそうね。
 だとしたら、我が国はどう動くべきか?
 我が国が余りに愚かな行動をすれば、ゲラン王国とマイヤー王国が争っている間か、ゲラン王国が戦争の損害を回復しない間に、ドレイク王国は我が国を攻め取ってゲラン王国に備えようとするでしょうね。
 最初にすべきは、国内の結束を固めて戦力を充実させる事。
 その上で、マイヤー王国には徹底抗戦させて、ゲラン王国の戦力を削り、戦勝後でもマイヤー王国の戦力を利用できないようにする事ね。

「分かったわ。
 トマスの話はとても参考になったわ。
 国王陛下と相談して、まずは国力の充実を図り、マイヤー王国に徹底抗戦させるように仕向けるわ」

「御役に立てたのなら幸いでございます。
 ドレイク王国の担当貴族として、あえて質問させていただきます。
 旧王家のメイソン王子と婚約されるのですか?」

「その可能性も考えるけれど、それだけではないわ。
 メイソン王子とマイヤー王国の王女に婚約してもらい、ゲラン王国領を切り取って、新たな国を建国してもらうと言う策もあるわ」

「姫様は大胆な策を考えられますね!
 姫様自身はマイヤー王国の王子を婚約者に迎えられると言う事ですか?」

「その可能性もあるし、ミルドレッド王国から迎えるという策もあるわ。
 トマスが献策してくれたように、優先順位が大切だから、あらゆる可能性をメイソン王子とミルドレッド王国とマイヤー王国に伝え、三者が納得できる条件を整えるわ」

「姫様や陛下の好悪は考慮されないのですか?」

「ええ、そんな事よりも、国を、いえ、民を護ることが最優先よ!」
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