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2章
32話
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「トマス、よく来てくれましたね。
先ほどフィンチ伯爵から率直な意見をもらいました。
トマスからも率直な意見が聞きたいのです。
単刀直入に聞きますが、ドレイク王国は私に婚約者を送り、縁を結ぶ気があるのですか?」
ペラム伯爵家の当主トマスは、ベイリー王家時代からドレイク王国の担当貴族として、長年南の国境を安定させてきた有能な貴族です。
ペラム伯爵家もフィンチ伯爵家と同じで、ベイリー王家に忠誠を尽くすというよりは、自家の繁栄と平和を願っているという事ですが、やはり油断はできません。
「姫様が単刀直入に聞かれましたので、私も単刀直入に答えさせていただきます。
ドレイク王国が姫様の婚約者に考えているのは、現国王の甥であるハンザ公爵閣下です。
姫様も直接お会いになられた事も話をされた事も御有りでしょう。
なかなかの美男子で、貴族として社交の才能も御有りです。
ですがマイヤー王国が送り込んできた、ガブリエル王子とグレイソン王弟に比べると、容姿も才気も劣ると思われます。
持参金の金額と台所領の金高も、マイヤー王国に比べれば大きく見劣りします。
問題はマイヤー王国がゲラン王国の侵攻を討ち払う事ができるかです。
姫様が討ち払えるとお考えならば、ガブリエル王子かグレイソン王弟を婿に選ばれるべきです。
マイヤー王国がゲラン王国に負けるとお考えならば、ハンザ公爵閣下かミルドレッド王国が送り込んでくる者を婿に選ぶべきでしょう」
本当に単刀直入に言ってくれました。
ハンザ公爵にだけ閣下と言う敬称をつける事で、自分がドレイク王国を支持している事も明確にしてくれています。
ですがそれをホワイト王家に忠誠を誓っていると判断するのは早計でしょう。
ホワイト王家よりもドレイク王国に近く、とても親密だと考えるべきですね。
「率直な意見参考になります。
信頼できるトマスの意見をもっと聞きたくなりました。
ですが、トマスの意見を採用すると断言はできません。
父王陛下のお考えもありますし、重臣達の意見も聞かねばなりません。
あくまで参考として聞くだけですので、気楽に答えてください。
トマスはマイヤー王国とゲラン王国のどちらが勝つと思いますか?
我が国はマイヤー王国に味方して参戦すべきだと思いますか?
それとも中立を貫くべきだと思いますか?」
トマスの顔から笑顔が消えました。
私の真意を探っているのでしょう。
私がトマスを試しているのかと、疑っているのですね。
「別にトマスを試している訳ではありませんよ。
フィンチ伯爵にも同じ質問をしました。
国の命運を分ける大問題です。
聞ける相手全員から聞いているのです」
先ほどフィンチ伯爵から率直な意見をもらいました。
トマスからも率直な意見が聞きたいのです。
単刀直入に聞きますが、ドレイク王国は私に婚約者を送り、縁を結ぶ気があるのですか?」
ペラム伯爵家の当主トマスは、ベイリー王家時代からドレイク王国の担当貴族として、長年南の国境を安定させてきた有能な貴族です。
ペラム伯爵家もフィンチ伯爵家と同じで、ベイリー王家に忠誠を尽くすというよりは、自家の繁栄と平和を願っているという事ですが、やはり油断はできません。
「姫様が単刀直入に聞かれましたので、私も単刀直入に答えさせていただきます。
ドレイク王国が姫様の婚約者に考えているのは、現国王の甥であるハンザ公爵閣下です。
姫様も直接お会いになられた事も話をされた事も御有りでしょう。
なかなかの美男子で、貴族として社交の才能も御有りです。
ですがマイヤー王国が送り込んできた、ガブリエル王子とグレイソン王弟に比べると、容姿も才気も劣ると思われます。
持参金の金額と台所領の金高も、マイヤー王国に比べれば大きく見劣りします。
問題はマイヤー王国がゲラン王国の侵攻を討ち払う事ができるかです。
姫様が討ち払えるとお考えならば、ガブリエル王子かグレイソン王弟を婿に選ばれるべきです。
マイヤー王国がゲラン王国に負けるとお考えならば、ハンザ公爵閣下かミルドレッド王国が送り込んでくる者を婿に選ぶべきでしょう」
本当に単刀直入に言ってくれました。
ハンザ公爵にだけ閣下と言う敬称をつける事で、自分がドレイク王国を支持している事も明確にしてくれています。
ですがそれをホワイト王家に忠誠を誓っていると判断するのは早計でしょう。
ホワイト王家よりもドレイク王国に近く、とても親密だと考えるべきですね。
「率直な意見参考になります。
信頼できるトマスの意見をもっと聞きたくなりました。
ですが、トマスの意見を採用すると断言はできません。
父王陛下のお考えもありますし、重臣達の意見も聞かねばなりません。
あくまで参考として聞くだけですので、気楽に答えてください。
トマスはマイヤー王国とゲラン王国のどちらが勝つと思いますか?
我が国はマイヤー王国に味方して参戦すべきだと思いますか?
それとも中立を貫くべきだと思いますか?」
トマスの顔から笑顔が消えました。
私の真意を探っているのでしょう。
私がトマスを試しているのかと、疑っているのですね。
「別にトマスを試している訳ではありませんよ。
フィンチ伯爵にも同じ質問をしました。
国の命運を分ける大問題です。
聞ける相手全員から聞いているのです」
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