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2章

30話

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「姫様。
 ライアン殿下とセオドア殿下が逆恨みしているようでございます」

 ハンザ公爵との下交渉を終えたレイスリーが、合意点と留意点を報告しながら、一番心配していた事を教えてくれました。

「刺客を送り込んできますか?
 それとも、マイヤー王国に攻め込む前に我が国に兵を送ってきますか?」

 ゲラン王国は最初に多くの手土産を持って交易を願いでてきました。
 元を取ろうと商人に悪事を働かしたのでしょう。
 最初からそのつもりだったのだと思います。
 ですがそんな事を許しては、他の国にまで悪事を許すことになってしまいます。

 そもそもマイヤー王国を攻め取ろうとして開戦の噂が流れ、国内の物価高騰を招き、不利な交易条件を認めなけければならなかったのです。
 ハッキリ言ってクリストファ国王と重臣達の失政です。
 その失政のつけを、我が国が負担しなければならない理由はありません。

 我が国に限らず、どの国だって失政に付け込んで利益を得るのです。
 その好機を逃さずゲラン王国から利を取ります。
 それを逆恨みされるいわれなどないのです。
 いわれなどないですが、隙を見せたら攻め込んできます。
 絶対に防がなければなりません。

「絶対にないとは申せませんが、国王陛下の行方を掴みかねているようで、攻め込む決断はできないと思われます」

 心の療養のために、父王陛下にはホワイト領で休んでいただいていますが、いざという時には、侯爵家時代からの精鋭を率いてもらう事になっています。
 武将達による新兵教育も、傭兵や陣狩りの戦力化も順調だと報告を受けています。
 ゲラン王国との国境線で開戦にならなくても、マイヤー王国に傭兵として送り込めば、使った費用以上に利益が出るでしょう。

「明日にも王都諸侯軍に参集命令をだしてください。
 数は少なくても、私に諸侯軍を率いる力がある所を見せつけておきたいのです」

「分かりました。
 そのように手配しておきます。
 ところで姫様。
 事がこれほど大きくなりました以上、ガブリエル殿かグレイソン殿と婚約されてはいかがでしょう?」

 レイスリーは本気で国の事を思って私に婚約を勧めているのでしょうか?
 それとも、ゲラン王国から利を得ているのでしょうか?
 ベイリー王家復権のために、私がメイソン元王子と結ばれる可能性を潰そうとしている可能性もあります。

 メイソン元王子とゲラン王家の姫を結婚させて縁を結び、ゲラン王国の力を背景に国内貴族を味方につける。
 ゲラン王国は、マイヤー王国との戦争中に我が国が攻め込んで来るのを防げる。
 私や父王陛下を、ベイリー王家派に抑えさせる。
 そう言う計画の可能性もあるのです。
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