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2章

28話

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「いや、ちゃんと読んでいますよ。
 ええ、読んでいますとも。
 ええ、まあ、なんです。
 商人は度し難い連中なのですよ。
 金のためならどのような事もやる、下劣な者なのです。
 ですが私は違います。
 決して嘘などつきません」

 ライアン王子が慌てて言い訳をしますが、何度も言葉に詰まっています。
 口にしている内容も支離滅裂というか、聞いている事と論手が違います。
 わざと論点を外そうとして上手く話しているのなら、交渉上手で頭がいいと考えられるのですが、ライアン王子は馬鹿が露呈したと言う状態ですね。

「まあ、そうですのね。
 民度と性格の問題なのですね。
 ゲラン王国の商人は金のためなら国の命令を聞かず、平気で嘘をつく。
 それに、ゲラン王国には商人に命令を聞かせる威令がないのですね。
 一方マイヤー王国の商人は、金のためであっても国の命令には背かない。
 金のために嘘をついたりしない。
 マイヤー王国には、商人に命令を聞かせる威令があると言う事なのですね」

 ライアン王子は、最初私の言葉に唖然としていたようですが、徐々に顔色が青くなり、今では真っ赤になっています。
 最初は言い訳が通じていない事に焦っていたのでしょうが、自分の事を反省するのではなく、私に怒りと憎しみにを感じたのでしょう。
 国王代理としては、国のためにもっと上手にあしらわないといけないのでしょうが、これ以上こんな下劣な奴とは同じ部屋にいるのも嫌です。

「申し訳ありません、姫様。
 我が国の商人が繰り返し罪を犯した事、伏してお詫び申し上げます。
 姫様が申されるように、我が国に威がなく、商人に好き勝手された事、恥いるばかりでございます。
 これからはこのような事がないように、商人に厳しい罰を与える事、王弟として商館長として約束させていただきます。
 ですからどうかご容赦願います」

 各国の王族大使がいる満座の席で、これ以上ライアン王子に馬鹿な事を口にさせないように、セオドア王弟が助け舟を出してきましたか、ですがタイミングが遅かったですし、口にした内容が悪いですね。

「では、セオドア殿下は商人が罪を犯した事も、お国がそれを防げなかった事も、相応しい罰を与えなかった事も、認められるのですね。
 国王代理として、確かに聞きましたよ!
 ねぇ、大使の皆様!」

 セオドア王弟が顔を引きつらせています。
 したり顔でライアン王子を助けに出てきましたが、自分で賢いと思っているほど、貴男は賢くないのです。
 自分の事を賢いと思っている馬鹿ほど扱いやすい人間はいません。
 今回の発言は完全な墓穴です。
 これからどう対応して挽回するつもりですかね?
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