侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

文字の大きさ
上 下
12 / 69
1章

11話

しおりを挟む
「王太子殿下をお助けしなさい!
 神の意志に従いなさい!
 神は王太子殿下を王に望んでいるのです!」
 なにをしているの?
 早く神の意志に従いなさい!」

 偽聖女は追い込まれているようです。
 金切り声で叫んでいます。
 冷静な判断ができないのでしょう。
 神様と言わずに神と言ってしまっています。
 偽聖女の方が神様より上位だと思い上がっているのでしょうか。

 しかし、用意周到ではあります。
 貴族の中には、衣装の下に短剣を隠していた者がいるようです。
 王家の護衛の中にも、剣を抜いて国王と正妃に向かう者がいます。
 王太子と偽聖女だけでは、ここまでの準備は不可能でしょう。
 教会が裏で動いていますね。

「貴男!
 国王陛下と正妃殿下を護りなさい!
 王家に忠誠を示す好機です!
 剣と命を捧げなさい!
 ぐずぐずしない!」

 雷に打たれたように硬直していた者たちが、私の叱咤激励を受けて、一斉に動き出しました。
 他人事と思わないように、皆が自分に言われたと思うように、八方目で騎士や貴族に視線を送ったのです。
 本気で武芸に取り組んでいてよかったです。

 私のデビュタントが殺し合いの場になるとは、想像できませんでした。
 まあ、想像出来る人間なんて、悪事を企んだ当人たちだけでしょう。
 しかし、これで私の名が歴史書に残る事になるのでしょうね。
 王太子が勝っても負けても、王太子は婚約者のデビュタントで婚約破棄を宣言し、教会の力を借りて聖女と共に謀叛を起こしたと。

 でも王太子に勝たせる訳にはいきません。
 勝つのは私です。
 ホワイト侯爵家が勝つのです。
 ああ、ああ、ああ。
 ホールが血まみれです。

 掃除が大変ですが、仕方ありません。
 その分見返りをもらわないといけません。
 予想通り、国王派と王太子派は拮抗しています。
 王太子派は、準備万端整えていたので武装していますが、人数が少ないです。
 国王派は、武装している者は少ないですが、私の檄で多くの貴族が参加しています。

「私の事はいいから、王太子と偽聖女を捕らえなさい」

「承りました」

 功名はホワイト侯爵家のものです。
 事が起こってから、直ぐに私の周りに集まった護衛が、一斉に動きました。
 皆一騎当千の騎士たちです。
 執事や給仕の服装をしていますが、本職が騎士の者や騎士見習いの従騎士です。
 ホワイト侯爵家は武を尊ぶ家柄なのです。

 瞬く間に、王太子と偽聖女が捕縛されました。
 殺すには及びません。
 いえ、殺してしまっては、ホワイト侯爵家が手を汚すことになってしまいます。
 王太子の不始末は、王家に取って頂かなければいけません。
 婚約破棄の賠償金と、謀叛人捕縛の功名、どちらの褒美もたっぷりいただきます。
 当然今までの貸金も全て強制回収させていただきます。

 どうなされるおつもりですか?
 国王陛下。
 王妃殿下。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃
恋愛
貧乏貴族の娘、エレンは幼いころから自分で家事をして育ったため、料理が得意だった。 そのため婚約者のウィルにも手づから料理を作るのだが、彼は「おいしいけど心が籠ってない」と言い、挙句妹のシエラが作った料理を「おいしい」と好んで食べている。 それでも我慢してウィルの好みの料理を作ろうとするエレンだったがある日「料理どころか君からも愛情を感じない」と言われてしまい、もう彼の気を惹こうとするのをやめることを決意する。 ウィルはそれでもシエラがいるからと気にしなかったが、やがてシエラの料理作りをもエレンが手伝っていたからこそうまくいっていたということが分かってしまう。

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

処理中です...