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第一章

第5話:惨劇

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「急げ、急いで王宮に知らせるのだ、このまま結界が張られていては、王太子殿下をお救いする事もできないぞ!」

 教室の後ろに立っていた、王太子の護衛騎士が慌てています。
 王太子の机に仕込まれている防御結界はとても優秀で、王太子に向けて放たれた攻撃に応じて防御魔法を展開するだけではなく、王太子の心理状況によっても防御強度が変わるのです。
 失禁脱糞するほど、下手をすればショックで心臓が止まるほどの恐怖を感じた以上、その強度は最強レベルです。
 たとえ護衛騎士であろうと、外部から防御魔法を解除することができません。

「お前達はその場を動くな!
 誰がこのような事件を引き起こしたのか、徹底的に調べ上げるからな!
 特にケイト嬢、少しでも動いたら殺すぞ!」

 護衛騎士は私がやったものと決めつけていますが、それも当然ですね。
 ですがこれは正当防衛ですよ、護衛騎士殿。
 キャレル辺境伯の子息程度が、公爵令嬢の私を殴ろうとしたのです。
 これが王太子の命令ならば、話は別ですが、卑怯なあいつは暴行の証拠を残さないように、直接命令は下していません。
 それに、貴男の命も長くはないのですよ。
 騎士のくせに、御姉様が虐められるのを見て見ぬ振りした卑怯下劣な塵屑!

「ウッゲ、グッギギギギ、グッ、ガッアハッ!」

 私が殺意を込めた視線を送ってやりました。
 その視線だけで呪殺できるくらいの恨みを込めて、蔑みと同時に。
 生意気にも睨み返してきたので、つい殺意が溢れてしまい、貯めに貯めた怨念の極一分が漏れてしまいました。
 急いで指向性を持たせて、心臓や脳などを潰さないようにしました。
 こいつも楽に殺したりはしませんから、胃をぐちゃぐちゃに潰していやりました。
 王太子の護衛騎士です、それくらいなら治してもらえるでしょう。

「「「「「きゃああああああ、あああああ、あああああ、あああああ」」」」」

 狐に続いて護衛騎士が吐血して倒れたので、一瞬静寂を取り戻していた教室に、再び悲鳴がこだましました。
 愚か者の担任や気の弱い者が、耐えきれずに卒倒しました。
 この程度で楽になってもらっては困りますが、今がチャンスかもしれません。
 この日の為に用意した毒蟲を放っておきましょう。

「騒ぐな!
 誰もこの場から離れるな!
 直ぐに警備隊を呼ぶ、公正な捜査を約束するから、これ以上は何もするな!」

 私に言っているのでしょうが、知った事ではありませんよ。
 でも、まあ、公正な捜査をするというのなら、少しだけ時間をあげましょう。
 事が大きくなり過ぎましたので、王都警備隊が取り調べをする事になりますね。
 普通学園内の問題は、よほどのことがない限り生徒会や教職員会が治めます。
 ですが今回はあまりにも凄惨の事件でしたし、王太子が巻き込まれ、衆人環視の場で失禁脱糞したという、拭い難い醜態を見せたのです。
 取り調べるべき生徒会の長、王太子が泡を吹いて倒れているのですから、どうしようもありません。
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