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イータリ国・海の街:ナーポリ
駄々っ子王
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ナーポリ朝市
「さぁ~安いよ美味いよ! 捌いたばかりのミンクホエールの赤身肉だ! これを食べなきゃナーポリに来た意味がないよ!」
「さぁ~、見てくれ食べてくれ! ミンクホエールの脳フライだ、これほど美味しい料理はどの港町に行っても食べられないよ!」
「美味いよ、珍味だよ! ミンクホエールのタンステーキだ! ナーポリでもミンクホエールのタンを扱っているのはここだけだよ、今買わなきゃ売り切れちまうよ!」
朝市の混雑は、それこそ人混みに圧死させられそうな程の状況だったが、国王の命によって交代制がとられた事で、何とか死者が出ない程度には落ち着いた。
俺の指導により、店ごとに扱う魚介類を専門化させ、ホエール種に至っては部位ごとに専門店化させた。
今回来賓貴賓としてナーポリに来ている、王侯貴族の随行員が帰領するまでは、ホエール種に人気が集中してしまい、店ごとの売り上げに不公平が生まれるだろう。
だがホエール種以外が売れ残らないように、安値で買い叩かれないように、売れ残りかけた魚介類は全て俺が買い取った。
だからこそ、ホエール種販売から外された漁師ギルド員も、不平不満を飲みこんだのだ。彼らにしても、いつまでもホエール種ばかりが売れ続けるとは思っておらず、長く漁業をつづけ、朝市でも店を続ける為には、常連客の信用を失う事は出来なと頭では分かっているのだ。
俺にしても、不要な物を買い支えている訳では無く、大好きな魚介類を正当な値段で買っているだけだ。だからどれほど大金を使おうとも、何の痛痒も感じはしない」
問題は妬みだけなのだが、これはどうしようもない人間性の問題だから、売れ残らないように買い取ってやっても恨む奴は必ずいる。そんな下劣な人間にまで気を使えば、正直者が馬鹿を見る可能性もあるから、切り捨てるところは躊躇(ちゅうと)せずに見切らねばならない。
ナーポリ城内王の間:イータリ国王と宰相以下の重臣
「ロンドレア伯爵、これから毎日ジャイアント・ホワイトホエールを届けよ」
「陛下、あまり無理を申されますな」
「何が無理なものか、あれほど巨大なモンスターではないか、余が食べる分くらいどうにでもなるであろう」
「しかしながら陛下、冒険者が狩ったモンスターは冒険者の物でございます。いかに陛下の命とは申しましても、伯爵にはどうしようもございません」
「国王である余が、冒険者に遠慮せねばならぬと申すのか!」
「陛下、相手はただの冒険者ではございません。神話の出てくるような、伝説もモンスターを狩るほどの英雄でございます」
「それがどうしたのだ、英雄とは言えたかが冒険者ではないか」
「しかしながら陛下、英雄を敵に回したとあれば、それを理由に四方の国が戦を仕掛けて来る可能性がございます」
「攻めて来れば撃退すればよかろう」
「数か国が同時に攻め寄せてきた場合、とてもではありませんが、その全てを撃退する事は出来ません」
「余の将兵は天下無敵ではないか、四方から攻め込まれようと、必ずや撃退してくれる」
「そのような愚かなことを、誰が陛下の耳に入れたのでございますか?」
「宰相に話すことではない、宰相に言えば必ず罰するであろう。余に忠誠を尽してくれる者を、罪もなく罰するなど許さんぞ!」
「陛下、その者は陛下を誑かし、陛下とこの国を敵国に売り渡そうとしているのでございます」
「騙されんぞ! 余を殺し、この国を乗っ取ろうとしているのは宰相であろう」
「何を申されます、臣は陛下に忠誠を尽し、この国を豊かにしようと働いているだけでございます」
「ではその証を見せよ」
「証とは何の事を申されておられるのですか?」
「ジャイアント・ホワイトホエールじゃ、ジャイアント・ホワイトホエールを毎日食べさせるのじゃ」
「先程も申しましたが、それはこの国だけではなく、近隣諸国全ての法を曲げる事になります。そのような事を致せば、我が国にいる多くの冒険者が、他国に移ってしまいます」
「何と不忠な者達であるか! 余の命に従わず、他国に移るような冒険者など、今直ぐ追放してしまえ!」
「陛下! そのような事を致せば、多くの村々を魔獣やモンスターが襲い、民が死傷してしまいますぞ!」
「何を言っておる、余には忠誠無比の将兵がおる、彼らが魔獣やモンスターなど簡単に退治するわ!」
「陛下がそこまで申されるのでしたら、臣もその者を信じましょう。陛下に忠誠を尽さぬ冒険者などに頼らず、その将兵達にジャイアント・ホワイトホエールを狩らせましょう。そうすれば、いついかなる時であろうと、好きなだけジャイアント・ホワイトホエールを食べることが出来まするぞ」
「ふむ、宰相にしてはよき事を申すではないか。ではアッボンディオ将軍を呼んで参れ、将軍ならば簡単にジャイアント・ホワイトホエールを狩って来てくれよう」
「左様でございますな、陛下にそれほどの大言壮語をしたくらいでございます。たかだか冒険者が狩る程度のジャイアント・ホワイトホエールなど、1時間で狩って来てくれる事でございましょう」
「ボナヴェントゥーラ侍従、そなたもあの時一緒にいたであろう。懇意なそなたが呼んで参れ、そうすればアッボンディオ将軍も、宰相を恐れずここに来れるであろう」
「何の事でございましょうか? 侍従はそのような事、全く身に覚えがございません」
「何を申しておるのだ? 侍従と将軍とカトゥッロ大臣が、宰相に謀叛の疑いがあるので気をつけろと申したではないか!」
「陛下、それは陛下が御覧になった夢ではございませんか? 侍従には全く身に覚えがございません」
「何を申しておる! 余は現実と夢の違いくらい分かっておるぞ!」
「いえいえ、夢とは摩訶不思議な物でございまして、夢現と言う言葉もございますように、魔獣やモンスターに誑かされて、夢を現実と間違う事は多くございます」
「そうなのか? あれは夢であったのか?」
「陛下、騙されてはいけませんぞ! この者こそ陛下を騙し、この国を敵国に売り渡そうとした張本人でございます」
「陛下、もしかしたら陛下を弑逆する準備として、モンスターを使って偽りの夢を見させる者がいるのかもしれません」
「何のことであるか?」
「陛下を弑逆しさえすれば、この国の権力全てを手に入れられる地位にいる者が、陛下に忠誠を尽す者を罠に嵌めようとしたのかもしれません」
「それは宰相の事を申しておるのか?」
「いえいえ、そのような事を申している訳ではございません。ですがお気をつけて下さいませ、陛下に成り代わり、王にならんとする者が、陛下の側に潜んでおりますぞ」
「宰相閣下、ボナヴェントゥーラ侍従殿、我が城での見苦しい争いは止めて頂けますか」
「ふむ」
「たかが伯爵如きが何を申すか! たかだか珍しいモンスターを献上したくらいで、思い上がるではない!」
「はてさて、なんと怖いもの知らずな事か」
「何を申しておる、陛下を蔑ろにするようなら、領民共々攻め滅ぼしてくれるぞ」
「伯爵、怖いもの知らずとは何を意味しておるのだ?」
「陰に隠れて、伝説の英雄に匹敵する冒険者を貶める発言していたのです。冒険者がそれを看過すると思っているのでしたら、愚かとしか申し上げようがございません」
「確かに我も伝説の英雄に匹敵する冒険者だとは思うが、この場で申した事が直ぐにその者の耳にはいる訳でもあるまい」
「宰相閣下、あれに浮かぶダイオウイカの干物をご覧ください」
「陛下の忠臣たる侍従を無視するか!」
「ふむ、あれは不味いダイオウイカを食べれるように干しているのであったな。随分と魔法の無駄遣いと思ったが、それがどうかしたのか?」
「あれは先程から話題に出ている冒険者が、陛下や来賓の方々、護衛の将兵が市民に害をなさぬように、監視の為に浮かばせているのでございます」
「なに?! あれはジャイアント・ホワイトホエールの解体中にも浮いておったではないか!」
「話題の冒険者に取ったら、同時に幾百幾千の魔法を操るなど容易い事なのでございます。今頃は、この場の会話に対する対応を始めている事でございましょう」
「それはどう言う事だ?」
「え~い、陛下の忠臣を無視するではない、私は陛下の信任を得た侍従であるぞ!」
「伯爵、余には伯爵が何を言っているかさっぱりわからんぞ!」
「陛下、陛下がたかが冒険者と申す者にも、護るべき大切な家族もおれば、誇りもございます。陰でこれほど悪し様に言われ、黙って引き下がる事などございません」
「ほう、さればどうすると言うのじゃ?」
「今頃は、ボナヴェントゥーラ侍従殿、カトゥッロ大臣閣下、アッボンディオ将軍閣下の領地に魔法攻撃を仕掛けている事でございましょう」
「馬鹿な事を申すな、そのような事をすればアッボンディオ将軍が黙ってはおらんぞ」
「黙っておらぬと申されますが、アッボンディオ将軍は具体的にどうされると言うのですか?」
「この地に来た将兵の多くは、アッボンディオ将軍が率いる忠誠心高き精強無比の将兵である。卑しき冒険者など、直ぐに捕えて処罰してくれるであろう」
「あれでもでございますか?」
「伯爵、あの者達は何故寝ておるのだ?」
「陛下、宰相閣下がボナヴェントゥーラ侍従を捕えたり処罰しようとしなかったのは、陛下が人質となっていたからでございます」
「余が人質だと?!」
「陛下の御側にいる者の多くが、既に佞臣の一味でございました。宰相閣下が陛下をお助けしようとすれば、佞臣共は逆上して陛下を弑逆した事でございましょう」
「嘘じゃ! 伯爵まで余をたばかるか!」
「陛下、あれを御覧くださいませ」
「あ、あれはいったいなんじゃ?! 昨日見たジャイアント・ホワイトホエールが十頭以上いるではないか?!」
「冒険者が狩った獲物でございます。恐らくは報復攻撃に使うのでございましょう」
「報復攻撃だと?」
「今回の謀反に関連した貴族や将軍の領地に送られ、城砦を圧死潰す兵器に使われる事でございましょう。いえ、我が国の謀反人だけではなく、関係した周辺国のも送られる事でございましょう」
「ボナヴェントゥーラ? どこに行くのだボナヴェントゥーラ!」
「謀叛人が逃げ出したのでございます。愚かなことを」
「愚かとはどう言うことだ?」
「ここにいた謀叛人共が全員眠らされているのに、自分が眠らされなかった意味が分かっていないからでございます。一緒に眠らせることなど簡単な事なのに、ボナヴェントゥーラだけが逃げ出せたと言う事は、死ぬよりも苦しく辛い目にあわされると言う事でございます」
「死ぬよりも辛い事とはなんだ?」
「陛下の前でそのような事は申し上げられません」
「まさか! まさか陛下にも報復があると言う事か?!」
「さぁ~安いよ美味いよ! 捌いたばかりのミンクホエールの赤身肉だ! これを食べなきゃナーポリに来た意味がないよ!」
「さぁ~、見てくれ食べてくれ! ミンクホエールの脳フライだ、これほど美味しい料理はどの港町に行っても食べられないよ!」
「美味いよ、珍味だよ! ミンクホエールのタンステーキだ! ナーポリでもミンクホエールのタンを扱っているのはここだけだよ、今買わなきゃ売り切れちまうよ!」
朝市の混雑は、それこそ人混みに圧死させられそうな程の状況だったが、国王の命によって交代制がとられた事で、何とか死者が出ない程度には落ち着いた。
俺の指導により、店ごとに扱う魚介類を専門化させ、ホエール種に至っては部位ごとに専門店化させた。
今回来賓貴賓としてナーポリに来ている、王侯貴族の随行員が帰領するまでは、ホエール種に人気が集中してしまい、店ごとの売り上げに不公平が生まれるだろう。
だがホエール種以外が売れ残らないように、安値で買い叩かれないように、売れ残りかけた魚介類は全て俺が買い取った。
だからこそ、ホエール種販売から外された漁師ギルド員も、不平不満を飲みこんだのだ。彼らにしても、いつまでもホエール種ばかりが売れ続けるとは思っておらず、長く漁業をつづけ、朝市でも店を続ける為には、常連客の信用を失う事は出来なと頭では分かっているのだ。
俺にしても、不要な物を買い支えている訳では無く、大好きな魚介類を正当な値段で買っているだけだ。だからどれほど大金を使おうとも、何の痛痒も感じはしない」
問題は妬みだけなのだが、これはどうしようもない人間性の問題だから、売れ残らないように買い取ってやっても恨む奴は必ずいる。そんな下劣な人間にまで気を使えば、正直者が馬鹿を見る可能性もあるから、切り捨てるところは躊躇(ちゅうと)せずに見切らねばならない。
ナーポリ城内王の間:イータリ国王と宰相以下の重臣
「ロンドレア伯爵、これから毎日ジャイアント・ホワイトホエールを届けよ」
「陛下、あまり無理を申されますな」
「何が無理なものか、あれほど巨大なモンスターではないか、余が食べる分くらいどうにでもなるであろう」
「しかしながら陛下、冒険者が狩ったモンスターは冒険者の物でございます。いかに陛下の命とは申しましても、伯爵にはどうしようもございません」
「国王である余が、冒険者に遠慮せねばならぬと申すのか!」
「陛下、相手はただの冒険者ではございません。神話の出てくるような、伝説もモンスターを狩るほどの英雄でございます」
「それがどうしたのだ、英雄とは言えたかが冒険者ではないか」
「しかしながら陛下、英雄を敵に回したとあれば、それを理由に四方の国が戦を仕掛けて来る可能性がございます」
「攻めて来れば撃退すればよかろう」
「数か国が同時に攻め寄せてきた場合、とてもではありませんが、その全てを撃退する事は出来ません」
「余の将兵は天下無敵ではないか、四方から攻め込まれようと、必ずや撃退してくれる」
「そのような愚かなことを、誰が陛下の耳に入れたのでございますか?」
「宰相に話すことではない、宰相に言えば必ず罰するであろう。余に忠誠を尽してくれる者を、罪もなく罰するなど許さんぞ!」
「陛下、その者は陛下を誑かし、陛下とこの国を敵国に売り渡そうとしているのでございます」
「騙されんぞ! 余を殺し、この国を乗っ取ろうとしているのは宰相であろう」
「何を申されます、臣は陛下に忠誠を尽し、この国を豊かにしようと働いているだけでございます」
「ではその証を見せよ」
「証とは何の事を申されておられるのですか?」
「ジャイアント・ホワイトホエールじゃ、ジャイアント・ホワイトホエールを毎日食べさせるのじゃ」
「先程も申しましたが、それはこの国だけではなく、近隣諸国全ての法を曲げる事になります。そのような事を致せば、我が国にいる多くの冒険者が、他国に移ってしまいます」
「何と不忠な者達であるか! 余の命に従わず、他国に移るような冒険者など、今直ぐ追放してしまえ!」
「陛下! そのような事を致せば、多くの村々を魔獣やモンスターが襲い、民が死傷してしまいますぞ!」
「何を言っておる、余には忠誠無比の将兵がおる、彼らが魔獣やモンスターなど簡単に退治するわ!」
「陛下がそこまで申されるのでしたら、臣もその者を信じましょう。陛下に忠誠を尽さぬ冒険者などに頼らず、その将兵達にジャイアント・ホワイトホエールを狩らせましょう。そうすれば、いついかなる時であろうと、好きなだけジャイアント・ホワイトホエールを食べることが出来まするぞ」
「ふむ、宰相にしてはよき事を申すではないか。ではアッボンディオ将軍を呼んで参れ、将軍ならば簡単にジャイアント・ホワイトホエールを狩って来てくれよう」
「左様でございますな、陛下にそれほどの大言壮語をしたくらいでございます。たかだか冒険者が狩る程度のジャイアント・ホワイトホエールなど、1時間で狩って来てくれる事でございましょう」
「ボナヴェントゥーラ侍従、そなたもあの時一緒にいたであろう。懇意なそなたが呼んで参れ、そうすればアッボンディオ将軍も、宰相を恐れずここに来れるであろう」
「何の事でございましょうか? 侍従はそのような事、全く身に覚えがございません」
「何を申しておるのだ? 侍従と将軍とカトゥッロ大臣が、宰相に謀叛の疑いがあるので気をつけろと申したではないか!」
「陛下、それは陛下が御覧になった夢ではございませんか? 侍従には全く身に覚えがございません」
「何を申しておる! 余は現実と夢の違いくらい分かっておるぞ!」
「いえいえ、夢とは摩訶不思議な物でございまして、夢現と言う言葉もございますように、魔獣やモンスターに誑かされて、夢を現実と間違う事は多くございます」
「そうなのか? あれは夢であったのか?」
「陛下、騙されてはいけませんぞ! この者こそ陛下を騙し、この国を敵国に売り渡そうとした張本人でございます」
「陛下、もしかしたら陛下を弑逆する準備として、モンスターを使って偽りの夢を見させる者がいるのかもしれません」
「何のことであるか?」
「陛下を弑逆しさえすれば、この国の権力全てを手に入れられる地位にいる者が、陛下に忠誠を尽す者を罠に嵌めようとしたのかもしれません」
「それは宰相の事を申しておるのか?」
「いえいえ、そのような事を申している訳ではございません。ですがお気をつけて下さいませ、陛下に成り代わり、王にならんとする者が、陛下の側に潜んでおりますぞ」
「宰相閣下、ボナヴェントゥーラ侍従殿、我が城での見苦しい争いは止めて頂けますか」
「ふむ」
「たかが伯爵如きが何を申すか! たかだか珍しいモンスターを献上したくらいで、思い上がるではない!」
「はてさて、なんと怖いもの知らずな事か」
「何を申しておる、陛下を蔑ろにするようなら、領民共々攻め滅ぼしてくれるぞ」
「伯爵、怖いもの知らずとは何を意味しておるのだ?」
「陰に隠れて、伝説の英雄に匹敵する冒険者を貶める発言していたのです。冒険者がそれを看過すると思っているのでしたら、愚かとしか申し上げようがございません」
「確かに我も伝説の英雄に匹敵する冒険者だとは思うが、この場で申した事が直ぐにその者の耳にはいる訳でもあるまい」
「宰相閣下、あれに浮かぶダイオウイカの干物をご覧ください」
「陛下の忠臣たる侍従を無視するか!」
「ふむ、あれは不味いダイオウイカを食べれるように干しているのであったな。随分と魔法の無駄遣いと思ったが、それがどうかしたのか?」
「あれは先程から話題に出ている冒険者が、陛下や来賓の方々、護衛の将兵が市民に害をなさぬように、監視の為に浮かばせているのでございます」
「なに?! あれはジャイアント・ホワイトホエールの解体中にも浮いておったではないか!」
「話題の冒険者に取ったら、同時に幾百幾千の魔法を操るなど容易い事なのでございます。今頃は、この場の会話に対する対応を始めている事でございましょう」
「それはどう言う事だ?」
「え~い、陛下の忠臣を無視するではない、私は陛下の信任を得た侍従であるぞ!」
「伯爵、余には伯爵が何を言っているかさっぱりわからんぞ!」
「陛下、陛下がたかが冒険者と申す者にも、護るべき大切な家族もおれば、誇りもございます。陰でこれほど悪し様に言われ、黙って引き下がる事などございません」
「ほう、さればどうすると言うのじゃ?」
「今頃は、ボナヴェントゥーラ侍従殿、カトゥッロ大臣閣下、アッボンディオ将軍閣下の領地に魔法攻撃を仕掛けている事でございましょう」
「馬鹿な事を申すな、そのような事をすればアッボンディオ将軍が黙ってはおらんぞ」
「黙っておらぬと申されますが、アッボンディオ将軍は具体的にどうされると言うのですか?」
「この地に来た将兵の多くは、アッボンディオ将軍が率いる忠誠心高き精強無比の将兵である。卑しき冒険者など、直ぐに捕えて処罰してくれるであろう」
「あれでもでございますか?」
「伯爵、あの者達は何故寝ておるのだ?」
「陛下、宰相閣下がボナヴェントゥーラ侍従を捕えたり処罰しようとしなかったのは、陛下が人質となっていたからでございます」
「余が人質だと?!」
「陛下の御側にいる者の多くが、既に佞臣の一味でございました。宰相閣下が陛下をお助けしようとすれば、佞臣共は逆上して陛下を弑逆した事でございましょう」
「嘘じゃ! 伯爵まで余をたばかるか!」
「陛下、あれを御覧くださいませ」
「あ、あれはいったいなんじゃ?! 昨日見たジャイアント・ホワイトホエールが十頭以上いるではないか?!」
「冒険者が狩った獲物でございます。恐らくは報復攻撃に使うのでございましょう」
「報復攻撃だと?」
「今回の謀反に関連した貴族や将軍の領地に送られ、城砦を圧死潰す兵器に使われる事でございましょう。いえ、我が国の謀反人だけではなく、関係した周辺国のも送られる事でございましょう」
「ボナヴェントゥーラ? どこに行くのだボナヴェントゥーラ!」
「謀叛人が逃げ出したのでございます。愚かなことを」
「愚かとはどう言うことだ?」
「ここにいた謀叛人共が全員眠らされているのに、自分が眠らされなかった意味が分かっていないからでございます。一緒に眠らせることなど簡単な事なのに、ボナヴェントゥーラだけが逃げ出せたと言う事は、死ぬよりも苦しく辛い目にあわされると言う事でございます」
「死ぬよりも辛い事とはなんだ?」
「陛下の前でそのような事は申し上げられません」
「まさか! まさか陛下にも報復があると言う事か?!」
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