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召喚

縄張り争いと植林

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「なあセイ、これはどう言う状況なんだろう?」

「ふむ、壊滅状態ではあるが、ジャイアント・レッドベアーは圧倒的な能力でオークを撃退しているが、数で圧倒するオークも滅ぼされることがないな」

「元々ジャイアント・レッドベアーもオークも広大な縄張りを持っていたのだな、大半がリュウと白虎に狩られて縄張りを持て余しているのかな?」

「そうだな、1番大きいのは我やリュウ・白虎の気配を感じ、逃げ出そうと考えるほどの知能がある上位種が滅んでいることだろうな」

「数が激減した上に下位種だけが残ったから、ジャイアント・レッドベアーとオークが縄張りに残って殺し合っていると言う事だな」

「そうだ、互いに生きるための獲物として殺し合い食料にしているようだな」

「これなら人間界に大災害をもたらす事はないのだな?」

「まあ20年から30年は大丈夫だろう、殺し合いレベルが上がり上位種に進化するのにも、子供を産み育て戦力になるまで成長させるにも、それくらいの年月はかかる」

「それはよかった、だとしたら後はあの村にアイテムボックスを設置するだけだな、急いで戻ろう」

「我は構わんが、白虎はどうするんだ?」

 そうなのだ、白虎は家来だと言い張って空を翔ける俺に付き従って来た。何気に空を飛びついて来る白虎に少々驚いたが、四聖獣とまで言われる種族なのだから、空くらい飛べても不思議ではないのだろう。

「白虎、俺とセイは村に戻るが、御前がいると住民が怖がるからトレーラーハウスを護っていてくれ」

「分かった、だったら晩飯を置いて行ってくれ」

「さっきのチーズがまだこんなに残っているだろ?」

「これは昼飯だ、残っていようが俺が昼飯に貰ったもんだ、主人なら3度3度の飯はちゃんと喰わせてくれ」

「だが長い時間置いていると腐ってしまうぞ、だからそれを晩飯に喰ってくれ」

「俺もアイテムボックスを持っているから大丈夫だ、それに2食続けて同じものは食べたくない、違う物を食べさせてくれ」

「ゼイタクな奴だな、その代わりトレーラーハウスは必ず護れよ」

「任せておけ」

「それと護衛のついでに、狩れるモンスターか獣はいたら食材として確保しておいてくれ、だが人型は駄目だぞ」

「分かった、食後の運動に狩っておいてやる」

「家臣の癖に偉そうな奴だな、晩飯はこれでも食べてろ」

 しゃべりながらドローン配送で手に入れたのは、豚腿肉で作ったスペイン産のカンポドゥルセ・ハモンセラーノ・エンブラの骨なし約5.5kgだった。

「1個か? 出来れば2個欲しいのだが」

「食いしん坊だな、だがチーズも残っているだろ」

「そう言わずに2個くれよ」

「朝飯込なら2個やる、それで構わないか?」

「しかたないな、朝食込み2個で負けてやる」

「本当に偉そうな奴だな、その代わり絶対村に来るなよ」

「昼飯はちゃんとくれよ、遅れたら村に迎えに行くぞ」

「いい加減にしろ! 家臣の癖にこれ以上四の五の言うなら我が滅ぼしてくれるぞ!」

「ヒイィ~、ごめんなさいセイ様!」




「村長、ちょっと相談があるのだがな」

「これはこれは聖者様! 御姿が見えなかったので、村を見捨てられたのかと心配しておりました、よくぞお戻り下さいました」

「見捨てるも何も、旅の途中でよらせてもらっただけだから、直ぐに旅を続けるつもりだ」

「そんな! どうか村を見捨てる事無く末永く御留まり下さい」

「心配するな、村を出る時には人々が生きて行けるように手立てしてから出て行く、それで確認したいのだが、この村にアイテムボックスやマジックバックはあるのか?」

「残念ながら、アイテムボックスようなたぐまれな能力を持つ者はおりませんし、高価なマジックバックを持てるほど豊かな者もおりません」

「実は生命の大樹の苗を持っているのだ、生命の大樹を守護する民にならなければなりませんがか? それを承知するのなら、アイテムボックスを使う事が出来ます」

「聖者様、それは人間界の民から生命の大樹界の民になると言う事ですか」

「そう言う事です、重大な決断になりますから、村人の皆さんと話し合って決めて下さい」

「そうですね、私1人で決めれる事ではありません、ですが本当にアイテムボックスを使えるのですか? それにアイテムボックスの容量によって、村の生活が一変いたします」

「容量は生命の大樹の魔力によりますから、ほぼ無限と言えるくらい大容量です。それはよく考えてもらうとして、オークとグレーボアを狩って来たので解体を御願いしたいのです」

「なんと! オークを討伐して下さったのですが?!」

「どうも近くにオークとジャイアント・レッドベアーの縄張りが出来ていたようで、幻術を使って殺し合いをさせたのです。御蔭で大した労力なしに、オークとジャイアント・レッドベアーを手に入れる事が出来たのですが、ジャイアント・レッドベアーの解体は無理ですか?」

「残念ですが、この村にジャイアント・レッドベアーほどのモンスターを解体出来る者はおりません。オークとグレーボアなら大丈夫です、この村の総力をあげて狩る獲物ですから、解体した者も多いです」

「私は信心する神の教えで、人型モンスターを食べることは禁止されています。ですからオークを解体した後の肉は村に寄付したいのですが、アイテムボックスがないと長期保存ができないでしょう?」

「本当でございますか! それで幾らほど寄付して頂けるのですか?」

「保存ができるのなら200頭は寄付できますが、素材として売却できる部分は返して頂きます」

「それはもちろんでございます! 200頭ものオークを寄付して頂けるのなら、3月以上の食料を確保出来ます! ですがそうなると、問題は保存が可能なアイテムボックスとマジックバックの有無なのですね」

「村長を始め村人が決断するには、現物のオークが必要でしょう、この後で現物をお見せしましょう」

「直ぐに村人を集めさせて頂きます」

 村長は本当に直ぐに村人を集合させたのだが、昨日俺が治癒魔法で奇跡をおこしたからだろう、村人も文句も言わず急いで集まってくれた。

「皆の者よく聞け! 聖者様が我らの村に大いなる幸福をもたらせてくださった! なんと生命の大樹の苗を分けて下さると言うのだ。我らが生命の大樹の民として、生命の大樹様を護って生きるのなら、アイテムボックスを使わせて下さる。しかもアイテムボックスで保存するオークの肉を、200頭分寄付して頂けると言う事だ、その事も併せてこの村がどうすべきか決断して欲しい!」

 俺は村長の言葉に合わせてアイテムボックスから200頭のオークを出したのだが、その数とレベルに村人は驚愕(きょうがく)していた!

「聖者様! あの、全部リーダーオークなのですが?!」

「あまりに多かったのでな、ノーマル級やファイター級は捨てておいた、200頭のオークは全部リーダー級だ」

「「「「「おおおおおぉ~」」」」」

「聖者様! 皮や牙など素材として使える物や、脂肪・子袋・睾丸・陰茎など薬として使える物は丁寧に解体して御渡しさせていただきます!」

 どうもこのような小さな開拓村にとったら、リーダー級のオークは絶対狩れない高位種だそうだ。だからリーダー・オークの肉など一生食べれない高級品なのだが、それを3カ月毎日食べれるほど手に入れる事が出来るのだ。村の総意は一気に生命の大樹を受け入れる方に傾いたが、その総意の中に昨日の俺の治療活動も少しは影響していたのだと思う。

 オークの解体が出来る者はさっそくリーダー・オークの解体を始めたが、他の村人は生命の大樹の植樹式に参加してくれた。大袈裟にするのは恥ずかしのだが、俺の記憶から植樹祭を観たセイが、どうしてもやりたいと駄々をこねたのだ!
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