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第3章:筋ジストロフィー症候群の子供
第9話:滑り台・坂口真弓視点
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「隆志、もう1回滑るか?」
「ありがとう、お願い」
「「「「「任せろ」」」」」
幸子を児童公園で遊ばせてあげようとやってきたら、6人の子供が1人の子供に集まっているので、一瞬虐めかと思ってしまいました。
自分がずっと不幸だったから、つい悪い方に考えてしまうのです。
子ども食堂に集まってくる子供たちの話を聞いたから、小学校の虐めの激しさと容赦の無さがを知ったから、ついそう思ってしまうのです。
でも、6人に取り囲まれている子がとてもうれしそうな表情をしていたので、直ぐに声をかけられませんでした。
幸子を遊ばせながら注意して見ていると、1人の子は身体が不自由でした。
近くに置いてある車椅子は、6人に囲まれている子の物のようでした。
体の不自由な子は隆志と呼ばれていました。
隆志君と一緒に滑り台で遊べるように、体の不自由な隆志君が滑り台に上れるように手伝う3人と、ケガしないように下で待つ3人に分かれていました。
疑いの目で見てしまった自分が恥ずかしかったです。
世の中には、まだ、こんなにも優しい子供もいるのだと思いました。
天子さんや太郎さんたちは、こんな子供だったのだろうと思いました。
助けてもらっている、隆志と呼ばれている子の笑顔がとても良かったです。
お世話されているのに、全く卑屈になっていませんでした。
屈託なくお世話になって、心からのお礼を素直に言えていました。
6人の子供たちも、助けてやっているという驕りが感じられませんでした。
満面の笑みを浮かべて、一緒に遊ぶのが楽しいと言う気持ちに溢れていました。
見ているだけで涙があふれてきてしまいました。
「みんなありがとう、隆志と遊んでくれていたのかい?」
60歳前後と思われる女性が、児童公園に近づきながら話しかけてきました。
お父さんでもお母さんでもなく、おばあちゃんが迎えに来る。
身体が不自由なだけでなく、家庭にも事情があるのかもしれないと思いました。
私も色々あって、助けてもらった立場なので、お節介が焼けるような状態ではないのですが、気になってしまいました。
「遊んでくれていた、違うよ、一緒に遊んでいるんだよ」
「そうだよ、一緒に遊ぶのが楽しいからだよ」
「隆志と一緒に遊ぶのは楽しいよ」
「隆志のおばあちゃん、これから病院なの?」
「ああ、病気が良くなるように、リハビリに行くのさ」
「そっか、じゃあ今日はもう遊べないね」
「隆志、早く良くなれよ」
「リハビリ頑張れよ」
「明日また学校でな」
「バイバイ」
「また明日な、バイバイ」
「うん、また明日学校で、バイバイ」
おばあちゃんであろう60歳前後の女性が、隆志君の車椅子を押して児童公園から出て行こうとしました。
このまま黙って見送っても良いのだろうかと自問自答しました。
何か事情があるのなら、子ども食堂を知っておいた方が良いのではないかと思ったのです。
「ウォン!」
銀子さんがボディガードだとつけてくれた、超大型犬が背中を押してくれました。
「あ、あの、その、何か事情がおありなのでしょうか?」
私1人ではとても声をかけられませんでしたが、ボディーガードの秋田犬が背中を押してくれたので、声をかける事ができました。
「うん、どちらさんですか?」
初老の女性が答えてくれましたが、怪訝そうな表情をしていました。
「ウォン!」
またボディーガードの秋田犬が勇気を与えてくれました。
白髪稲荷神社の神使だそうで、子ども食堂の子供たちに大人気の子です。
人懐っこい顔をしているのですが、とても大きな子です。
初めて大きな秋田犬を見たら誰でも怖がると思うのですが、違いました。
怖がりの幸子が、何の警戒もせずに抱き着くのには驚かされました。
「近くの白髪稲荷神社にある、子ども食堂でお世話になるようになった、坂口真弓と言います。
不躾だとは思ったのですが、自分が助けていただいたので、何か事情がおありならば、子ども食堂に行かれるのが良いと思って、声をかけさせていただきました」
「そうなの、それはご親切に、ありがとうございます。
事情が全く無いとは言いませんが、子ども食堂のお世話になるような事ではないので、今の所は大丈夫です」
「そうなのですね、よけいな事を言ってすみませんでした」
「いや、いや、心配して頂けてうれしいですよ。
ただ、先祖代々この辺に住んでいるので、知り合いがたくさんいます。
地域の市議会議員や民生委員とも懇意なので、今の所は大丈夫なんです」
「そうなのですね、よかったです。
私は他所から来たので、頼れる人がいなくて、とても困っていた所を、子ども食堂の方や常連さんに助けていただいたので、つい……」
「ご親切に、ありがとうございます。
もし孫の食事が作れなくなるような事が有ったら、お世話になります。
子ども食堂の事は覚えておきます、ありがとうございました。
孫のリハビリに行く時間なので、これで失礼させていただきます」
「お忙しいのに、よけいな事を言ってすみませんでした」
「いえ、いえ、声をかけて頂いてうれしかったですよ。
では、またご縁があればお話しさせていただきます、さようなら」
「はい、失礼しました、お気をつけて」
やっぱり隆志君のおばあさんでした。
よけいな事を言ってしまいましたが、思っていたほど後悔はありませんでした。
「ウォン」
またヤマトが勇気づけるように声をかけてくれました。
私がおばあさんと話している間、幸子が寂しがらないように、秋田犬のヤマトが相手をしてくれていました。
信じられない事ですが、あれほど人を怖がって、いつも私の脚に抱きついていた幸子が、私ではなくヤマトに抱きついて待っていられたのです。
「ウォン」
何故だか分かりませんが、今度は私ではなく幸子に声をかけたのだと思いました。
私も一緒について行きましたが、ヤマトの毛をつかんだ幸子が、ヤマトに連れられて砂場にまで歩いて行きました!
絶対に私の側を離れなかった幸子が、私ではなくヤマトについてきました!
ヤマトが幸子に砂遊びを教えるように、前脚で砂を掘り返します。
「まって、手ではなく、これで砂を掘るのよ」
銀子さんが幸子にと持たせてくれた、砂遊び用の小さなプラスチックのスコップを渡してあげて、私はもう1つのスコップを持って手本を見せてあげます。
幸子はヤマトと競うように砂を掘りだしました。
ヤマトはとても賢くて、幸子に合わせて砂を掘り返してくれました。
初めて砂遊びをする幸子が、やり過ぎないようにしてくれているかのようでした。
「ウォン」
ヤマトは本当に賢い子です。
幸子が1つの遊びに熱中し過ぎないように、ブランコ、ジャングルジム、滑り台と色んな遊具の所に連れて行ってくれます。
「ママ」
初めて外で思いっきり遊んだからか、眠そうにした幸子が抱き着いてきました。
ヤマトにちょっと嫉妬していたので、もの凄くうれしかったです。
「ありがとう、お願い」
「「「「「任せろ」」」」」
幸子を児童公園で遊ばせてあげようとやってきたら、6人の子供が1人の子供に集まっているので、一瞬虐めかと思ってしまいました。
自分がずっと不幸だったから、つい悪い方に考えてしまうのです。
子ども食堂に集まってくる子供たちの話を聞いたから、小学校の虐めの激しさと容赦の無さがを知ったから、ついそう思ってしまうのです。
でも、6人に取り囲まれている子がとてもうれしそうな表情をしていたので、直ぐに声をかけられませんでした。
幸子を遊ばせながら注意して見ていると、1人の子は身体が不自由でした。
近くに置いてある車椅子は、6人に囲まれている子の物のようでした。
体の不自由な子は隆志と呼ばれていました。
隆志君と一緒に滑り台で遊べるように、体の不自由な隆志君が滑り台に上れるように手伝う3人と、ケガしないように下で待つ3人に分かれていました。
疑いの目で見てしまった自分が恥ずかしかったです。
世の中には、まだ、こんなにも優しい子供もいるのだと思いました。
天子さんや太郎さんたちは、こんな子供だったのだろうと思いました。
助けてもらっている、隆志と呼ばれている子の笑顔がとても良かったです。
お世話されているのに、全く卑屈になっていませんでした。
屈託なくお世話になって、心からのお礼を素直に言えていました。
6人の子供たちも、助けてやっているという驕りが感じられませんでした。
満面の笑みを浮かべて、一緒に遊ぶのが楽しいと言う気持ちに溢れていました。
見ているだけで涙があふれてきてしまいました。
「みんなありがとう、隆志と遊んでくれていたのかい?」
60歳前後と思われる女性が、児童公園に近づきながら話しかけてきました。
お父さんでもお母さんでもなく、おばあちゃんが迎えに来る。
身体が不自由なだけでなく、家庭にも事情があるのかもしれないと思いました。
私も色々あって、助けてもらった立場なので、お節介が焼けるような状態ではないのですが、気になってしまいました。
「遊んでくれていた、違うよ、一緒に遊んでいるんだよ」
「そうだよ、一緒に遊ぶのが楽しいからだよ」
「隆志と一緒に遊ぶのは楽しいよ」
「隆志のおばあちゃん、これから病院なの?」
「ああ、病気が良くなるように、リハビリに行くのさ」
「そっか、じゃあ今日はもう遊べないね」
「隆志、早く良くなれよ」
「リハビリ頑張れよ」
「明日また学校でな」
「バイバイ」
「また明日な、バイバイ」
「うん、また明日学校で、バイバイ」
おばあちゃんであろう60歳前後の女性が、隆志君の車椅子を押して児童公園から出て行こうとしました。
このまま黙って見送っても良いのだろうかと自問自答しました。
何か事情があるのなら、子ども食堂を知っておいた方が良いのではないかと思ったのです。
「ウォン!」
銀子さんがボディガードだとつけてくれた、超大型犬が背中を押してくれました。
「あ、あの、その、何か事情がおありなのでしょうか?」
私1人ではとても声をかけられませんでしたが、ボディーガードの秋田犬が背中を押してくれたので、声をかける事ができました。
「うん、どちらさんですか?」
初老の女性が答えてくれましたが、怪訝そうな表情をしていました。
「ウォン!」
またボディーガードの秋田犬が勇気を与えてくれました。
白髪稲荷神社の神使だそうで、子ども食堂の子供たちに大人気の子です。
人懐っこい顔をしているのですが、とても大きな子です。
初めて大きな秋田犬を見たら誰でも怖がると思うのですが、違いました。
怖がりの幸子が、何の警戒もせずに抱き着くのには驚かされました。
「近くの白髪稲荷神社にある、子ども食堂でお世話になるようになった、坂口真弓と言います。
不躾だとは思ったのですが、自分が助けていただいたので、何か事情がおありならば、子ども食堂に行かれるのが良いと思って、声をかけさせていただきました」
「そうなの、それはご親切に、ありがとうございます。
事情が全く無いとは言いませんが、子ども食堂のお世話になるような事ではないので、今の所は大丈夫です」
「そうなのですね、よけいな事を言ってすみませんでした」
「いや、いや、心配して頂けてうれしいですよ。
ただ、先祖代々この辺に住んでいるので、知り合いがたくさんいます。
地域の市議会議員や民生委員とも懇意なので、今の所は大丈夫なんです」
「そうなのですね、よかったです。
私は他所から来たので、頼れる人がいなくて、とても困っていた所を、子ども食堂の方や常連さんに助けていただいたので、つい……」
「ご親切に、ありがとうございます。
もし孫の食事が作れなくなるような事が有ったら、お世話になります。
子ども食堂の事は覚えておきます、ありがとうございました。
孫のリハビリに行く時間なので、これで失礼させていただきます」
「お忙しいのに、よけいな事を言ってすみませんでした」
「いえ、いえ、声をかけて頂いてうれしかったですよ。
では、またご縁があればお話しさせていただきます、さようなら」
「はい、失礼しました、お気をつけて」
やっぱり隆志君のおばあさんでした。
よけいな事を言ってしまいましたが、思っていたほど後悔はありませんでした。
「ウォン」
またヤマトが勇気づけるように声をかけてくれました。
私がおばあさんと話している間、幸子が寂しがらないように、秋田犬のヤマトが相手をしてくれていました。
信じられない事ですが、あれほど人を怖がって、いつも私の脚に抱きついていた幸子が、私ではなくヤマトに抱きついて待っていられたのです。
「ウォン」
何故だか分かりませんが、今度は私ではなく幸子に声をかけたのだと思いました。
私も一緒について行きましたが、ヤマトの毛をつかんだ幸子が、ヤマトに連れられて砂場にまで歩いて行きました!
絶対に私の側を離れなかった幸子が、私ではなくヤマトについてきました!
ヤマトが幸子に砂遊びを教えるように、前脚で砂を掘り返します。
「まって、手ではなく、これで砂を掘るのよ」
銀子さんが幸子にと持たせてくれた、砂遊び用の小さなプラスチックのスコップを渡してあげて、私はもう1つのスコップを持って手本を見せてあげます。
幸子はヤマトと競うように砂を掘りだしました。
ヤマトはとても賢くて、幸子に合わせて砂を掘り返してくれました。
初めて砂遊びをする幸子が、やり過ぎないようにしてくれているかのようでした。
「ウォン」
ヤマトは本当に賢い子です。
幸子が1つの遊びに熱中し過ぎないように、ブランコ、ジャングルジム、滑り台と色んな遊具の所に連れて行ってくれます。
「ママ」
初めて外で思いっきり遊んだからか、眠そうにした幸子が抱き着いてきました。
ヤマトにちょっと嫉妬していたので、もの凄くうれしかったです。
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