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第9話:家族の力と勇者の誇り

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 ポルストン王国軍はやはり奇襲を仕掛けてきました。
 私の決闘で混乱すると考えて、左の森から騎士団による突撃を仕掛けてきました。

 普通なら大混乱するのでしょうが、私たちは予期していましたから、慌てず騒がず兄の一人が百騎隊を率いて迎え討ちました。

 父の血を色濃く受け継いだ兄たちは、全員二メートル四十センチの偉丈夫です。
 騎士の装備を付けていない状態でも、完全装備をしているような筋肉にみっちりと覆われた巨漢です。

 そんな兄が、六メートルの柔軟な竹槍を振るうのですから、独りでも百騎千騎を討ち破るだけの力量があります。

「決闘を申し込んできたにも関わらず、多数で令嬢を襲う卑怯者を許すな!」

 長兄が目の前の出来事に硬直する敵軍に向かって言い放ちました。
 私に十騎が叩きのめされ、奇襲軍が一瞬で壊滅させられた敵軍は、完全に気を飲まれてしまっています。

 ろくな抵抗もできずに次々と叩きのめされていきます。
 普通なら殺さずに捕らえて身代金を請求するのですが、今回は名誉の方を優先して、皆殺しにする事になっています。

 騎士、徒士、強制徴募兵、傭兵など合わせて七千ほどがポルストン王国の全軍ですが、それだけの装備や衣服、補給品を手に入れられたらそれなりの利益になります。

「私から逃げきれると思っていたのですか」

 自分でも乾いた男の声だと思うような、潰れた声が出ています。
 やりたくもない人殺しをした事で、喉が緊張してしまっているのでしょう。
 でも、その声がシュナイダー侯爵の令息を絶望の淵に叩き込んでいます。

「ヒィイイイイイ、たすけ、てっ」

 心の中で諦観の涙を流しながら特別製のランスを振るいました。
 シュナイダー侯爵の令息は落馬して、ボロ布のように地面をはずんでいます。

 私たちは敗軍を追って、追って、追いまくりました。
 向こうから降伏を言いださない者は情け容赦なく殺しました。
 それでも、予定外に三千もの捕虜を手に入れてしまいました。

「ソフィー、悪いが捕虜を二百人ほど連れてクライン侯爵家へ行ってくれないか?」

「何故私なのですか、兄上たちの誰かで良いではありませんか」

「それはそうなのだが、久しぶりに外に出たのだし、この勢いでもっと外に出た方がソフィーの健康のためには良いと思ってな」

「兄上たちも私をクライン侯爵家に行かそうとしますが、何かあるのですか?」

「何もない、何もない、本当に何もない!」

「そんなに言わなくても、外に出るようにしますから、無理矢理他家に行かそうとするのは止めてください!」
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