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第7話:同盟の結束と未来への不安

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 ワグナー王国に見切りをつけた貴族士族は、それぞれが自分の信じる道を歩く事になりました。

 独立を宣言して小王国や公国を名乗られる方もおられます。
 父上のように、自主独立は宣言されても、王や公を名乗らない方もおられます。
 クラウゼ公爵やシュナイダー侯爵がそうですね。

 領地が隣国に近い方の多くは、仕える主を変えられました。
 ワグナー王国に残るよりも、新参者扱いされても隣国に仕えた方がマシだと考えられたのでしょう。

 元々両属のような状態だった、境目の貴族士族は判断が簡単だったでしょう。
 悩んだのは、両属の貴族士族と領地を接しておられる方々です。

 我が家も隣国と領地を接していますが、自主独立を選びました。
 父が、もう主君を持つのは懲り懲りだと申されたからです。
 あの事以来、父が極端に優しくなっています。

「ソフィー、クライン侯爵家のテオ殿から手紙は来ているのか?」

「はい、時候の挨拶や周囲の状況などを知らせてくださいます」

 あの事で知り合ったテオ様とは、よく手紙のやり取りをさせていただいています。
 周囲の貴族士族を纏められ、我が家とも同盟されたクライン侯爵家は、少しでの結束を強めようと手紙攻勢をかけておられるようです。

「今度クライン侯爵家主催の舞踏会を開くという話は聞いたか?」

「はい、隣国の王子も招いて、同盟の結束を見せつけるのでしたね?」

「ああ、そうだ、此方から攻める気などないのだが、ワグナー王国は逆恨みが激しいし、隣国は虎視眈々と我らを狙っておる」

 隣国に主を変えるという方法もあるのですが、今一つ信用できないのです。
 ワグナー王国を滅ぼした途端、私たちに牙を向ける気がしてならないのです。
 テオ様たちもそのような不安があるから、自主独立を選ばれたのでしょう。

「私は出席しようと思うのだが、ソフィーにもついて来て欲しい」

「舞踏会で恥をかくのは嫌です。
 我が家が主催するのなら、しかたなく参加いたしますが、他家が主催する舞踏会に参加して、心無い言葉を耳にしたくないのです」

「もうソフィーの陰口を言うような者はいないと思うが……」

「口にはしなくても、目つきや表情で何が言いたいのかくらい分かります」

「テオ殿の手紙には、ぜひ参加して欲しいと書いてなかったか?」

「書いてありましたが、参加できないと返事を出しております」

「そうか……そこまで嫌がるならしかたがない。
 だったら留守番を頼むが、たまには部屋の外に出なければいけないぞ。
 閉じ籠ってばかりいては、心も体も病んでしまう」

「分かっております。
 父上が騎士団の半数を率いて行かれるのでしたら、領内に残っている者を一兵でも多く見せかけなければなりません。
 私も完全装備で領内を巡視しますから、ご安心ください」
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