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第一章
第25話:自衛隊による国民保護措置
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嘉一の影武者は急いで安全な隠れ家を購入しようとした。
だが隣近所に被害が及ぶかもしれない事を考えれば、そう簡単に最適な隠れ家が見つかるはずもなかった。
何時でも何処からでも常世に行ける状態にはなっていたが、できる事なら地域の氏神様から遠く離れたくなかった。
自衛隊には、自衛隊による国民保護措置という役割があった。
それを拡大解釈すれば、自衛隊駐屯地の隊舎に住まわせてもらう事も可能だった。
だが、隊舎は基本相部屋で、秘密を抱えている嘉一や影武者が住む事はとても難しく、断念しなければいけなくなってしまった。
だが、隣近所に被害を出さない隠れ家などすぐに見つかるはずもなく、見つかるまでの短期間は自衛隊の隊舎にお世話になるしかなかった。
実際に隊舎にいたのは影武者の鏡付喪神で、嘉一は何があっても敵を寄せ付けない安全な常世に隠れ住んでいた。
影武者の鏡付喪神が顧問弁護士や同志と連絡を取り、安全な家を探した。
先祖代々住んでいた敷地に仮設住居を建てられない訳ではなかったが、それでは再襲撃された時に隣近所に迷惑が掛かってしまう。
ネットで色々と調べた結果、同じ市内の山間部に少し隣家と離れた一軒家が五五八〇万円で売りに出ていた。
急いで売買契約が結ばれ、嘉一の影武者は市の山間部に移住した。
そして国や大阪府に対してセキュリティポリスの要請出動を頼んだ。
日本史上類を見ない、複数の対戦車ロケットランチャーによる攻撃を受けた嘉一は警護対象者と認められ、警視庁警備部警護課警護第三係機動警護担当と、大阪府警警護課からセキュリティポリスが派遣された。
だが敵は複数の対戦車ロケットランチャーまで使うのだ。
とても警察官だけで立ち向かえる相手ではない。
そこで自衛隊にも非常時という事で敷地内に駐屯してもらう事になった。
普段なら口汚く批判する野党やマスゴミも、実際に国内で対戦車ロケットランチャーまで使われた状況では、面と向かって批判する事はできなかった。
まして今回は、その野党やマスゴミの主要な人間が、外患誘致罪と外患援助罪で告発されているので、頭と尻尾を隠し口を塞いでいるしかなかった。
最初影武者は母屋とは別になっている蔵に住んでいた。
自衛官や警察のセキュリティポリスには母屋を使ってもらった。
そのような厳戒態勢で一カ月二カ月と過ごすうちに、嘉一がほとんど家を出ない事を自衛隊も警察も知った。
そうなると、自衛官はともかくセキュリティポリスの必要はなくなる。
警察の面目にかけて警備を疎かにはできないが、拠点警備と周辺警戒だけならば、セキュリティポリスではなく普通の警察官で十分だった。
嘉一の影武者が購入した屋敷の周辺は、警視庁や大阪府警から派遣された警察官がパトカーに乗って巡回した。
屋敷内の庭を警備するのは、自衛隊から派遣された自衛官が二四時間常時立哨する事になったが、休息や仮眠は改築して水回りが造られた蔵が提供された。
その結果母屋を使うのは影武者だけになった。
これでようやく嘉一はもちろん、付喪神と物の怪達も母屋内に姿を現す事が出来るようになった。
自衛官や警察官には長距離狙撃を防ぐためだと言って、常に雨戸を下ろして外から中が見られないようにした。
襖や障子も閉めて、隙間や玄関のガラスからも中を見られないようにした。
独りで過ごしているはずの母屋なのに、複数の人影がウロウロしているのを見られるわけにはいかなかったので、細心の注意を払っていたのだ。
独りを好む嘉一にとっては、一緒にいても気兼ねがいらない付喪神や物の怪達と家に籠って暮らすのは、全く何のストレスもなかった。
それどころか、影武者に責任のある仕事を任せられた事で、心も身体も解放されてとても楽になっていた。
十一LDKというとても広い母屋だけでも十分なのに、常世の観音食堂に行く事もできたので、閉じ込められたという閉塞感など全くなかった。
嘉一はこのまま母屋と観音食堂に閉じ籠っていられたら十分幸せだった。
だがそうさせてはもらえなかった。
またも恨み辛みを重ねるような死を迎えて、物の怪に変じた者が現れたのだ。
それも現れた場所があまりにも悪かった。
前回と同じ河内長野市であるだけでなく、下流の岩壁に地蔵菩薩と観音菩薩の磨崖仏が彫られている、滝谷ダムに物の怪が現れたというのだ。
「嘉一、まだ前回の心労と影響が残っている状況で悪いのだけれど、今回は私や地蔵の目の前で行われている復讐なの。
とても見過ごすわけにはいかないから、調べて来て欲しいの」
最近は石長から色々指示を受けたり手助けされたりしていた嘉一だったが、ニューハーフの女将直々に手助けして欲しいと言われてしまった。
石長が相手なら多少は乱暴な言葉を口にする事も、甘えるような言葉を口にする事もできるようになった嘉一だが、ニューハーフ女将の願いを断る事はできなかった。
ニューハーフ女将の素性が予測できた嘉一は、唯々諾々と従うしかなかった。
河内長野市なら、以前に知り合ったヘラ師達やママさん達から情報を集める事が可能だが、ヘラ師達には危険だから家に来ないように言ってあった上に、実際に家が対戦車ロケットランチャーで攻撃を受けてしまっている。
母屋にいるはずの嘉一自身が聞きに回る事もできないので、ヘラ師達は情報収集相手から除外した。
だが、ママさん達は虚空蔵と地蔵がとても仲良くなっていた。
二仏なら嘉一との関係を怪しまれる事なく情報を集めることができると思われた。
だから二仏は人気がいないのを確認したうえで寺ヶ池の周囲に現れて、ママさん達はもちろん他の人からも噂話を集めた。
だが嘉一は、母屋を出ると自衛官や警察官がうるさいので、鏡付喪神に引き続き影武者をしてもらう事にして、嘉一自身は常世から直接滝谷ダムに行くことにした。
しかも嘉一だと分からないように色々と変装していた。
嘉一が自宅と滝谷ダムに同時に現れる訳にはいかないからだ。
変装した姿でダム周辺の店や噂好きそうな人から情報を集めた。
八畳敷にいるシラモトの白狐、ガランドウの白蛇、ヒダル神、蔵王峠の天狗、ユリノのコロ、アカゴノフチの主などの噂を集めることができた。
勿論今の嘉一に一人で情報収集させるような危険な真似を神仏はさせない。
滝谷ダムの周囲には多聞を祀った場所があるので、多門が嘉一の護衛についた。
氏神の社もあるのだが、残念ながら観音食堂にいる神仏は祀られていなかった。
御祭神は菅原道真公で、他には天照大神と伊弉諾尊と伊弉冉尊が祀られていた。
だが滝谷ダムの近くには、六地蔵や舟形地蔵群、玉依姫命と五頭竜大神、不動明王を祀った場所もあるので、観音食堂の神仏の説得次第では、情報を得られるかもしれなかったが、嘉一には成功するかどうか分からなかった。
だが隣近所に被害が及ぶかもしれない事を考えれば、そう簡単に最適な隠れ家が見つかるはずもなかった。
何時でも何処からでも常世に行ける状態にはなっていたが、できる事なら地域の氏神様から遠く離れたくなかった。
自衛隊には、自衛隊による国民保護措置という役割があった。
それを拡大解釈すれば、自衛隊駐屯地の隊舎に住まわせてもらう事も可能だった。
だが、隊舎は基本相部屋で、秘密を抱えている嘉一や影武者が住む事はとても難しく、断念しなければいけなくなってしまった。
だが、隣近所に被害を出さない隠れ家などすぐに見つかるはずもなく、見つかるまでの短期間は自衛隊の隊舎にお世話になるしかなかった。
実際に隊舎にいたのは影武者の鏡付喪神で、嘉一は何があっても敵を寄せ付けない安全な常世に隠れ住んでいた。
影武者の鏡付喪神が顧問弁護士や同志と連絡を取り、安全な家を探した。
先祖代々住んでいた敷地に仮設住居を建てられない訳ではなかったが、それでは再襲撃された時に隣近所に迷惑が掛かってしまう。
ネットで色々と調べた結果、同じ市内の山間部に少し隣家と離れた一軒家が五五八〇万円で売りに出ていた。
急いで売買契約が結ばれ、嘉一の影武者は市の山間部に移住した。
そして国や大阪府に対してセキュリティポリスの要請出動を頼んだ。
日本史上類を見ない、複数の対戦車ロケットランチャーによる攻撃を受けた嘉一は警護対象者と認められ、警視庁警備部警護課警護第三係機動警護担当と、大阪府警警護課からセキュリティポリスが派遣された。
だが敵は複数の対戦車ロケットランチャーまで使うのだ。
とても警察官だけで立ち向かえる相手ではない。
そこで自衛隊にも非常時という事で敷地内に駐屯してもらう事になった。
普段なら口汚く批判する野党やマスゴミも、実際に国内で対戦車ロケットランチャーまで使われた状況では、面と向かって批判する事はできなかった。
まして今回は、その野党やマスゴミの主要な人間が、外患誘致罪と外患援助罪で告発されているので、頭と尻尾を隠し口を塞いでいるしかなかった。
最初影武者は母屋とは別になっている蔵に住んでいた。
自衛官や警察のセキュリティポリスには母屋を使ってもらった。
そのような厳戒態勢で一カ月二カ月と過ごすうちに、嘉一がほとんど家を出ない事を自衛隊も警察も知った。
そうなると、自衛官はともかくセキュリティポリスの必要はなくなる。
警察の面目にかけて警備を疎かにはできないが、拠点警備と周辺警戒だけならば、セキュリティポリスではなく普通の警察官で十分だった。
嘉一の影武者が購入した屋敷の周辺は、警視庁や大阪府警から派遣された警察官がパトカーに乗って巡回した。
屋敷内の庭を警備するのは、自衛隊から派遣された自衛官が二四時間常時立哨する事になったが、休息や仮眠は改築して水回りが造られた蔵が提供された。
その結果母屋を使うのは影武者だけになった。
これでようやく嘉一はもちろん、付喪神と物の怪達も母屋内に姿を現す事が出来るようになった。
自衛官や警察官には長距離狙撃を防ぐためだと言って、常に雨戸を下ろして外から中が見られないようにした。
襖や障子も閉めて、隙間や玄関のガラスからも中を見られないようにした。
独りで過ごしているはずの母屋なのに、複数の人影がウロウロしているのを見られるわけにはいかなかったので、細心の注意を払っていたのだ。
独りを好む嘉一にとっては、一緒にいても気兼ねがいらない付喪神や物の怪達と家に籠って暮らすのは、全く何のストレスもなかった。
それどころか、影武者に責任のある仕事を任せられた事で、心も身体も解放されてとても楽になっていた。
十一LDKというとても広い母屋だけでも十分なのに、常世の観音食堂に行く事もできたので、閉じ込められたという閉塞感など全くなかった。
嘉一はこのまま母屋と観音食堂に閉じ籠っていられたら十分幸せだった。
だがそうさせてはもらえなかった。
またも恨み辛みを重ねるような死を迎えて、物の怪に変じた者が現れたのだ。
それも現れた場所があまりにも悪かった。
前回と同じ河内長野市であるだけでなく、下流の岩壁に地蔵菩薩と観音菩薩の磨崖仏が彫られている、滝谷ダムに物の怪が現れたというのだ。
「嘉一、まだ前回の心労と影響が残っている状況で悪いのだけれど、今回は私や地蔵の目の前で行われている復讐なの。
とても見過ごすわけにはいかないから、調べて来て欲しいの」
最近は石長から色々指示を受けたり手助けされたりしていた嘉一だったが、ニューハーフの女将直々に手助けして欲しいと言われてしまった。
石長が相手なら多少は乱暴な言葉を口にする事も、甘えるような言葉を口にする事もできるようになった嘉一だが、ニューハーフ女将の願いを断る事はできなかった。
ニューハーフ女将の素性が予測できた嘉一は、唯々諾々と従うしかなかった。
河内長野市なら、以前に知り合ったヘラ師達やママさん達から情報を集める事が可能だが、ヘラ師達には危険だから家に来ないように言ってあった上に、実際に家が対戦車ロケットランチャーで攻撃を受けてしまっている。
母屋にいるはずの嘉一自身が聞きに回る事もできないので、ヘラ師達は情報収集相手から除外した。
だが、ママさん達は虚空蔵と地蔵がとても仲良くなっていた。
二仏なら嘉一との関係を怪しまれる事なく情報を集めることができると思われた。
だから二仏は人気がいないのを確認したうえで寺ヶ池の周囲に現れて、ママさん達はもちろん他の人からも噂話を集めた。
だが嘉一は、母屋を出ると自衛官や警察官がうるさいので、鏡付喪神に引き続き影武者をしてもらう事にして、嘉一自身は常世から直接滝谷ダムに行くことにした。
しかも嘉一だと分からないように色々と変装していた。
嘉一が自宅と滝谷ダムに同時に現れる訳にはいかないからだ。
変装した姿でダム周辺の店や噂好きそうな人から情報を集めた。
八畳敷にいるシラモトの白狐、ガランドウの白蛇、ヒダル神、蔵王峠の天狗、ユリノのコロ、アカゴノフチの主などの噂を集めることができた。
勿論今の嘉一に一人で情報収集させるような危険な真似を神仏はさせない。
滝谷ダムの周囲には多聞を祀った場所があるので、多門が嘉一の護衛についた。
氏神の社もあるのだが、残念ながら観音食堂にいる神仏は祀られていなかった。
御祭神は菅原道真公で、他には天照大神と伊弉諾尊と伊弉冉尊が祀られていた。
だが滝谷ダムの近くには、六地蔵や舟形地蔵群、玉依姫命と五頭竜大神、不動明王を祀った場所もあるので、観音食堂の神仏の説得次第では、情報を得られるかもしれなかったが、嘉一には成功するかどうか分からなかった。
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