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第一章
第13話:付喪神
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「我々報道に関係する者達が人権を軽んじていた事を心からお詫びします」
自分達がやってきた人権犯罪は全て棚に上げて、厚顔無恥に現政権と官僚を批判していたフリーのアナウンサーが、生放送中に人体発火した事は、内心では自分達の人権犯罪を理解していた者達の心胆を寒からせた。
次は自分が人体発火するのではないかと恐怖したのだ。
そしてそれは現実となり、現政権と官僚を批判する事で、反日反政府報道機関から莫大な報酬を得ていた者達が、次々と人体発火していった。
多くの手先が命惜しさに生放送中に詫びを入れたが、人体発火は止まらなかった。
それどころか、ディレクターやプロデューサーといった、放送で表にでない権力者までが、次々と人体発火しはじめた。
嘉一が神仏から聞いた範囲では、『姥ヶ火』は恨みを晴らすために殺した連中の記憶をたどって、誰に命じられてやったのかを知り、本当の恨みを晴らすべく、恨みの元凶をたどって殺しているのだという。
そしてその先には、部局長や役員、社長や会長がいるのだ。
どこにいようと、何を主張しようと、恨み辛みによる呪いを避ける事はできない。
その事をマスゴミの権力者達は思い知り恐怖したのだろう。
生放送で謝ることにしたのだが、それでも自分達は頭を下げなかった。
自分達が悪いのではなく、番組制作の責任者であるディレクターやプロデューサーが悪い事にして、彼らだけに頭を下げさせた。
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
五人の番組制作幹部が、生放送中に人体発火した。
それを皮切りに、次々とテレビ局のディレクターやプロデューサーが発火したという噂がSNSに流れた。
狙われるのテレビ関係者で、新聞社やゴシップ誌は狙われなかった。
それが彼らを図に乗らせたのだろう。
被害者とその家族を揶揄し、自分達には罪がないような記事を書いた。
「人間は本当に愚かで身勝手ですね」
石長女神が呆れたようにため息をつきながら口にした。
嘉一が総務省にテレビ局の非道を訴えてから十日が過ぎていた。
嘉一は毎日常世に行ってお供えを続けていた。
石長女神も嘉一に料理を振舞い続けていた。
神仏は嘉一に何も要求しなかった。
日々力をつけて強大化する『姥ヶ火』を退治する手助けをしろと言わなかった。
「嘉一、付喪神を貸してあげますから、被害者の家に送ってくれる」
「付喪神を被害者の家に送ってどうしようというのですか、石長女神様」
「『姥ヶ火』を地獄の落とそうというのではありません。
『姥ヶ火』を地獄に落とすくらいなら、もっと先に地獄に落とさなければいけない人間が数多くいます。
違う考えの仏もいるようですが、少なくとも私はそう思っています。
だからといって、力をつけて際限なく恨みを晴らす『姥ヶ火』を放置してもいいと思っている訳でもありません。
だから、まずは『姥ヶ火』以上の悪人を地獄に落とすことにしたのです。
その後で『姥ヶ火』も地獄に落とします。
手伝ってくれますね、嘉一」
「分かりました、悪い人間から先に地獄に落とすというのなら、喜んでお手伝いさせていただきますが、その付喪神というのはどういう力を持っているのですか」
「付喪神とは、百年生きた古道具が神となった存在です。
パーソナルコンピューターやテレビでは百年もの年月を生きていません。
だからテレビを使って悪い人間を懲らしめる事はできません。
ですが、電話と電話回線は百年以上の月日が経っています。
電話を使って被害者の家族を苦しめた人間に罰を与えるのなら、丁度いい存在ではありませんか」
嘉一には石長女神の言っている事がよく理解できなかった。
確かに電話と電話回線は百年以上の年月を経ているだろう。
だが今はスマホや携帯が全盛の時代になっている。
通信網も光ファイバーを使ったものになっている。
電話と電話回線の付喪神が『姥ヶ火』の手助けをしたとしても、大したことはできないと嘉一は思っていたのだ。
「分かりました、石長女神様を信じて付喪神を届けさせていただきます」
それでも、嘉一はなにも質問する事なく引き受けた。
ニューハーフ仏や他の八仏の言う事なら疑ったかもしれないが、石長女神を嘉一が疑う事はなかった。
だから黒電話と電話線と何か分からない付喪神をリュックに入れて現世に戻った。
この説明されなかった付喪神が恨みを晴らす本命なのだろうと考えた嘉一は、原付で被害者の両親が済む家にまで走った。
人数は減っていたが、まだ警察による警備が行われていた。
リポーターと取材クルー、記者達が次々と人体発火した事で、流石に直接被害家族の家に突撃する連中は減っていたが、遠くから撮影しようとする腐れ外道は未だにいたし、興味本位で見学に来る人々も数多くいた。
多少興味本位に家を見に来る連中にまでは『姥ヶ火』も人体発火させなかった。
「新聞社やゴシップ誌が大混乱しているらしい」
「一日中家の電話が鳴り響いているそうだ」
「電話線を切っても音がやまないそうだ」
「電話だけじゃなく、テレビやラジオも勝手につくそうだぞ」
「電源を切らない限り、勝手に電源が入ってしまうそうだ」
「家電だけじゃなく、スマホや携帯も勝手に鳴り響くそうだぞ」
「それどころか、恨み辛みが聞こえてくるらしいぞ」
「それは怖過ぎるな」
「自業自得だと思う」
「それだけ恨まれていたのだろう」
嘉一が石長女神から頼まれた付喪神を被害者宅に届けた翌日から、SNSに新聞社やゴシップ誌も報復を受けているという噂が広がった。
どのような方法でそんな事ができるのか、嘉一には想像もつかなかったが、悪人がそれに相応しい罰を受けるのは当然だと、溜飲が下がる思いだった。
同時に、自分ももっと頑張らなければいけないと思った。
だから新たな理由で、総務省にテレビ局の放映権を剥奪するように、今のテレビ局は入札停止にした上で、放映権を公平に入札するように訴えた。
まだ以前訴えた裁判が結審していない状況で、民間企業の不祥事には社長以下役員がマスゴミの前で公式謝罪をする事を要求する癖に、自分達は一切謝罪しない。
ごくまれに謝罪する時も、社長や役員が直接不祥事を謝罪する事は一切なく、金で雇ったタレントか末端社員に謝罪させる。
そのような特権意識を持ち、自己を律する事も自省心もない組織に、国家権力である放映権を与える事は許されないと訴えたのだ。
そして新たな訴訟を起こす前に、各テレビ局や新聞社、持ち株会社の株を信用売りしたのだが、予想通り各社の株は大暴落した。
嘉一が風説を流布する必要もなく、SNSには総務省が現在テレビの放映権を得ている会社の入札を停止したうえで、方政権の入札をするという噂が流れたのだ。
自分達がやってきた人権犯罪は全て棚に上げて、厚顔無恥に現政権と官僚を批判していたフリーのアナウンサーが、生放送中に人体発火した事は、内心では自分達の人権犯罪を理解していた者達の心胆を寒からせた。
次は自分が人体発火するのではないかと恐怖したのだ。
そしてそれは現実となり、現政権と官僚を批判する事で、反日反政府報道機関から莫大な報酬を得ていた者達が、次々と人体発火していった。
多くの手先が命惜しさに生放送中に詫びを入れたが、人体発火は止まらなかった。
それどころか、ディレクターやプロデューサーといった、放送で表にでない権力者までが、次々と人体発火しはじめた。
嘉一が神仏から聞いた範囲では、『姥ヶ火』は恨みを晴らすために殺した連中の記憶をたどって、誰に命じられてやったのかを知り、本当の恨みを晴らすべく、恨みの元凶をたどって殺しているのだという。
そしてその先には、部局長や役員、社長や会長がいるのだ。
どこにいようと、何を主張しようと、恨み辛みによる呪いを避ける事はできない。
その事をマスゴミの権力者達は思い知り恐怖したのだろう。
生放送で謝ることにしたのだが、それでも自分達は頭を下げなかった。
自分達が悪いのではなく、番組制作の責任者であるディレクターやプロデューサーが悪い事にして、彼らだけに頭を下げさせた。
「「「「「ギャアアアアア」」」」」
五人の番組制作幹部が、生放送中に人体発火した。
それを皮切りに、次々とテレビ局のディレクターやプロデューサーが発火したという噂がSNSに流れた。
狙われるのテレビ関係者で、新聞社やゴシップ誌は狙われなかった。
それが彼らを図に乗らせたのだろう。
被害者とその家族を揶揄し、自分達には罪がないような記事を書いた。
「人間は本当に愚かで身勝手ですね」
石長女神が呆れたようにため息をつきながら口にした。
嘉一が総務省にテレビ局の非道を訴えてから十日が過ぎていた。
嘉一は毎日常世に行ってお供えを続けていた。
石長女神も嘉一に料理を振舞い続けていた。
神仏は嘉一に何も要求しなかった。
日々力をつけて強大化する『姥ヶ火』を退治する手助けをしろと言わなかった。
「嘉一、付喪神を貸してあげますから、被害者の家に送ってくれる」
「付喪神を被害者の家に送ってどうしようというのですか、石長女神様」
「『姥ヶ火』を地獄の落とそうというのではありません。
『姥ヶ火』を地獄に落とすくらいなら、もっと先に地獄に落とさなければいけない人間が数多くいます。
違う考えの仏もいるようですが、少なくとも私はそう思っています。
だからといって、力をつけて際限なく恨みを晴らす『姥ヶ火』を放置してもいいと思っている訳でもありません。
だから、まずは『姥ヶ火』以上の悪人を地獄に落とすことにしたのです。
その後で『姥ヶ火』も地獄に落とします。
手伝ってくれますね、嘉一」
「分かりました、悪い人間から先に地獄に落とすというのなら、喜んでお手伝いさせていただきますが、その付喪神というのはどういう力を持っているのですか」
「付喪神とは、百年生きた古道具が神となった存在です。
パーソナルコンピューターやテレビでは百年もの年月を生きていません。
だからテレビを使って悪い人間を懲らしめる事はできません。
ですが、電話と電話回線は百年以上の月日が経っています。
電話を使って被害者の家族を苦しめた人間に罰を与えるのなら、丁度いい存在ではありませんか」
嘉一には石長女神の言っている事がよく理解できなかった。
確かに電話と電話回線は百年以上の年月を経ているだろう。
だが今はスマホや携帯が全盛の時代になっている。
通信網も光ファイバーを使ったものになっている。
電話と電話回線の付喪神が『姥ヶ火』の手助けをしたとしても、大したことはできないと嘉一は思っていたのだ。
「分かりました、石長女神様を信じて付喪神を届けさせていただきます」
それでも、嘉一はなにも質問する事なく引き受けた。
ニューハーフ仏や他の八仏の言う事なら疑ったかもしれないが、石長女神を嘉一が疑う事はなかった。
だから黒電話と電話線と何か分からない付喪神をリュックに入れて現世に戻った。
この説明されなかった付喪神が恨みを晴らす本命なのだろうと考えた嘉一は、原付で被害者の両親が済む家にまで走った。
人数は減っていたが、まだ警察による警備が行われていた。
リポーターと取材クルー、記者達が次々と人体発火した事で、流石に直接被害家族の家に突撃する連中は減っていたが、遠くから撮影しようとする腐れ外道は未だにいたし、興味本位で見学に来る人々も数多くいた。
多少興味本位に家を見に来る連中にまでは『姥ヶ火』も人体発火させなかった。
「新聞社やゴシップ誌が大混乱しているらしい」
「一日中家の電話が鳴り響いているそうだ」
「電話線を切っても音がやまないそうだ」
「電話だけじゃなく、テレビやラジオも勝手につくそうだぞ」
「電源を切らない限り、勝手に電源が入ってしまうそうだ」
「家電だけじゃなく、スマホや携帯も勝手に鳴り響くそうだぞ」
「それどころか、恨み辛みが聞こえてくるらしいぞ」
「それは怖過ぎるな」
「自業自得だと思う」
「それだけ恨まれていたのだろう」
嘉一が石長女神から頼まれた付喪神を被害者宅に届けた翌日から、SNSに新聞社やゴシップ誌も報復を受けているという噂が広がった。
どのような方法でそんな事ができるのか、嘉一には想像もつかなかったが、悪人がそれに相応しい罰を受けるのは当然だと、溜飲が下がる思いだった。
同時に、自分ももっと頑張らなければいけないと思った。
だから新たな理由で、総務省にテレビ局の放映権を剥奪するように、今のテレビ局は入札停止にした上で、放映権を公平に入札するように訴えた。
まだ以前訴えた裁判が結審していない状況で、民間企業の不祥事には社長以下役員がマスゴミの前で公式謝罪をする事を要求する癖に、自分達は一切謝罪しない。
ごくまれに謝罪する時も、社長や役員が直接不祥事を謝罪する事は一切なく、金で雇ったタレントか末端社員に謝罪させる。
そのような特権意識を持ち、自己を律する事も自省心もない組織に、国家権力である放映権を与える事は許されないと訴えたのだ。
そして新たな訴訟を起こす前に、各テレビ局や新聞社、持ち株会社の株を信用売りしたのだが、予想通り各社の株は大暴落した。
嘉一が風説を流布する必要もなく、SNSには総務省が現在テレビの放映権を得ている会社の入札を停止したうえで、方政権の入札をするという噂が流れたのだ。
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